誰も戦争を教えてくれない
古市 憲寿 講談社+α文庫
本書は、世界の戦争博物館をめぐりながら、各国が戦争を後世にどう伝えようとしているかを考察した本です。
大学2年生まで「右翼」も「左翼」も知らなかった著者が、「戦争」について知るために、世界各地の「戦争博物館」をめぐります。その上で、各国の「戦争観」だけでなく国の歴史についてのとらえかた、表現方法さらには、これからの戦争についても考察してます。
戦争といっても、各国とも一番多く展示されているのはもちろん「第2次世界大戦」です。例えば、ドイツおよびポーランドは戦時の遺構をそのまま忠実に残す方向で今も保存の努力をしています(アウシュビッツしかりザクセンハウゼンしかり)。また、韓国はまさに「休戦中」さらには徴兵制があるだけにアミューズメントパークのように戦争体験できる展示があったり、アメリガ合衆国の「アリゾナメモリアル」は明るく開放的であったりします。
そんな中、日本は歴史教科書同様現代史としての「第2次世界大戦」について「大きな歴史観」を共有することができず、「小さな歴史観」に基づく「平和祈念館」は各地にあるけれども韓国のような「統一した歴史観に基づく、国立の歴史博物館」はついに作られないままです。
国家によって戦争に対する捉えかたは様々ですが、国家がきちんと機能している方が、内戦等で国内が混乱しているよりも、ずっと人々の死亡率は低いという現実があります。そして、人の命の値段が高くなればなるほど大規模な戦闘ではなく「無人機」などによる小競り合いでの局地的な戦争になるのでは?というのが著者の考察で本書は終わります。
内容紹介
広島、パールハーバー、南京、アウシュビッツ、香港、瀋陽、沖縄、シンガポール、朝鮮半島38度線、ローマ、関ヶ原、東京……。世界に大量に存在する戦争博物館と平和博物館。僕たちは本当に戦争のことを知らないのか? それとも戦争のことが好きなのか? 若き社会学者が「戦争」と「記憶」の関係を徹底的に歩いて考える!
まだ誰も、あの戦争をわかっていない……。
沖縄と靖国、戦争博物館のテイストは一緒?
中国は、日本を許す心の広い共産党をアピール!
韓国は、日本への恨みを無料のアミューズメントパークで紹介!!
広島、パールハーバー、南京、アウシュビッツ、香港、瀋陽、沖縄、シンガポール、朝鮮半島38度線、ローマ、関ヶ原、東京……。
世界の戦争博物館は、とんでもないことになっていた。
「若者論」の若き社会学の論客であり、「戦争を知らない平和ボケ」世代でもある古市憲寿が世界の「戦争の記憶」を歩く。
誰も戦争を教えてくれなかった。
だから僕は、旅を始めた。
著者紹介
古市憲寿(ふるいち・のりとし)
1985年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)。株式会社ぽえち代表取締役。専攻は社会学。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)で注目される。大学院で若年起業家についての研究を進めるかたわら、マーケティングやIT戦略立案、執筆活動、メディア出演など、精力的に活動する。
著書に、『保育園義務教育化』(小学館)、『だから日本はズレている』(新潮新書)、『希望難民ご一行様』(光文社新書)などがある。
目次
序章 誰も戦争を教えてくれなかった
第1章 戦争を知らない若者たち
1 戦争を記憶する
2 戦争を知らない日本人
第2章 アウシュビッツの青空の下で
1 万博としてのアウシュビッツ
2 ベルリンでは戦争が続いている
3 僕たちはイタリアを知らない
第3章 中国の旅2011-2012
1 上海――愛国デモの季節
2 長春――あの戦争は観光地になった
3 瀋陽――倒された塔の物語
4 大連・旅順――南満州鉄道の終着地
5 再び上海――戦争博物館のディズニー映画
第4章 戦争の国から届くK-POP
1 新大久保の悪夢
2 感動の戦争博物館
3 戦争が終わらない国で
第5章 たとえ国家が戦争を忘れても
1 沖縄に散らばる記憶たち
2 平和博物館のくに
3 そうだ、戦争へ行こう
4 大きな記憶と小さな記憶
第6章 僕たちは戦争を知らない
1 2013年の関ヶ原
2 僕たちは、あの戦争の続きを生きる
3 戦争なんて知らなくていい
終章 SEKAI no OwarI
謝辞
過去から現在へー文庫版あとがきにかえて
戦争博物館レビュー
参考図書