読書日記

お薦めの本を紹介します

今を生き抜く、真の「教養」が身につく歴史入門

   世界史としての日本史

   半藤一利 X 出口治明 小学館新書  

世界史としての日本史 (小学館新書)
 

 本書を読んで教えられる点は、物事を広い視野で見なさいということです。
本書の副題「日本は特別な国」という思い込みを捨てろ!は、そのまま本書の第一章の題名になっています。
 近頃のテレビなどを見ると訪日外国人について回って、いかに日本は特別な素晴らしい国かと礼賛させるような番組が多いですが、本書はまさに日本国特殊論に警告を発している。
 本書は、昭和史研究家の半藤一利氏と元ライフネット生命保険社長でありながら世界史に造詣の深い出口治明氏の対談です。半藤氏は「日本は成立した時点で、世界からかなり遅れていた」という。それが中国などと違って江戸時代に欧米諸国からの侵略に会わずに独立国として維持できたのは、アメリカの南北戦争、イギリスのボーア戦争などのために欧米が日本侵略まで手が回らなかったというのが真相である。それを日本人が欧米を撃退したとか外交交渉がうまかったとかいうのは、中国と同じように「中華思想」に毒されているからにほかならない。広く視野を世界に向けて世界史的な目を持っていれば、かかる日本特殊論などは出てくるはずもないというのが両氏の意見だ。
 ただし、よく読んでみると、お二人の意見には微妙な差がある。日露戦争は戦略戦争と見る出口氏に対して半藤氏はロシアの朝鮮進出に危機感を抱いた日本が、ロシアの進出を食い止めるためにした防衛戦争だという。
 日本では日露戦争に勝った勝ったと大騒ぎしていたが、実はロシアは国内的に革命の勃発があって、極東の日露戦争どころではなかったというのが真相である。
 太平洋戦争にしても、日本が真珠湾攻撃をした時点で、もう日本の負けは決定的であったという。あのアメリカの強大な生産力にくらべれば日独伊の生産力を合わせてもアメリカ一国の生産力に及ばなかった。現代の戦争は総力戦、すなわち経済の戦いである。その意味で精神力さえ強ければ勝てる、日露戦争を主導した明治の人たちは偉かったとする司馬遼太郎的史観では真実が見えないという意見でお二人は一致している。
 しかしながら明治維新の人たちは現在の日本人に比べてはるかに勉強していたことは間違いなく、現代の大学生の不勉強ぶりでは日本は世界に拮抗できないのは当たり前である。
 とくに世界史を学んで視野を広く持てというのがお二人の主張である。その意味で、本書では第五章を裂いて「世界の中の日本を知るための本」を色々と紹介してくれているし、それぞれの推薦図書リストも挙げられている。同時にたくさんの人に会い、旅をして視野を広め、読書をして先人に学べという。
 まさに二人の碩学によって知的好奇心を刺激される本である。

内容紹介

これがいまを生き抜くための教養だ! 

世界史の圧倒的教養を誇るライフネット生命会長・出口治明氏と、『日本のいちばん長い日』などで知られる日本近現代史の歴史探偵・半藤一利氏が初対談。「日本は特別な国という思い込みを捨てろ」「なぜ戦争の歴史から目を背けるのか」「アメリカを通してしか世界を見ないのは危険だ」など、日本人の歴史観を覆す世界の見方を伝授。「世界のなかの日本」の地位を正確に知ることが、いまの時代を生き抜く最低限の教養なのだ。 

【編集担当からのおすすめ情報】 
本来、日本史は世界史の一部であるはずなのに、学校では別々の科目として教えられてきました。そのため、私たちはどうしても「日本は特別な国」と思ってしまいがちです。しかしいま、世界における日本の地位や立場を正しく知らなければ、この激動から取り残されてしまうことでしょう。「世界史としての日本史」こそが、現代に必要な教養だとわかる一冊です。

著者紹介

半藤 一利(はんどう・かずとし)

1930(昭和5)年、東京生れ。東京大学卒業後、文藝春秋に入社。「週刊文春「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て、作家となる。1993(平成5)年、『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、1998年、『ノモンハンの夏』で山本七平賞を受賞する。2006年、『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』で、毎日出版文化賞特別賞を受賞。『決定版 日本のいちばん長い日』『聖断―昭和天皇鈴木貫太郎―』『山本五十六』『ソ連満洲に侵攻した夏』『清張さんと司馬さん』『隅田川の向う側』『あの戦争と日本人』『日露戦争史1』など多数の著書がある。

出口治明(でぐち・はるあき)

立命館アジア太平洋大学(APU)学長、ライフネット生命保険株式会社創業者。1948年三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、72年日本生命保険相互会社に入社。企画部、財務企画部にて経営企画を担当し、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年ネットライフ企画株式会社(2年後、ライフネット生命保険株式会社に変更)を設立、代表取締役社長に就任。13年より代表取締役会長。17年取締役を退任、18年よりAPU学長に就任した。著書に「全世界史講義」Ⅰ、Ⅱ「生命保険入門 新版」「直球勝負の会社」など多数ある。

目次

    まえがき

第一章 日本は特別な国よいう思い込みを捨てろ

第ニ章 なぜ戦争の歴史から目を背けるのか

第三章 日本が負けた真の理由

第四章 アメリカを通してしか世界を見ない危険性

第五章 世界のなかの日本を知るためのブックガイド

第六章 日本人きょうはいつから教養を失ったのか

    あとがき