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お薦めの本を紹介します

これからの「正義」の話をしよう

これからの「正義」の話をしよう

              いまを生き延びるための哲学

   マイケル・サンデル [訳]鬼澤 忍 早川書房

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 


 著者は、政治哲学を専門としており、ハーバード大学で人気の「Justice(正義)」の講義を担当しています。本書は、その講義から誕生したものです。

 著者は、本書の目的に以下のように書いてます。

「正義と不正義、平等と不平等、個人の権利と公共の利益が対立する領域で、進むべき道を見つけ出すにはどうすればいいのだろうか。この本はその問いに答えようとするものである」。

そして、本書は「幸福の最大化・自由の尊重・美徳の推進」の3つの理念を意識しながら、市場、自由、倫理、権利、義務、個人と国家の関係、宗教において、相反する考え方や具体例を紹介しながら、現代における正義のあり方について読者に自主的に考えさせる内容になっています。
また、その中で、ジェレミーベンサム、ジョン・スチアート・ミル、イマヌエル・カントアリストテレス、ジョン・ロールズの哲学思想のポイントについて、現代における適用例や具体例を列挙しながら分かりやすくまとめています。

基本的に著者は中立的な立場をとりながら様々な視点からの意見やその反論を読者に次々示そうとしていますが、同時に自分なりの考え方や哲学も持っており、特に終盤ではそれがくっきりと浮かび上がります。また、アメリカの学生向けの講義なので、日本人にはあまり馴染みの無いテーマも登場します。


全体的には、魅力的な構成と平明な文体で、読者をぐいぐい引き込む仕上がりになっています。そして、論理的で、内容も充実しており、現代版の哲学入門としてもお勧めです。

 内容紹介

「1人を殺せば5人が助かる。あなたはその1人を殺すべきか?」正解のない究極の難問に挑み続ける、ハーバード大学の超人気哲学講義“JUSTICE”。経済危機から大災害にいたるまで、現代を覆う苦難の根底には、つねに「正義」をめぐる哲学の問題が潜んでいる。サンデル教授の問いに取り組むことで見えてくる、よりよい社会の姿とは?NHKハーバード白熱教室』とともに社会現象を巻き起こした大ベストセラー、待望の文庫化。

 金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再分配するのは公正なことだろうか? 前の世代が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのだろうか――。
つまるところこれらは、「正義」をめぐる哲学の問題なのだ。社会に生きるうえで私たちが直面する、正解のない、にもかかわらず決断をせまられる問題である。
哲学は、机上の空論では断じてない。金融危機、経済格差、テロ、戦後補償といった、現代世界を覆う無数の困難の奥には、つねにこうした哲学・倫理の問題が潜んでいる。この問題に向き合うことなしには、よい社会をつくり、そこで生きることはできない。
アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、そしてノージックといった古今の哲学者たちは、これらにどう取り組んだのだろう。彼らの考えを吟味することで、見えてくるものがきっとあるはずだ。
ハーバード大学史上最多の履修者数を記録しつづける、超人気講義「Justice(正義)」をもとにした全米ベストセラー、待望の邦訳。

著者紹介

マイケル・サンデル(Michael J. Sandel)
1953年生まれ。ハーバード大学教授。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。専門は政治哲学。2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル=コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。主要著作に『リベラリズムと正義の限界』、『民主政の不満』、Public Philosophyなど。類まれなる講義の名手としても著名で、中でもハーバード大学の学部科目「Justice(正義)」は、延べ14,000人を超す履修者数を記録。あまりの人気ぶりに、同大は建学以来初めて講義を一般公開することを決定、その模様はPBSで放送された。この番組は日本では2010年、NHK教育テレビで『ハーバード白熱教室』(全12回)として放送されている。

目次

第1章 正しいことをする
第2章 最大幸福原理―功利主義
第3章 私は私のものか?―リバタリアニズム(自由至上主義)
第4章 雇われ助っ人―市場と道徳
第5章 重要なのは動機―イマヌエル・カント
第6章 平等の擁護―ジョン・ロールズ
第7章 アファーマティブ・アクションをめぐる論争
第8章 誰が何に値するか?―アリストテレス
第9章 たがいに負うものは何か?―忠誠のジレンマ
第10章 正義と共通善

参考図書

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)

 

 

 

公共哲学 政治における道徳を考える (ちくま学芸文庫)

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 関連サイト

ハーバード大学教授 マイケル・サンデル「これまでの私の人生の話をしよう ...


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/1882 
なぜ僕が正義にこだわるのか/レーガンとの討論に敗れて/ジャーナリスト志望を捨てた理由/大学時代は哲学が分からなかった. 60万部を超えるベストセラーを生んだ「白熱教室」の模様は日本でも何度も放映された。しかし、この名講義の主役・サンデル教授の ...
 
 

答えを示さない「白熱教室」は欺瞞である (2/4) | プレジデントオンライン


https://president.jp/articles/-/24321 
› 政治・社会 › 答えを示さない「白熱教室」は欺瞞である
 
2018/02/01 - 双方向な授業形式として最も典型的なものは、かの有名なハーバード大学マイケルサンデル教授の「白熱教室」でしょう。重たい、具体的な、いかにも意見が分かれそうな問いを与え、学生に考えさせ、意見を自由に発言させ、最後に教授が ...
 
 

【特別授業】サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』を読み解く ...


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