資本主義の終焉と
歴史の危機
水野和夫 集英社新書
本書は、資本主義が終焉に向かっているという著者の見解に基づいて、資本主義の誕生から歴史を俯瞰した本です。
本書のテーマは、日本で1997年に国債利回りが2%を下回り、その後、ITバブルや戦後最長の景気拡大を経験しても、なお、利回りが回復しない状況に直面したことがきっ掛けでした。著者は、資本主義の歴史の中で、超低金利時代がかつてあったことに気がきます。それが、イタリアのジェノバの「利子率革命」です。そのことが、中世封建制の終焉と近代の幕開けを告げる兆候ととらえました、また、それと比較して、現在日本の超低金利は近代資本主義の終焉のサインではないかと考え、資本主義の考察を進めていきます。
そして、現代日本の状況から、今日、我々は資本主義の終わりに直面している、と結論づけます。しかし、著者は、本書の中で、資本主義の次に来る制度には言及していません。明確に言及できないためとしています。そして、資本主義が終わり、次の制度への移行がハードランディングされるか、ソフトランディングされるかは、まさに我々にかかっているのである、と言います。
内容紹介
金利ゼロ=利潤率ゼロ=資本主義の死。
それでも成長を追い求めれば、多大な損害が生じるだけ!
資本主義の最終局面にいち早く立つ日本。世界史上、極めて稀な長期にわたるゼロ金利が示すものは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」だ。他の先進国でも日本化は進み、近代を支えてきた資本主義というシステムが音を立てて崩れようとしている。
一六世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい、混沌をきわめていく「歴史の危機」。世界経済だけでなく、国民国家をも解体させる大転換期に我々は立っている。五〇〇年ぶりのこの大転換期に日本がなすべきことは? 異常な利子率の低下という「負の条件」をプラスに転換し、新たなシステムを構築するための画期的な書!
[対談・立ち読み]水野和夫(エコノミスト)×白井聡(政治学者)
「資本主義の死の時代を生き抜く」(「kotoba」2014年春号より)
著者紹介
水野和夫(みずの かずお)
一九五三年、愛知県生まれ。日本大学国際関係学部教授。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。主な著作に『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(日本経済新聞出版社)、共著に『超マクロ展望 世界経済の真実』(萱野稔人氏との共著・集英社新書)など。
目次
はじめにー資本主義が死ぬとき
第1章 資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ
経済成長という信仰
利子率の低下は資本主義の死の兆候 ほか
第2章 新興国の近代化がもたらすパラドックス
先進国の利潤率低下が新興国に何をもたらしたのか
先進国の過剰マネーと新興国の過剰設備 ほか
第3章 日本の未来をつくる脱成長モデル
先の見えない転換期
資本主義の矛盾をもっとも体現する日本 ほか
第4章 西欧の終焉(欧州危機が告げる本当の危機とは?
英米「資本」帝国と独仏「領土」帝国 ほか
第5章 資本主義はいかにして終わるのか
資本主義の終焉
近代の定員一五%ルール ほか
おわりにー豊かさを取り戻すために
参考文献
参考図書
資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)
- 作者: 水野和夫,山口二郎
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2019/04/27
- メディア: 新書
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