ヨーロッパ思想入門
岩田 靖夫 岩波ジュニア新書
内容紹介
現代のヨーロッパ哲学を概観するなんて,とてもできませんね.なにしろデカルト,パスカル,カント,ニーチェ,ハイデガー,……と大哲学者がずらりと名を連ねているのですから.ところが,多彩な個々の哲学を見ていくと,なんとそれらが2つの根源との格闘の産物であることが見えてくるのです.その2つとは,ギリシアの思想とヘブライの信仰なのです.たとえば,17世紀にロックが理論化したデモクラシーは,古代ギリシア人が生み出した制度を,約2000年後に再生させたものでした.また,同じ実存哲学者でも,キルケゴールが不条理(=キリスト教の神)への跳躍を呼びかけたのに対して,ニーチェはキリストに敵対する無神論者として希望と絶望の魔力を放っています.この本は,2つの源泉の本質は何かを,文学や美術,「聖書」などから探っていきます.なぜ,ギリシアの彫刻は美しいものばかりで,同じ表情をしているのか.なぜ,ギリシア文学は人生を写実的に描かないのか.これらの問いかけから,ギリシア思想の本質が浮かび上がり,同様の考察によって,ヘブライの信仰の本質も明らかになっていきます.本書で,2つの根源について十分に考察し,その近現代への影響をたどれば,ヨーロッパ思想の核心がくっきりと見えてくるでしょう.
著者紹介
岩田 靖夫(いわた・やすお)
1932年東京生まれ。東京大学文学部卒、1961年同大学院人文科学研究科博士課程満期退学。東大教養学部助手、成城大学講師、北海道大学助教授、73年東北大学文学部助教授、77年教授、87年「アリストテレスの倫理思想」で東大文学博士。96年東北大を定年退官、名誉教授、聖心女子大学教授、2001年仙台白百合女子大学教授、名誉教授。2003年文化功労者。
著書
- 『アリストテレスの倫理思想』 岩波書店 1985
- 『神の痕跡 ハイデガーとレヴィナス』 岩波書店 1990
- 『倫理の復権 ロールズ・ソクラテス・レヴィナス』 岩波書店 1994
- 『ソクラテス』 勁草書房 1995/ちくま学芸文庫(増補版) 2014
- 『神なき時代の神 キルケゴールとレヴィナス』 岩波書店 2001
- 『ヨーロッパ思想入門』 岩波ジュニア新書 2003
- 『よく生きる』 ちくま新書 2005
- 『三人の求道者 ソクラテス・一遍・レヴィナス』 創文社〈長崎純心レクチャーズ〉 2006
- 『いま哲学とはなにか』 岩波新書 2008
- 『アリストテレスの政治思想』 岩波書店 2010
- 『ギリシア哲学入門』 ちくま新書 2011
- 『ギリシア思想入門 = Introduction to Greek Thought』 東京大学出版会 2012
- 『人生と信仰についての覚え書き』 女子パウロ会 2013
- 『極限の事態と人間の生の意味 大災害の体験から』 筑摩選書 2011
- 訳書
- 『アリストテレス全集 16 アレクサンドロスに贈る弁論術』 斎藤忍随共訳、岩波書店, 1968
- E.R.ドッズ 『ギリシァ人と非理性』 水野一共訳、みすず書房, 1972、復刊1997ほか
- W.K.C.ガスリー『ギリシア人の人間観 生命の起源から文化の萌芽へ』 白水社〈白水叢書〉, 1978
- 『ハイデッガー全集 33 (第2部門 講義 1919-44) アリストテレス『形而上学』第9巻1-3 力の本質と現実性について』(共訳) 創文社, 1994
- プラトン 『パイドン 魂の不死について』 岩波文庫, 1998
- 『ハイデッガー全集 40 (第2部門 講義 1919-44) 形而上学入門』 ハルトムート・ブフナー共訳、創文社, 2000
目次
はじめに
第1部 ギリシアの思想
1章 ギリシア人とはなにか
2章 ホメロス
3章 ギリシア悲劇
4章 ソクラテス以前の哲学
5章 ギリシア哲学の成熟
第2部 ヘブライの信仰
A 旧約聖書
1章 イスラエル人の歴史
2章 『創世記』の神話
3章 預言者
B 新約聖書
4章 イエスの生涯
5章 イエスの教え
6章 パウロ
第3部 ヨーロッパ哲学の歩み
1章 中世のキリスト教哲学
2章 理性主義の系譜
3章 経験主義の系譜
4章 社会の哲学
5章 実存の哲学
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