すごい宇宙講義
多田 将 イースト・プレス
本書は、素粒子物理学を専門とする著書による「宇宙について人間がいかに考えてきたか」を内容とする本です。ブラックホールと相対性理論、ビッグバン、暗黒物質、宇宙の始まりの4つのテーマをそれぞれ章立てで解説してます。
特に第1章のブラックホールに関する解説が興味深いです。ブラックホールとは要するに、物質が極端に狭い領域に縮められた状態、密度が極端に高い状態のことを指します。太陽のような恒星において、核融合が終わるとその星は死に、自身の重力によって中心へ向かって縮んでいく現象、すなわち「重力崩壊」が起こります。この結果がブラックホールであり、例えば地球を小さく圧縮したらブラックホールになるという説明はユニークで分かりやすいです。
相対性理論の説明については、速度と時間の関係や重力レンズ効果が、ビッグバンの章においては、宇宙の膨張や宇宙の晴れ上がり、宇宙は有限だが果てはないといったことを分かりやすく説明してます。
本書は、著者が行った一般向けの講義をもとに執筆されており、難しい話を分かりやすい例え話を用いて解説している箇所が多く、また講義そのままの会話形式の文体も手伝い、とても読みやすくなっています。たまに出てくる小ネタ(ラグランジュ・ポイントに関するガンダムネタなど)や、いくつかのテーマに関するコラム(原発に関する著者の意見はとても参考になります。)も、本書の内容を理解する上で役立ちます。
内容紹介
暗黒物質やヒッグス粒子など、宇宙の根源的な謎がいま明らかになりつつある。研究の現場で何が起きているのか?
基礎となる理論から最新の実験・観測の方法まで、異端の素粒子物理学者が100を超えるスライドと共にわかりやすく語った、3時間×4日の一般公開講座<完全版>。
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「ヒッグス粒子」に続き、「暗黒物質」も発見間近! ?
宇宙の謎が解き明かされる、物理学の黄金時代、到来!
研究の現場で、いま何が起きているのか?
「六太や日々人は若い頃、
こういう本を一生懸命読んでいたかもしれないですね」
小山宙哉(『宇宙兄弟』著者)
「ビジュアルを駆使した、物理学者のすごいプレゼンテーション!
宇宙について、ここまでわかりやすく書かれた本は他にない。」
成毛眞(HONZ代表)
著者紹介
多田 将(ただ・しょう)
1970年大阪府生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了。京都大学化学研究所非常勤講師を経て、現在、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所、准教授。著書に『すごい実験――高校生にもわかる素粒子物理の最前線』『宇宙のはじまり』(共にイースト・プレス)がある。
目次
第1章 ブラックホール―空間と時間の混ざり合う場所
反物質とは何か? 対消滅と対生成―物質とエネルギーは姿を変え合う ほか
第2章 ビッグバン―人はなぜ宇宙をイメージできないのか?
落下するリンゴと落下しない月 星はなぜ宇宙に散らばっているのか? ほか
第3章 暗黒物質―そこにいるのに捕まえられないものを、いかに捕まえるか?
星は必ず動いている 公転速度は太陽に近いほど速い、遠いほど遅い ほか
第4章 そして宇宙は創られた―想像力と技術力で辿り着いた世界
温度とは何か? 修学旅行のスキーと生徒のエネルギー ほか
参考図書
関連サイト