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日本史の内幕を知る

    日本史の内幕

戦国女性の素顔から幕末・近代の謎まで

           磯田 道史   中公新書 

 

先祖が戊辰戦争に参戦していたことを知った15歳の磯田少年は「日本史の現場を見たい!」と、地元の古書店に向けてペダルを漕ぐ。500円で古文書解読事典を購入。以来、様々な参戦者の残した記録を 解読していき、やがて眼前には 戊辰戦争の実像がありありと立ち昇る。本書は著者がこれまで読み解いた 古文書を手掛かりとし、山川の教科書には出てこない戦国期から江戸・幕末期にかけての「細部」にフォーカスしたエピソード60話余を収録しています。

学校で学ぶ歴史は、日々の営為の集積記録を「国造り」「戦さ」「政治行政政策」といった視点で切り取ったものを概観しているに過ぎない。ずっと戦さをしているわけではないのについついそういう印象を抱きます。

著者の歴史開陳話が面白いのは、フィルターのかかっている二次・三次資料でない、あくまでも一次史料の古文書の山に分け入り、「真相」という果実を掌中にしっかと収めているからです。

例えば、家康が武田信玄に大敗を喫した三方ヶ原の合戦も、家康の視点と信玄の視点で書かれた古文書では、 群勢の数からしてまったく異なる。そう、時の権力の都合で、いつの世も情報は操作されているのです。

今日、我々が英雄と見なしている龍馬だって徳川や会津側から見れば、一介の浪人テロリストです。歴史というのは実に振り幅が大きいことを教えてくれる格好の書でありました。

内容紹介 

豊臣秀吉徳川家康が転機を迎えた「史上最強のパワースポット」とは。秀頼は本当に秀吉の子なのか。著者が発見した龍馬や西郷の書状の中身は。「昭和天皇を育てた男」の和歌集に秘められた思い――。当代随一の人気歴史家が、日本史の謎の数々に迫る。古文書の中から見えてくる、本当の歴史の面白さがここに!

 

西郷隆盛の性格は、書状からみえる。豊臣秀頼の父親は本当に秀吉なのか。著者が原本を発見した龍馬の手紙の中身とは。司馬遼太郎と伝説の儒学者には奇縁があった――日本史にはたくさんの謎が潜んでいる。著者は全国各地で古文書を発見・解読し、真相へと分け入ってゆく。歴史の「本当の姿」は、古文書の中からしかみえてこない。小説や教科書ではわからない、日本史の面白さ、魅力がここにある!

 

平成30年のNHK大河ドラマ『西郷(せご)どん』で時代考証を務める、気鋭の歴史学者の最新エッセイ集が絶好調だ。映画化もされた『武士の家計簿』を始め、既に数々のヒット作のある著者だが、本書は刊行から2週間弱で10万部を突破。その後もペースの落ちない異例のロケットスタートぶりだ。 

「著者のテレビ出演が増えたことや、『応仁の乱』から続く中公新書の歴史ものの好調もあってか、歴史の本をあまり手に取らないような読者にも幅広く届いている印象です」(担当編集者) 

江戸や幕末の民衆の暮らしを史料から細やかに想像し、徳川家康坂本龍馬といった大人物たちの意外な一面を掘り下げ、井伊直虎のようにややマイナーな人物にも光を当てる。天災の記録を現代の災害対策と結びつける、アクチュアルな発言でも知られる。そんな多面的な「磯田歴史学」のエッセンスが、いい意味で学者離れした、滑らかな文章で詰め込まれている。

「一篇が数ページのエッセイに、史料や史跡の研究に基づく新たな発見が惜しげもなく盛り込まれる。アウトプットは柔らかでも、インプットは骨太。それが著者の持ち味です」(担当編集者)

前書きで著者は、古文書にきちんと向き合うことの大切さを熱く語っている。本書はまさにその実践の成果。歴史学への入門書であると同時に、日本史に一家言ある人に気付きを与える一冊にも仕上がっている。

評者:前田 久

(週刊文春 2017.11.30 号掲載)

著者紹介

磯田 道史(いそだ・みちふみ)

1970(昭和45)年岡山市生まれ。歴史家。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。2018年3月現在、国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮ドキュメント賞受賞)、『天災から日本史を読みなおす』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『日本史の内幕』など著書多数。

目次

まえがき

第1章 古文書発掘、遺跡も発掘
油酒樽に詰まった埋蔵金
羽生君、「殿」を演じる
一八四〇年豪農の豪華な旅
昭和天皇を育てた男
など
第2章 家康の出世街道
浜松に史上最強の霊地
三方ヶ原の戦いの真相
真田の首に語りかけた言葉
水戸は「敗者復活」藩
など
第3章 戦国女性の素顔
「築山殿」の元の名は
美女処刑と信長の死
「直虎」を名乗った者は
秀吉は秀頼の実父か
など
第4章 この国を支える文化の話
信長と同時刻生まれの男
江戸期の婚礼マニュアル
我々は「本が作った国」に生きている
昭和初年の美容整形
など
第5章 幕末維新の裏側
西郷書簡と日本の歯科
「民あっての国」、山田方谷の改革
会津で戦死、若き親戚を弔う
など
第6章 ルーツをたどる
隠された「宇喜多」姓
黒田家は播磨から流浪か
忍者子孫たちとの交流
中根東里と司馬遼太郎
など
第7章 災害から立ち上がる日本人
江戸の隕石いずこに
山頂で富士山卵
熊本城サグラダ・ファミリア計画
など

人名索引

初出一覧

参考図書

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)

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日本史の探偵手帳 (文春文庫)

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災害と生きる日本人 (潮新書)

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 関連サイト

たいがいの大学教授は本を出してもほとんど売れないものだが、磯田道史著『武士の家計簿』(新潮新書)は発売すると同時に飛ぶように売れ、映画にもなったほどである。
 
 

人気歴史家・磯田道史が語る、学校では教えない「西郷どん」の魅力(磯田 ...


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54031 
いま歴史を語ってもらうなら、この人! 歴史エッセイ集『日本史の内幕』を上梓した、人気歴史家の磯田道史さんに、学校では習わなかった「西郷どん」の魅力をうかがいました。 無邪気な男の素顔. ―『日本史の内幕』はこれまで磯田さんが手に取ってきた ...
 
 

【政治デスクノート】歴史家・磯田道史さんから学ぶ日本の針路とは - 産経 ...


https://www.sankei.com/premium/news/190113/prm1901130012-n1.html 
2019/01/13 - そんなことをモヤモヤと感じていたとき、取材で出会った一人の歴史家から示唆に富む言葉を得た。古文書読解のスペシャリスト、磯田道史さんだ。1月1日付産経新聞別冊にインタビュー記事を掲載したが、博覧強記の歴史家を紹介するには ...
 
 

「公文書管理を考える」(4) 磯田道史・国際日本文化研究 ... - YouTube


https://www.youtube.com/watch?v=3t4BQgdPfr0 
2018/06/06 - アップロード元: jnpc
Michifumi Isoda, Associate Professor, International Research Center for Japanese Studies 古文書の世界から見た公文書管理 ...