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なぜ地震・火山活動が、起きるのかを分かりやすく解説!

日本列島の下では何が起きているのか

列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで

中島淳一 講談社

日本列島の下では何が起きているのか 列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで (ブルーバックス)

最近、南海トラフ地震が気になってきたので、地震関連の基礎知識を得ようと本書を手にとりました。

本書は、プレートテクトニクス理論からはじまり、日本列島がどのようにして生まれ、日本列島の下が現在どのようになっており、また、地震や火山活動がなぜ起こるのか等を、解説したものです。

本書の特色は、地震関連について,基礎から最新の研究成果までを網羅しつつ,地震学とは一見無関係にみえる「水」を軸とした一つのストーリーを紡ぎ出しいるところです。

また、本書のように日本列島の下の全般の動きから解説することにより、全体像も見え、メカニズムも分かります。そして、日本列島が尋常ではない立ち位置に成立していることも分かります。

本書を読んで有用だと思ったところをあげます。

最近の地震関連のニュース等でよく聞くスロースリップやプレート内部地震、地震の巣の話題等が丁寧に説明されています。

スロースリップの話のところで、「地震を起こす」現象と「常にずるずるすべる」現象の他に「ときどきゆっくりすべる」スロースリップがあるとの解説は、奇妙な現象だと思いました。ただ、スロースリップに関してはわからないところが多いようです。


また、塑性変形と脆性破壊の観点から、ひずみ集中帯の解説をしたところでは、地盤が固いと地震が起きないのではと思っていましたが、よく考えてみると塑性変形できない分、他のところの塑性変形の歪みを引き受けて時々脆性破壊して大きな内陸型地震を起こしてしまうのであり、逆に火山のすぐそばでは脆性破壊領域が狭いので大きな地震は起きにくいのだそうです。

メカニズム的には水を介した話は、興味深いです。海洋プレートが沈み込む過程で水が巻き込まれ、高圧になると水が放出される。水のあるところが壊れやすいポイントになるので、このような水の動きは火山活動や地震に深く関与しているとのことです。その他にも、複雑な関東のプレート構造と地震の関係、地震の巣の解説、活断層の再利用など、わかりやすい解説が随所にたくさんあります。

本書は、地震の多い所に住む者にとって、素養としての地震関連の基礎的な知識を身につけるために、お読みになるのを勧めます。

目次

Prologue 沈み込み帯に生まれて―変動し続ける日本列島
01 プレートテクトニクス入門―地球を理解するための第一歩
02 地球内部を視る方法―地球の大構造とプレートの運動
03 日本列島ができるまで
04 日本列島の下には何があるか?
05 プレートの沈み込みと水
06 プレート収束境界で何が起こっているか?
07 沈み込むプレート内で何が起こっているか?
08 火山の下で何が起こっているか?
09 内陸地殻で何が起こっているか?
10 関東地方の地下で何が起こっているか?

著者紹介

中島淳一(なかじま・じゅんいち)

1976年茨城県生まれ。1998年東北大学理学部宇宙地球物理学科卒業。2003年東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。東北大学地震・噴火予知研究観測センター助教、准教授を経て、東京工業大学理学院地球惑星科学系教授。専門は地震学で、おもな研究対象は沈み込み帯の地震・火山テクトニクス。