橋をかける
子ども時代の読書の思い出
美智子 文春文庫
本書のなかで、とりわけ、「橋をかける」が素晴らしいです。まず、あいさつに始まり、皇后さまの子供時代の読書経験の中から、自分の中に、その後の自分の考え方、感じ方の「芽」になるようなものを残した数冊を取り上げ、「平和」という脈絡の中での思索を語られるます。
皇后さまの実体験から語られる内容には、誰もが自分の読書経験から感じたことのあるものが多くあると思います。このような誰もが感じたことがあるものが基にあるので、皇后さまが語られる思索についても、深いところで共感します。
講演終盤では、お言葉は、詩のように濃密になります。あたかも皇后さまと対話しているかのような感覚が起き、同時に、自分と対話する感覚が呼び起こされます。 橋は外にだけでなく、内にも向かいます。
本書で、感動した美智子さまのお言葉を掲載します。
『子供達が、自分の中に、しっかりとした根を持つために
子供達が、喜びと想像の強い翼を持つために
子供達が、痛みを伴う愛を知るために
そして、子供達が人生の複雑さに耐え、それぞれに与えられた人生を受け入れて生き、やがて一人一人、私共全てのふるさとであるこの地球で、平和の道具となっていくために。』
本書は、時間が経つと、また読み返したくなる本です。
内容紹介
「子供の本を通しての平和」をテーマに開かれたIBBY世界大会で、ビデオを通してなされた美智子皇后の講演録。本で知った美しさ、本から感じた不安、本から得た喜びなどについて語ります。
美智子さまが少女時代の読書の思い出を語られ感動を与えた講演。これは同時に、世界の子供たちに希望と平和を願う祈りの本です。
戦時中に少女時代をすごされた美智子さまを支えたのは本だった。「読書は私に、悲しみや喜びにつき、思い巡らす機会を与えてくれました」。ご自身の読書の思い出を語りながら、私たちの生きてきた時代を顧み、子供たちに将来の希望と平和を祈る―。世界に感動を与えた二つの講演を収録。初の文庫化。
著者紹介
皇后美智子(こうごう・みちこ)
皇后美智子は、第125代天皇・今上天皇の皇后。皇族。お印は白樺。皇室典範に定める敬称は陛下。勲等は勲一等宝冠大綬章。 旧姓名は、正田美智子。明治時代以降初めての民間出身の皇后ならびに皇族で、現皇室典範下で今上天皇の即位に伴って立后した初めての皇后でもある。
目次
橋をかける - 子供時代の読書の思い出
皇后さまとIBBYの人たち 島多代
注
バーゼルより - 子どもと本を結ぶ人たちへ
バーゼルへの道 島多代
皇后さまバーゼルご訪問随行記 佐藤正宏
注
文庫版に寄せて 末盛千枝子
参考図書
関連サイト