サイコパス
本書は、サイコパスを心理的、身体的特徴から始まり、脳科学観点からの分析した本です。
顔色ひとつ変えず人を騙し、搾取し、傷つけ、良心の呵責などみじんも感じない冷血漢。そんなサイコパスが100人に1人くらいの割合でいるらしいです。詐欺師や快楽殺人の犯罪者に多いとされますが、社会的地位の高い人にもいるようです。著者にいわせると、織田信長、毛沢東、ピョートル大帝はサイコパスだった可能性が大きく、ケネディ、クリントンはじめ、歴代大統領もサイコパスを疑われる人がかなり含まれており、スティーブ・ジョブズなどは典型的なサイコパス、あげくはマザー・テレサまでがそうだった、という。だとしたら、トランプやイーロン・マスクも、あの人もこの人も・・・・・・と続々と有名人の顔が浮びます。また、ヒトラー、チャーチル、ルーズベルト、ケネディなどについて書いた『狂気のリーダーシップ』という本もあります。
サイコパスは古代社会にも原始社会にも存在しました。「厄介者」や「不適格者」として扱われてきた負け組サイコパスと、「教祖」や「スター」として他者の犠牲のうえに成功をおさめた勝ち組サイコパスがあり、歴史に名を残しているのは後者のようです。
著者が関心を持っているのも勝ち組のほうです。彼らは恥や不安、恐れといった行動にブレーキをかける感情をほとんど持たないので、果敢で、冷静で、合理的で、自信に満ちています。だから、大きな賭けに勝ったり、前人未到の分野で成功を収めたり、カリスマ的な人気が出たりします。彼らのこうした「特徴」は、通常わたしたちが「性格」という言葉で意味するものとかなり違うものだ、ということを本書は教えてくれます。
脳科学の進歩により、サイコパスの脳は一般人と大きく機能的、形状的に異なっているということがわかってきています。たとえば、扁桃体と眼窩前頭皮質や内側前頭前皮質の結びつきの弱さにあると言われてます。これが意味するところは、相手との共感が生まれず、良心によるブレーキが効かないということです。相手が痛いだろう、悲しいだろう、ということを想像できない。また、こんなことはやるべきでないとか、やったら罰をうけるだろうといった想像もできない。彼らには説得も、懇願も、脅しも効かないのです。勝ち組サイコパスと負け組サイコパスも、脳の形状によって見分けられるのだそうです。こうした脳の特徴は遺伝の影響が大きく、生育環境が引き金となってサイコパス因子が発現することがある、ということも分かっています。
著者は、サイコパスが平均的な人間と脳の機能の仕方が明らかに異なることをさまざまな実験や事例で示しつつ、彼らを社会不適合者と決めつけることを注意深く避けています。さらに、サイコパスは人間の進化の過程で出てきたという仮説も提示し、マイノリティである彼らを監視したり隔離したりするのではなく共存するための提案をしています。また、彼らに虐待されたり利用されないように、間違っても彼らを称賛したり心酔したりすることがないように、こうしたタイプに対する情報と理解を持つことが大事だと提案しています。
内容紹介(文芸春秋BOOKSより)
平気でウソをつき、罪悪感ゼロ
……そんな「あの人」の脳には秘密があった!
外見はクールで魅力的。会話やプレゼンテーションも抜群に面白い。しかし、じつはトンでもないウソつきである。不正や捏造が露見しても、まったく恥じることなく平然としている。時にはあたかも自分が被害者であるかのようにふるまう。
残虐な殺人や善良な人を陥れる犯罪を冷静沈着に遂行する。他人を利用することに長け、人の痛みなどこれっぽっちも感じない。
……昨今、こうした人物が世間を騒がせています。しかも、この種の人々を擁護する人も少なくありません。
もともとサイコパスとは、連続殺人鬼などの反社会的な人格を説明するために開発された診断上の概念です。しかし、精神医学ではいまだ明確なカテゴリーに分類されておらず、誤ったイメージやぼんやりとした印象が流布していました。
ところが近年、脳科学の劇的な進歩により、サイコパスの正体が徐々に明らかになっています。脳内の器質のうち、他者に対する共感性や「痛み」を認識する部分の働きが、一般人とサイコパスとされる人々では大きく違うことがわかってきたのです。
しかも、サイコパスとは必ずしも冷酷で残虐な犯罪者ばかりではないことも明らかになってきました。大企業のCEO、政治家、弁護士、外科医など、大胆な決断をしなければならない職業の人にサイコパシー傾向の高い人が多いという研究結果もあります。
また、国や地域で多少の差はあるものの、およそ100人に1人の割合で存在することもわかってきました。そればかりか、人類の進化と繁栄にサイコパスが重要な役割をはたしてきた可能性すら浮上しているのです。
最新脳科学が、私たちの脳に隠されたミステリーを解き明かします。引用元:文芸春秋BOOKS
著者紹介
中野 信子(なかの・のぶこ)
脳科学者。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員教授。1975年生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』(幻冬舎新書)ほか。
目次
はじめに 脳科学が明らかにする「あなたの隣のサイコパス」
第1章 サイコパスの心理的・身体的特徴
1 サイコパス事件簿
2 サイコパスの心理的・身体的特徴とは?
第2章 サイコパスの脳
1 サイコパスの脳の知覚能力、学習能力
2 「勝ち組サイコパス」と「負け組サイコパス」
第3章 サイコパスはいかにして発見されたか
第4章 サイコパスと進化
第5章 現代に生きるサイコパス
第6章 サイコパスかもしれないあなたへ
おわりに
主要参考文献
参考図書
キレる!: 脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」 (小学館新書)
- 作者: 中野信子
- 出版社/メーカー: 小学館
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他人を傷つけても平気な人たち: サイコパシーは、あなたのすぐ近くにいる――
- 作者: 杉浦義典
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/08/27
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