脳科学からみた「祈り」
中野信子 潮出版社
本書は、「祈り」の効用を脳科学的に分析した上で、「祈り」を実践するためのアドバイスが提示されてます。そして、脳科学による「祈り」の実践を通じての幸福論が書かれてます。また、本のボリュームも126ページと手頃で活字も大きく読みやすく分かりやすい本です。
印象に残ったところを挙げてみます。
人間には、集団生活などで形成された社会に生きる中での個人に必要な能力がDNAに組み込まれています。人間とは、自己だけではなく他者の幸福を思い祈り、行動することによって幸福感を高めることにより、脳が喜びと平安を覚える生き物です。
「祈り」とは、自己の行動を利他的に結びつけることにより脳の働きを、いつもぶれずに保ち続けるための方法です。
脳は、マンネリには弱く、「祈り」の効果は薄れがちです。そのための効果的な「祈り」とは、一日2回と決めて、朝には「なりたい自分」「成し遂げたい目標」について集中して祈り、夜には「今日、何ができたのか反省」そして、「成し遂げたい目標のために、次の日にできること」を中心に祈ります。大切なのは「祈り」という営みを退屈な習慣にしないことです。
困難にあった時には「困った時の神頼み」ではなく、困る前から日常的に祈ります。また、時としては相手の不幸を祈るのではなく、相手も自分も幸福になるよう祈ります。嫌いな相手の不幸を祈るのは「祈り」ではなく呪いです。呪いは、悪感情として自分の脳に残りストレスを生じさせ体に悪影響が生じさせます。
「祈り」は、本来、未来に向けられるもので、変えようがない過去に「祈り」を向けても効果はありません。また、故人のことを祈る場合でも、その魂が未来も安らかであるように祈るものです。
作品概要
「前向きな心、感謝、人を思う祈り」が
脳を活性化し免疫力を高める!
新進気鋭の脳科学者が、
脳科学の見地から「祈り」の本質に迫る!
引用元:潮出版
著者紹介
中野信子(なかの・のぶこ)
目次
はじめにー脳科学が示す「幸福」な生き方
第一章 脳に与える祈りの影響
行動による祈りの違い
体のバランスをよくする祈りとは
「よい祈り」をつづけると、よい方向に変わる
脳を活性化する「愛情ホルモン」
音韻分析から考えた「題目」
祈りが強化する「展望的記憶」の力
祈りこそ良薬――脳と免疫力の関係
脳はすぐには変われない――日々祈りつづける大切さ
祈りは惰性になりやすい
第2章 脳科学からみた幸福な人、不幸な人
幸福感を科学的に測るには?
利他行動は、脳にとって「快感」でもある
祈りがもたらす鮮烈な幸福感
困難を乗り越える達成感を、脳は喜ぶ
対話こそ、脳を育てる最高の「刺激」
何歳になっても、人は変われる
学びつづけ、成長しつづける幸福
利他行動で相手が変わるとき、自分も変わる
運のよい人、悪い人――より多くの人に配慮できるか
人は一人では幸せになれない
人を育むことのことの幸福――オキシトシンと人材育成
自分を拡大すれば「利他」も「利己」になる
エピローグー逆境こそが脳を鍛える