それでも、日本人は「戦争」を選んだ
加藤陽子 新潮文庫
本書は、東京大学で 1930 年代の外交と軍事を専門に研究しておられる加藤陽子
先生が栄光学園の中高生を対象に日清戦争以降、日本が参戦した戦争とその経緯について特別講義を行った際の講義録です。
日本政府、諸外国政府、あるいは大日本帝國陸軍が、どういう経緯に基づいて意思決定を行ったのか。
それらの意思決定が、お互いにどういう影響を与え合ったのか。そしてそれぞれの意思決定を重ねた結果として戦争が開始され、講和条約に至るまでの経緯が、豊富な資料と共に分かりやすく説明されています。
加藤陽子先生は、文庫版あとがきで「戦争」と「歴史」について、次に述べるにように思慮深い言葉で表現してます。戦争に訴える国家が究極に目指すのは、敵対国の憲法原理、すなわち、国家を成り立たせている社会の基本秩序を書き換えることにあると。また、歴史家の本分は、「過去を正確に描くことでより良き未来の創造に加担することにある。」といいます。
内容紹介
講義の間だけ戦争を生きてもらいました 。
明治以来、四つの対外戦争を戦った日本、膨大な犠牲者を払い、なお誰もが戦争やむなしと考えたその論理とは? 小林秀雄賞受賞の名著文庫化。
膨大な犠牲と反省を残しながら、明治以来、四つ対外戦争を戦った日本。指導者、軍人、官僚、そして一般市民はそれぞれに国家の未来を思い、なお戦争やむなしの判断を下した。その論理を支えたのは何だったのか。鋭い質疑応答と縦横無尽に繰り出す資料が行き交う中高生への五日間の集中講義を通じて、過去の戦争を現実の緊張感の中で生き、考える日本近現代史。小林秀雄賞受賞。
著者紹介
加藤 陽子(かとう・ようこ)
1960(昭和35)年埼玉県生れ。東京大学大学院博士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は日本近現代史。著書に『模索する一九三〇年代』『満州事変から日中戦争へ』『昭和史裁判』(半藤一利氏と共著)等がある。2010(平成22)年『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で小林秀雄賞受賞。
目次
はじめに
序章 日本近現代史を考える
1章 日清戦争 「侵略・被侵略」では見えてこないもの
3章 第一次世界大戦 日本が抱いた主観的な挫折
5章 太平洋戦争 戦死者の死に場所を教えられなっかた国
おわりに 文庫版あとがき 参考文献 謝辞
解説 橋本 治