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娘と話す「アウシュビッツ」ってなに?

娘と話す アウシュビッツってなに?

           アネット・ヴィヴィオルカ

          [訳]山本 規雄  現代企画室

娘と話すアウシュヴィッツってなに?

娘と話すアウシュヴィッツってなに?

 

 

本書は、 文庫より少し大きなサイズの本で、大きめの文字、100ページほどの長さなので一気に読めます。一気に読めるのは、目次がなく、「娘の立場」からどんどん湧き上がってくる疑問に次々答えていく形式になっているからかもしれないです。

そして、本書は、 アウシュヴィッツで亡くなった曾祖父母を持つ歴史学者(母親)が娘に「アウシュヴィッツ」とは、「ホロコースト」とは、ナチスヒトラーの思想に共鳴する、もしくは無関心であった当時の人とは、一体なんだったのかということを語り、これらの問題の本質に迫っています。

タイトルの通り、焦点は「強制収容所」、もしくは「絶滅収容所(殺戮センター)」に当てられており、また、作者が歴史学者であるというだけあって、史実についての詳細な説明もあります。娘からの質問は素朴なものだが、母親からは、ホロコースト強制収容所といった呼び名それ自体を議論するような歴史学らしい回答が並びます。
 また、ユダヤ人が検挙の対象になるところから、強制収容所に連れて行かれ、そこで次々と殺害されていく過程が、ユダヤ人コミュニティの視線を通して語られるためか、より具体的に想像でき、そして、淡々と語られます。「上手く話すことができない」という答えもあります。

この本には、ハッとさせられる回答がいくつもあります。ユダヤ人として歴史家として、親類をアウシュヴィッツで亡くした者として、できるだけ冷静に、できるだけ正確に、ただ、たまに言葉に迷いながら筆者が語る言葉に意味があると思います。とくに印象に残った文を紹介します。

「・・・できるだけわかりやすく、できるだけ冷静に説明しようとしているけれど、ほんとうはほとんど何も説明したことになっていないということはわかってるわ。技術的な手順を描写することはできる。でも、ここであったのは前代未聞のことなんだということを、あなたにどう言えばいいのかしらね。歴史上、多くの人が虐殺されたけれど、あんなふうに流れ作業で人を虐殺するために、工場のようなものがつくられたことはそれまでいちどもなかったんだということを、どう言えばいいのかな。・・・」(p.33)

「(イグナツィ・スフィペルの引用から) ・・・歴史というものは、一般的に勝者によって書かれるものだ。だから虐殺された人々について我々が知っていることは、虐殺した側の人間がそれについて語りたいと思ったことに限られる。もしもわれわれを虐殺する者が勝利を収め、この戦争の歴史を彼らが書くことになるならば、われわれを絶滅させたことは、世界史の最も美しいページのひとつに数えられるだろう。・・・」(pp.56,57)

「・・・ポーランドの社会にユダヤ人を助けようという気持ちがあまり広がってなっかたのね。当時ポーランドでとても有名だった女性作家のゾフィヤ・コサック・シュチュツカという人が抗議の文章を書いているのよ。「殺人を前にして沈黙する人は共犯者である。非難しない者は賛成してるのと同じである。」・・・・・非人間的な時代には、ただ人間的であるだけでも、ときにはとても勇気が必要なのよ。」(pp.77,78)

最後に、この筆者はシオニストを客観的に分析しています。アイヒマンのことも、パポンのことも、客観的に分析しています。個人を責めることで理解できる問題でないことは確かだが、戦後生まれのユダヤ人としてのそのような姿勢それ自体に誠意を覚えました。

内容紹介

子どもと話すシリーズ第6弾。本当にあったことだと知っておくことの大切さ。家庭で、学校で、子どもと親、生徒と先生、みんなでいっしょに問い直してみませんか?よりよい未来のために。フランスで大人気のブックレット・シリーズ。

著者紹介

ヴィヴィオルカ,アネット
フランス国立科学研究所、研究主任。第2次世界大戦およびジェノサイドを専門とする歴史学者で多くの著作をもつ。2000年に「ショアーの記憶」賞受賞。飽和状態にある国立古文書館に代わる施設の設立を求め、2001年に「国立史料センター設立委員会」を立ち上げその議長として奔走、2004年3月、同センターは2009年にパリ近郊に開設されることが正式に決定された。

参考図書

  

アウシュヴィッツの巻物 証言資料

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4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した

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