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はじめてのサイエンス

はじめてのサイエンス

      池上 彰  NHK出版新書

はじめてのサイエンス (NHK出版新書)

はじめてのサイエンス (NHK出版新書)

 

 

 前著『おとなの教養』では文系理系バランスよく取り上げられていましたが、本書はタイトル通り理系に特化した本です。ですから、サイエンスを教養にする際の入門書としても適しています。現代の科学について、一定以上科学における知識を広く身につけるには丁度良いです。特に、科学と政治や社会がどのように関わっているのかを知るのには最適です。

 本書は、物理、化学、生物、医学、地学、環境問題、と6つのテーマが語られています。そして、それぞれの分野の背景や歴史や課題を知ることができますベースになっているのは、2016年6月にNHK文化センター青山教室で2回に分けて行われた講義です。そういう意味では、話を聞くような感覚でページをめくれるし、どのテーマも平易な言葉と表現で親しみやすいです。

 本書を読めば、科学に関するニュースを興味を持って見ることができるようになるでしょう。網羅された内容で、大人であれば勿論楽しめると思いますが、子供にも早いうちから読んで、科学の知識を身につけてもらうにもよい内容だと思いました。

 それでは本書の大枠を説明しましょう。

第一章は物理です。
最初は素粒子の解説から始まり、核分裂から核兵器原発へと話は発展して行きます。日本政府がプルトニウムを確保する意図を疑うなど、政治的な話題にも踏み込んでいます。

第二章は化学です。
燃料電池から水素社会への発展が期待されます。その究極としての核融合発電に、未来が託されます。理系の話を文系にも理解できる言葉に置き換えるコミュニケーターの必要性が唱えられます。

第三章は生物です。
生命誕生の仮説から、進化論や遺伝子まで、定番が並びます。遺伝資源や遺伝子診断が、新し目の話題となります。

第四章は医学です。
エボラ出血熱を中心に、ウィルスとの闘いと共存の歴史を解説してます。移植手術、多能性細胞、ES細胞、iPS細胞、STAP細胞騒動と続きます。

第五章は地学です。
海溝型地震と内陸地震大陸移動説とプレートテクトニクス伊豆半島の出自がフィリピン近くの南洋であること、地震と火山噴火の関係は未解決であること、等々が示されます。

第六章は環境問題です。
地球温暖化懐疑論への異議が示され、温室効果ガス探求の歴史が振り返られ、パリ協定が解説されます。


科学関係の話題が、バランス良く盛り込まれ、それらの基礎を踏まえたうえでの、簡潔で判り易い解説が、読者の知的吸収力を増加させてくれます。

 内容紹介

科学とは「疑うこと」から始まります! 「天気予報」から「原発」、「地震」から「宇宙」まですべてスッキリ、 初の科学入門! 

いま、学ぶべきサイエンスとは何か? 「物理」「化学」「生物」「医学」「地学」「環境問題」─6科目のエッセンスを講義形式で明快に説く、池上彰初の科学入門。核兵器から原発、水素エネルギーから再生医療、首都直下地震から地球温暖化まで、ニュースの核心がスッキリ分かる決定版。

 

核兵器から原発、水素エネルギーから再生医療、首都直下地震から地球温暖化まで、世の中のことをしっかり把握できたとき、あなたはアルキメデスのように「やったぜ!」と思い、満足感を得るかもしれません。 ─本文より

著者紹介

池上 彰(いけがみ・あきら)
1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業。NHKで記者やキャスターを歴任、94年より11年間『週刊こどもニュース』でお父さん役を務める。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。著書に『見通す力』(生活人新書)、『おとなの教養─私たちはどこから来て、どこへ行くのか?』(NHK出版新書)、『伝える力』『情報を活かす力』(PHPビジネス新書)、『そうだったのか! 現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など多数。

目次

序 章 科学とは「疑うこと」から始まります
──現代のサイエンス六科目
第一章 素粒子から原子力まで
──「物理」の時間
第二章 水素エネルギーのメカニズムとは?
──「化学」の時間
第三章 生命誕生はどこまで解き明かされたか?
──「生物」の時間
第四章 ウイルスから再生医療まで
──「医学」の時間
第五章 首都直下地震から火山噴火まで
──「地学」の時間
第六章 地球温暖化は止められるのか?
──「環境問題」の時間

おわりに

主要参考文献

参考図書 

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

 

 

この世界を知るための 人類と科学の400万年史

この世界を知るための 人類と科学の400万年史

 

 

 

 関連サイト

15号:なぜ、すべての人たちが科学を学ぶ必要があるのか


https://berd.benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2008_15/fea_kawakatsu_01.html 
なぜ、すべての人たちが科学学ぶ必要があるのか ──科学リテラシーの重要性が高まっている理由── 川勝 博[名城大学総合数理教育センター長、教授]. 川勝 博. 科学リテラシーを身に付けさせる必要性を指摘する声が、近年、国際的に高まっている。
 
 

奴隷は科学技術、支配者は人文科学を学ぶ | プレジデントオンライン


https://president.jp/articles/-/27185 
 › 企業経営
 
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