読書日記

お薦めの本を紹介します

しみじみと心にしみる名著

生きがいについて

 神谷美恵子コレクション
神谷美恵子  みすず書房
生きがいについて (神谷美恵子コレクション)

生きがいについて (神谷美恵子コレクション)

 

 

NHKEテレの「100分で名著」で紹介され、司会の島津アナウンサーがNHKを退職し、医者を目指すきっかけとなった本です。

 

 

 島津アナがこの本を読んで「自分の内面と向かい合い、幼い頃からの思いを叶えるべきではないかと思うようになった」と心境の変化があり、小さい頃なりたかった医者を目指すことになりました。

神谷美恵子精神科医で、教師であり母でもありました。もともと英文学を学んでおり、ハンセン病の療養所を訪れたことが医学をこころざすきっかけになったという人だから、苦しむ人びとに寄り添うまなざしはどこまでもあたたかいです。

「いったい私たちの毎日の生活を生きるかいあるように感じさせているものは何であろうか。ひとたび生きがいをうしなったら、どんなふうにしてまた新しい生きがいを見いだすのだろうか。」(「はじめに」より)

ハンセン病の患者たちと接するなかで、こんな疑問を心に抱くようになったことが、7年がかりで執筆されたという本書の出発点です。
著者も記しているとおり、「あるひとにとって何が生きがいになりうるかという問いに対しては、できあいの答はひとつもない」(「はじめに」)。
この本にも、手っ取り早く生きがいを見つけて楽しく生きるための方法は書かれていません。けれども、悲しみや絶望のふちで「生きがい」をつかんでゆく人びととの、血のかよった交流から生まれた一行一行が、それぞれの不安や悩みを抱えた読者の心に、玉露のように染みこんできます。

巻末に添えられた「『生きがいについて』執筆日記」には、著者のこんな言葉が残されています。

「どこでも一寸切れば私の生血がほとばしり出すような文字、そんな文字で書きたい、私の本は。」
「体験からにじみ出た思想、生活と密着した思想、しかもその思想を結晶の形でとり出すこと。」
「ああいっそ自分の血でかけたらいいものを!」

神谷美恵子が文字どおり心血をそそいで書き記した言葉たちは、40年経っても古びるどころかいっそう光を増しています。

内容紹介

「いったい私たちの生活を、生きがいのあるように感じさせているものは、なんであろうか。ひとたび生きがいを失ったら、どんなふうにして、また新しい生きがいを見いだすのだろうか」神谷美恵子は常に苦しむ人、悲しむ人のそばにあろうとした。本書は人が生きていくことへの深いいとおしみと、たゆみない思索に支えられた、まさに生きた結晶である。1966年の初版以来、多くのひとを慰め力づけてきた永遠の名著に執筆当時の日記を付して贈る。

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神谷美恵子コレクション』全5冊
1 生きがいについて
2 人間をみつめて
3 こころの旅
4 遍歴
5 本、そして人
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-関連書-
神谷美恵子の世界』

詩集『うつわの歌【新版】』


神谷美恵子コレクションについて ■ 永遠の書『生きがいについて』をはじめ、刊行後数十年を経てなお古びることのない一連の著作を、新に編集したコレクション5冊。あわせて、その人と生涯を写真と文字でハンディにまとめた『神谷美恵子の世界』もお届けします。
英文学から、医学へ、さらには精神医学から病跡学へ、ときに迷いながらも、自らの信じる道を貫いた神谷美恵子(1914-1979)の人生。
ハンセン病の患者さんとの出会いや交流、長島愛生園での実践と思索の日々。
一人の女性として、また妻として母として、日常の雑事を生き抜いた生活者としての側面。
神谷美恵子は、そのすべてを「書くこと」で表現しようとした。
その生き方は、著作をとおして、また雑誌やテレビを通じて、多くの人の感動を呼んできました。
このコレクションは、その主要な著作を新たに編集、各巻末に著者の未公開の文章と解説を加え、著者ゆかりの人々へのインタビューやエッセイなどを付録にして、読者に近づきやすい神谷美恵子を提供しようとするものです。
いまこそ、神谷美恵子――神谷美恵子の思索、その生きる姿勢は、現代だからこそ、新鮮なかがやきを放っています。
病めるものに寄せる思いと実践のなかから紡ぎ出された言葉の数々を贈ります。 

著者紹介

神谷美恵子(かみや・みえこ)

1914~1979。大正3(1914)年1月12日、岡山県岡山市に誕生。父の仕事で九歳でスイスのジュネーヴへ。帰国後、成城高等女学校、津田英学塾(現津田塾大学)卒。結核で二度療養後、コロンビア大学を経て東京女子医学専門学校卒。戦争末期、東京帝国大学精神科に入局。終戦後、文部大臣に就任した父の通訳となり、GHQとの交渉に従事。大阪大学神戸女学院大学を経て、母校の津田塾大学教授。ハンセン病の療養施設・長島愛生園精神科にも十五年勤務。

目次

一  生きがいということば

二  生きがいを感じる心

三  生きがい求める心

四  生きがいの対象

五  生きがいをうばい去るもの

六  生きがい喪失者の心の世界

七  新しい生きがいを求めて

八  新しい生きがいの発見

九  精神的な生きがい

十  心の世界の変革

十一 現世へのもどりかた