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山中伸弥先生に、人生とips細胞について聞いてみた

  山中伸弥先生に、人生と

ips細胞について聞いてみた

    山中伸弥 聞き手・緑慎也 講談社

 

本書は、2012年ノーベル生理学・医学賞ジョン・ガードンと共同で受賞されました山中先生の現在のところ唯一の自叙伝です。


 本書を読んでいると、結構波乱万丈の人生を送ってこられたようで、出身大学は、神戸大学医学部で、その後、整形外科の道を進むのか、と思いきや・・・結構不器用なためついたあだ名が「じゃまなか」だそうです・・・。
 臨床家になる道を捨てて・・・・相当悩まれたと思います・・・、大阪市立大学、医学部薬理学教室の院に進まれるのです。


 さらにチーテル獲得後、必死になり留学先を探し、アメリカで研究をつづけ、そして帰国、そして、現在の京都大学iPS細胞研究所所長となるわけです。
 ノックアウトマウスの作成法を学び、ES細胞、さらにより倫理的問題の無いiPS細胞の研究へと進んでいきますが、数多くの遺伝子の中から24個、さらに4個の遺伝子だけで、細胞の初期化に成功します。現在臨床への応用は、まだ道半ばですが、これで再生医療創薬への道は大きく切り開かれたのです。


 本書を読んでいると、山中先生は、人の和というものを重要視されていて、共同研究者、技術者への配慮も行き届いていているように思います。
 
後半の1/3は、本編を補足するインタビューになっています。本書は、iPS細胞のことが解りやすく書かれているだけでなく、山中先生が、夢を捨てずに研究をつづけ、そして、成功した彼の人間的魅力も存分に描かれています。

 内容紹介

山中先生が初めて語った、「iPS細胞ができるまで」と「iPS細胞にできること」。
「ジャマナカ」と蔑まれた研修医時代、臨床医から研究者への転向、留学後にかかった「アメリカ後うつ病」、発見を認めてもらえないもどかしさ、熾烈な「ヒトiPS細胞」開発競争――そして、山中先生が見つめる再生医療の未来とは?
山中先生の人生と科学の可能性!


決して、エリートではなかった。「ジャマナカ」と馬鹿にされ、臨床医をあきらめた挫折からはじまった、僕の研究――。

ぼくは医師であるということにいまでも強い誇りを持っています。臨床医としてはほとんど役に立たなかったけれど、医師になったからには、最期は人の役に立って死にたいと思っています。父にもう一度会う前に、是非、iPS細胞の医学応用を実現させたいのです(本文より)

■読みやすい語り口で、中学生から読める

父は町工場の経営者/高校柔道部から受験勉強に邁進/「ジャマナカ」と蔑まれた研修医時代/臨床医としての限界/はじめての実験/求人広告に手当たり次第応募/オスマウスが妊娠?/帰国/「アメリカ後うつ病」にかかる/新入生争奪戦/遺伝子を二四個まで絞り込んだ!/論文捏造スキャンダルの陰で/再生医療の可能性/病気の原因解明と創薬 (本書の内容より)

著者紹介

山中伸弥(やまなか・しんや)

 1962年大阪市生まれ。神戸大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科修了(博士)。米国グラッドストーン研究所博士研究員を経て、96年大阪市立大学医学部助手、99年奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター助教授、2003年同教授、04年京都大学再生医科学研究所教授、08年京都大学物質―細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長、2010年4月から京都大学iPS細胞研究所所長。
 胚性幹細胞(ES細胞)と異なり、受精卵を用いずにさまざまな組織に分化する可能性を持つ人工多能性幹(iPS)細胞をマウスの皮膚細胞から作り出すことに成功、新たな研究領域の開拓者となる。同じ方法で07年ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作り出すことにも成功した。コッホ賞(08年)、ラスカー賞(09年)、京都賞(10年)、ウルフ賞(11年)など受賞多数。2012年、ノーベル医学生理学賞を受賞。

緑 慎也(みどり・しんや)(聞き手)
 1976年大阪市生まれ。出版社勤務、月刊誌記者を経てフリーに。科学技術を中心に取材・執筆活動を続けている。単行本構成に『戸塚教授の「科学入門」』(戸塚洋二・講談社)、『がん 生と死の謎に挑む』(立花隆、NHKスペシャル取材班・文藝春秋)。聞き書きに『のたうつ者』(挾土秀平・毎日新聞社)など。

目次

はじめに

第1部 「iPS細胞ができるまで」と「iPS細胞にできること」

                 走り方が変わった

                  医師を志す

     勝敗より大切なこと

     神戸大学医学部へ

     ジャマナカ

     名医でも治せない患者さん

     はじめての実験

     「先生、大変なことが起こりました」

     研究の虜へ

     手当たり次第に応募

     サンフランシスコへ

     VWとプレゼン力

     オスマウスが妊娠?

     はじめて発見した遺伝子

     後ろ髪を引かれながら帰国

     トムとカーニー

     道具から研究対象へ

     アメリカ後うつ病「PAD」

     二つのうれしい出来事

     新入生争奪戦

     ぼくのビジョン

     京都の作り方

     細胞の設計図

     設計図のしおり 転写因子

     理論的に可能なことは実現する

     長期目標と短期目標の二本立て戦略

     データベースで候補を絞る

     二四個へ

     京大へ

     「ほんまはこいつ賢いんちゃうか」

     論文捏造スキャンダルの陰

     信じてもらえない!

     完璧な「マウスiPS細胞」

     「ヒトiPS細胞」開発競争

     再生医療の可能性

     病気の原因解明と創薬

     iPS細胞ストックとは

第2部    インタビュー

     飛ぶためにかがむ

     トップジャーナルのハードル

     紙一重でできたiPS細胞

     初期化の有無を調べる

     「しおり」と「黒いシール」

     iPS細胞とES細胞はソックリすぎる

     受精卵で働くGlis1遺伝子

     iPS細胞の安全性

     オープンラボへのこだわり

     一日の過ごし方

     研究者だけでは研究できない

     医師である誇り

 参考図書

 

 

 

 関連サイト

2018/05/07 - 再生医療を可能にするiPS細胞を世界で初めて発見し、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥さん。その山中さんの世界的な研究を成功に導いたものは何だったのでしょうか。お父様とお母様 ...
 
 
京都大学 iPS 細胞研究所の山中伸弥所長と日立製作所 執行役常務・研究開発グループ長の鈴木教洋による対談です。グローバル化やITの高度化などを背景に最先端のサイエンスが急速に進化・発展する中、それらの研究成果によって、暮らしや社会のあり方 ...
 
 

山中伸弥(2017年9月11日放送)| これまでの放送 | NHK ...


https://www.nhk.or.jp/professional/2017/0911/index.html 
2017/09/11 - 夢の万能細胞・iPS細胞を作り出し、世界を驚がくさせた研究者・山中伸弥(55)。 「iPS細胞」は、皮膚などの体細胞から人の体を作り上げているあらゆる細胞に分化することができ、再生医療や新薬開発の可能性を大きく切り開いた。いま山中 ...