漢字の社会史
東洋文明を支えた文字の三千年
阿辻哲次 吉川弘文館
漢字はこれまでの東洋文明を動かしてきた原動力のひとつであります。また、漢字は二十一世紀の情報化社会でも、中心に位置すべき文字のひとつでもあります。そして、漢字の未来における望ましいあり方を考えるためにも、その過去の営為を知っておく必要が有ります。
内容
漢字は中国語を表記する文字でありながら、今日まで日本人の言語生活・文字文化に絶大な影響を与え続ける。漢字への人間の関わりを軸に、成立から現在までの漢字の歴史を、豊富なエピソードを交えながら述べた名著。
著者紹介
阿辻/哲次(あつじ てつじ)
1951年大阪市に生まれる。京都大学文学部中国文学科卒業、同大学大学院博士課程修了。京都大学名誉教授。文化庁文化審議会国語分科会漢字小委員会委員として新たな常用漢字表の作成にも参加した。古代文字学についての知見と、パソコン・ワープロという現代テクノロジーの媒介としての漢字を研究する。著書に『漢字学』(東海大学出版会)、『漢字の文化史』(ちくま学芸文庫)、『漢字のはなし』(岩波ジュニア新書)、『漢字道楽』(講談社学術文庫)など。
目次
第1章 文字と古代国家(神聖な文字
記録の素材と内容
記録の方法)
第2章 国家と行政と文字(国家統一書体の完成
行政の現場から
記録素材の変化―竹から紙へ)
第3章 規範の確立(紙の登場と印刷の時代
王羲之の果たした役割―書家と文字規範
漢字教育の歩み
漢字の字形の整理―『千禄字書』
印刷のはじまりとその影響)
第4章 東アジアの文字事情(漢字を媒介とした文化圏
古代日本と漢字
文字と外交)
終章 二十一世紀と漢字