エーゲ
永遠回帰の海
立花 隆
[写真] 須田 慎太郎 書籍情報社
本書は、立花隆が写真家の須田慎太郎氏にとともに、エーゲ海周辺の地域、ギリシャ、トルコを渡り歩いて思索した紀行を一冊の本にしたものです。本書の特色について、著者は「はしがきのはしがき」で次のように書いてます。
「この本は、独特の作りになっている。まず、長い長い序章がある。序章は短めのテキストと沢山の写真で構成されている。いろんな意味で序章に本書のエッセンスが押しこめられている。本書は、写真集でもなければ、写真入りの文章本でもない。ーー写真家と文章家の合作本なのである。ーー」
少々写真は古くなっていますが、美術書と変わらないくらいの質で、とても楽しめます。さらに、立花隆の生き生きとした現地での体験とともに、ギリシャ-ローマの神話、宗教について解説がされています。
立花隆はシチリア島のセリヌンテに訪れた体験に触れながら、このように綴っています。「知識としての歴史はフェイクである。学校の教壇で教えられた歴史。歴史書の中の歴史。歴史家の説く歴史。記録や資料のなかに遺されている歴史。それらはすべてフェイクである。最も正統な歴史は、記録されざる歴史、語られざる歴史、後世の人が何も知らない歴史なのではあるまいか。」
立花氏ほどの博識な人物がこのように感じた体験、その衝撃を自分でも感じてみたい。そのような気持ちにさせてくれます。
本書は、立花隆の深い思索の跡や、須田氏や編集者の想いが感じられる良書です。
内容紹介
神とは何か、歴史とは何か、そして、人類の未来とは・・・。40日間・8千キロにおよぶ「エーゲ海・思索紀行」の途上、天才カメラマン須田慎太郎を相棒に、立花隆の時空を超えた哲学的思索が爆発する。
著者等紹介
立花隆(たちばな・たかし)
1940年、長崎県生まれ。64年東京大学文学部仏文科卒業後、文藝春秋社入社。66年に退社し、67年東京大学哲学科に学士入学。その後、ジャーナリストとして活躍。83年、「徹底した取材と卓越した分析力により幅広いニュージャーナリズムを確立した」として、第31回菊池寛賞受賞。98年、第1回司馬遼太郎賞受賞。著書『田中角栄研究全記録』『日本共産党の研究』『農協』『サル学の現在』『宇宙からの帰還』『青春漂流』『脳死』『天皇と東大』『小林・益川理論の証明』『20歳の君へ』ほか多数。
須田慎太郎(すだ・しんたろう)
1957年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。在学中から日本報道写真の先駆三木淳氏に師事。写真集に『駐日大使の素顔』(フォトルミエール)、『スキャンダラス報道の時代―80年代』『鯨を捕る―鯨組の末裔たち』(翔泳社)、『新宿情話』『あかいひと』(バジリコ)、『人間とは何か』(集英社)、共著に『エーゲ永遠回帰の海』『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること―沖縄・米軍基地ガイド』(書籍情報社)など多数。1986年日本写真協会新人賞受賞。
目次
序章 エーゲ 永遠回帰の海
はじめに
第一章 聖山アトスへ
第三章 聖なる神と性なる神
第四章 ネクロポリスと黙示録
終章 終末後の世界
あとがき
参考図書
関連サイト
ギリシャ 古代都市アテネから神々の住まうエーゲ海の島々へ || PAVONE
http://www.pavone-style.com/leisure/greece140722.php