読書案内

お薦めの本を紹介します

人類が生まれるための12の偶然

人類が生まれるための

  12の偶然

  眞淳平著 松井孝典監修

人類が生まれるための12の偶然 (岩波ジュニア新書 626)

宇宙の果てってどうなってるんだろうか?他の銀河に生物はいるのだろうか?人間って次はどんな進化をするのだろうか?これから、地球はどうなるのだろうか?などの疑問の解決の糸口に本書は成ります。

 本書は、ジュニア新書ですが、十分大人でも満足できる内容です。いろんな分野の難しい話を分かりやすく噛み砕いて教えて頂いている感じです。本書の内容を簡単に説明しますと、宇宙の誕生から現在の人類まで、私たち人類が生まれるため12の偶然とも言える条件を解説しています。

その12の偶然とは、1.宇宙を決定する「自然定数」が現在の値になったこと、2.太陽が大きすぎなかったこと、3.太陽と地球の距離が適切だったこと、4.二つの巨大惑星(木星、土星)があったこと、5.月という衛星があったこと、6.地球が適度な大きさであったこと、7.二酸化炭素を減らす仕組みがあったこと、8.地磁気があったこと、9.オゾン層があったこと、10.地球に豊富な液体の水があったこと、11.生物の大絶滅が起きたこと、12.人類が進化をしたときに温暖な気候となったこと、です。

印象に残った箇所は以下となります。

今から50億年くらいすると、太陽の表層が地球の軌道付近にまで達します。地球は、それによって溶かされ、蒸発してしまいます。これが地球の最後です。・・・人類が生存できる環境としての地球には、もっと早く終わりがきます。人類が生き残るためには、いつか宇宙に進出することが必要なようです。(2章 生命を守り育てた太陽系)

地球上の生物の歴史を見ると、大絶滅が何度もおきてます。そして、大絶滅の中でも、とりわけ多くの生物種が絶滅した五回の事件があります。五回の大絶滅の中でも、ベルム紀末(約2億5千年前)には、なんと最大で96%が絶滅してます。

ここで注目したいのは、大絶滅が起きる度に、繁栄する生物が交代してきた事実です。二億年近くにわったて繁栄を誇った恐竜でさえ、巨大隕石の衝突という事件をきっかけに絶滅し、ほ乳類にその地位を明け渡しました。恐竜自体もベルム紀末の大絶滅によって、新たに支配的な地位を獲得した生物です。

こうして考えると、現在、人類が繁栄を迎えている背景には、大絶滅という壮大な悲劇がなければ、人類はここにいず、その繁栄もなかったのです。私たちは、そのことをきちんと知っておく必要があるかもしれません。(6章 地球の生命に起きたできごと)

環境問題を考える際に、よく「地球にやさしく」などといいますが、人類が特別の存在のように思っている証拠かもしれません。地球はそんなに弱い存在でもないですし、地球にとって人類の代わりとなる生命はいくらでもいます。私たちは、自分たちの生態系が維持できるように真剣に考えて生きていくのみなんです。(8章 人類が誕生した偶然について考える)

あとがきで著者はおおまかに次のように述べてます。「人類の誕生だけでなく、私たち一人ひとりの誕生もまた、とんでもない偶然にほかならない。一回に射精される一億から三憶の精子の中で、卵子と結合できるのはたった一つであり、もしもそれが別の精子であったならこの私は生まれていなかったろう。さらに両親もその先祖も、同じ偶然が何世代も繰り返されて今の自分がいることを思えば、それは天文学的な奇跡としか言いようがない。」と、なるほど、自分が存在するためには、とてつもない偶然が必要だったことを知ると「命の尊さ」を心に留めて生きなければと思う。

巻末に主要参考文献が掲載してあり、興味を持った分野での読書の役立ちます。そして、本書は、人類と地球の歴史や、宇宙や地球と人類の関係について、考える良い機会になります。

 

内容紹介

ビッグバンから銀河系や地球の誕生,生命の発生,人類の進化と続くプロセスのなかで起きた「偶然」に迫り,宇宙と生命のフシギについて考える科学読本です.
宇宙はどのようにして生まれ,地球はなぜ生命を育むことができたのか,生物とヒトはどんな過程をへて進化してきたのか.
宇宙と生命の秘密をわかりやすく解説します.

引用元:岩波書店

著者等紹介

眞 淳平(しん・じゅんぺい)

エコ・パブリッシング代表.編集者・ライター.慶應義塾大学経済学部卒業.青山学院大学大学院・法政大学大学院修了.集英社勤務を経て独立.主な著書に「海はゴミ箱じゃない!」(岩波ジュニア新書),「海ゴミ-拡大する地球環境汚染」(中公新書)など.

松井 孝典(まつい・たかふみ)

千葉工業大学惑星探査研究センター所長.理学博士.東京大学大学院理学研究科博士課程修了.東京大学大学院教授を経て,現職.専攻は,複雑理工学・地球惑星科学.著書に「宇宙人としての生き方」(岩波新書),「新版 地球進化論」(岩波現代文庫),「地球システムの崩壊」(新潮選書)など.

 

目次

第1章 この宇宙が誕生した不思議
 宇宙の誕生/真空のエネルギー/ビッグバン/宇宙を支配する四つの力/・・・
第2章  生命を守り育てた太陽系
 太陽系の主星・太陽/太陽の活動/太陽系の範囲/円盤形のガスから微惑星ができる/・・・
第3章  地球を変えた月
 月と海と高地/つねに同じ面を見せる理由/月のブレーキ効果/地球から離れる月/・・・
第4章 地球に起きたさまざまな偶然
 生命の惑星/誕生直後の地球/誕生した海/海が二酸化炭素を吸収する/・・・
第5章 不思議な液体「水」
 水の惑星/大部分が海水として存在する/四度でもっとも重くなる/・・・
第6章 地球の生命に起きたできごと
 生命とは何か/生物の進化と変化/生命誕生までのプロセス/熱水の海/最初の生命/・・・
第7章 文明誕生を後押しした気候
 人類の登場/最古の人類/人類が直立二足歩行を始めた理由/突然変異説/大型化する脳/・・・
第8章 人類が誕生した「偶然」について考える
 偶然によって人類が生まれた/脅威に満ちた現在の人間社会/気候変動という危険性/絶滅五分前?/私たちがすべきこと

あとがき

主要参考文献

参考図書