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お薦めの本を紹介します

マルトリートメント(不適切な養育)で子供の脳を傷つける親たち

 子どもの脳を傷つける親たち

   友田明美   NHK出版新書
子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)

子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)

 

 

以前(2018年11月)にテレビで、「NHKのプロフェッショナル 仕事の流儀」で小児神経科医の友田明美氏を知ったので、本書を手に取りました。

マルトリートメント(不適切な養育)によって子どもの脳が”物理的”に傷つくということを初めて知りました。それも、本人への身体的な虐待ではなく、驚くことに、両親間の身体的暴力を目撃した時よりも、言葉の暴力に接したときのほうが、脳へのダメージが大きいということです。普通の家庭では、両親間で身体的暴力は無くても、言い争いは普通に有ると思いますが、程度や回数によっては、子供の脳にダメージがあるということです。

子育てにおいて、「ウチの子育てはこれで良いのかな?」「親として、子どものために何をすべきか?」「どうコミュニケーションをとると良いのか?」「どう躾をするべきか?」を自問自答し、試行錯誤の日々が続きます。

子に良かれと思ってやっていたはずのことが、実は、子に悪影響を与えていたとしたら、、、どの親御さんもそんな不安を持っているのではないでしょうか?
本書は、そういった不安が解消され、これからの育児に、勇気を持てるように、今後、子どもに対する自身の言動を振り返るための「ものさし」 を本書を通して科学的な知識を身につけることができます。

子どもの脳・こころ の健全な発育にとって、何が不適切で、何が適切か、これまでの一般常識としての「しつけ」にも不適切なものが多くあるということ、そして不適切な対応は、容易に子どもの脳を傷つけ、脳への傷は、身体的な傷とは異なり、客観的にわかりにくいからこそ、問題が深刻になってしまうこと、不適切な対応が続いた結果、その子が社会不適応や精神疾患などで長く苦しんでしまうことについて最先端の脳科学研究や、豊富な実際の患者さんの例から、とてもわかりやすく解説しています。
マルトリートメント、アタッチメントなどの専門的な用語も、丁寧に、平易な言葉で説明しています。

また、不適切な対応は、日常、どんな親子でも起こりうるとしており、著者は、そのような親自身を責めていません。
親自身への地域や社会によるサポートによって親の育児ストレスを減らすことが重要であるということが述べられているのです。

まさに育児中の方や、これから親になる方には、ぜひ手に取ってほしいし、一人でも多くの人々がこの知識を身につけることで、子どもや親に優しい社会が実現するはずです。
そしてそれは、すべての人に寛容で豊かな社会へと繋がっていくと思います

内容紹介

一生懸命な親ほど子どもを傷つけてしまう行為「マルトリートメント」とは?

 

暴言や体罰など、明らかな虐待のみならず、日常、どの家庭にも存在する子どもを傷つける行為が、強度と頻度を増したとき、子どもの脳は物理的なダメージを負うのだという。「マルトリートメント(不適切な養育)」と呼ばれる振る舞いの恐ろしさに、静かに警鐘を鳴らした新書が話題だ。 

「『脳科学の視点から子どもの健全な発達を見つめ直す』という研究を紹介していますが、高校生でも読める内容になっています。子育てに対する一生懸命さが空回りして、マルトリートメントをしてしまう可能性は、どんな親にでもあります。ですから本書では、ひとりの母親として、読者と同じ目線に立って書いてくださるよう、著者にお願いしました」(担当編集者) 

親子関係をテーマにした本の読者は通常女性が中心だそう。しかし本書は男性読者にもリーチしている。 

NHK出版新書のメインターゲットは40代から60代の男性です。『マルトリートメントで傷つく子どもをなくしたい』という著者のメッセージを、女性だけでなく男性にも届けるべく、あえて新書として刊行しました。親御さんだけでなく、児童福祉や医療に関係する職業の方からも予想以上の反響をいただいています」(担当編集者)

マルトリートメントは親だけの問題ではなく、広く社会で考えられるべき。そんな本書の視点が、多くの読者に響くのかもしれない。

評者:前田久

(週刊文春 2018年04月26日号掲載)

脳が変形していく

『子どもの脳を傷つける親たち』を著した友田明美は、子どもの発達に関する臨床研究を30年近くつづけてきた小児精神科医。彼女によれば、日本語で「不適切な養育」と訳される「マルトリートメント」によって、子どもの脳が物理的に変形することが明らかになったらしい。添付された何枚もの脳の写真が、その悲惨な研究成果を証明してる。

問題となるマルトリートメントには、暴力的な虐待だけでなく、無視、放置、言葉による脅し、威嚇、罵倒、そして子どもの前で行われる夫婦喧嘩も含まれると友田は指摘する。これらは子どもがいる家庭ならあってもおかしくないが、強度や頻度が増したき、子どものこころは確実に傷つく。こころとは脳のことである。脳はマルトリートメントによるストレスを回避しようとし、その結果、変形していくのだ。

傷ついた脳はその後、学習意欲の低下や非行、うつや統合失調症などを引きおこす。大人ですら過度なストレスは脳に大きな影響を与えるのだから、発達過程(乳幼児期、思春期)でマルトリートメントに晒された脳がどうなるか、素人でも理解できる。

では、どう予防すればいいのか、傷ついた脳を回復させる方法はあるのか、脳が傷ついたまま親になっている場合はどう救うのか。友田は愛着形成の重要性を説きつつ、具体的な対策を紹介する。ケーススタディも豊富で、多くの人の参考になるだろう。

〈子どもに必要なのは、安心して成長できる場所です。それを与えることができるは、われわれ大人だけです〉

この本を読んでいる間、私は何度も亡き両親に感謝した。

評者:長薗安浩

(週刊朝日 掲載)

脳が損傷するという衝撃の事実

 不適切なかかわりが、子供の脳を変形させる脳科学が明らかにした驚くべき事実「子供の前での夫婦喧嘩」、「心ない言葉」、「スマホ・ネグレクト」に「きょうだい間の差別」-。

 マルトリートメント(不適切な養育)が子供の脳を「物理的」に傷つけ、学習欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことが明らかになった。脳研究に取り組む小児科医が、科学的見地から子供の脳を解明し、傷つきから守る方途と、健全なこころの発達に不可欠である愛着形成の重要性を説く。

著者紹介

友田明美(ともだ・あけみ)

脳科学者。専門は小児発達学、小児精神神経学、社会融合脳科学。1987年熊本大学医学部卒。博士(医学)。熊本大学准教授等を経て、現在は福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援研究部門教授・副センター長 。

目次

序 章 健全な発達を阻害する脳に傷つき

第一章 日常のなかにも存在する不適切な養育

第ニ章 マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響

第四章 健やかな発育に必要な愛着形成

終 章 マルトリートメントからの脱却

    あとがき

    参考文献

参考図書

脳を傷つけない子育て: マンガですっきりわかる

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虐待が脳を変える―脳科学者からのメッセージ

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いやされない傷―児童虐待と傷ついていく脳

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子どものPTSD 診断と治療

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関連サイト

 

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