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宇宙飛行士は早く老ける?

    宇宙飛行士は早くける?

               重力と老化の意外な関係

     ジョーン・ヴァー二カス [訳]白崎修一

向井 千秋 / 日本宇宙フォーラム監修 朝日新聞社

宇宙飛行士は早く老ける?―重力と老化の意外な関係 (朝日選書)

宇宙飛行士は早く老ける?―重力と老化の意外な関係 (朝日選書)

 

 

 本書は、NASAの宇宙医学者から見た人の健康、特に重力が与える人体への影響について書かれています。本書は、原著が米国の読者を念頭に置いた内容になっていますので、日本語訳にあたっては、著者の許可を得て日本の読者を念頭に編集し直しています。また、宇宙飛行士の向井千秋さんのチェックも入っていて、とても読みやすくなってます。

 宇宙飛行士が無重量の環境に置かれたらどうなるのか?その影響は精神面では鬱病とか、肉体面では心臓、筋肉の退化、糖尿病とか、いろんな面にあらわれます。また、無重力下では脊髄間が延びて帰還後は数週間腰痛に悩まされるそうです。

 重力がかからない宇宙空間では、宇宙酔いや骨密度の減少など切実な問題になりますが、それは老化と同じという筆者の主張から、少しでも老化を抑えるための筋トレや食生活の改善を提案をしています。そのうえ、具体例も豊富に提示され、医学的な実験研究の成果も多数紹介されています。著者は、老化は人が重力の影響を避けようとすることから始まると主張しています。

 実用面でのアドバイスも、本書には多数含まれています。例えばタバコを吸う(宇宙飛行士には禁煙が義務)と、造骨細胞の働きに悪影響が生じ、骨折や骨粗しょう症の危険度が高まるとか、口笛吹きやガム噛みは重力の影響を受けやすい下顎骨の発育に効果があるなど、本書で知ることができます。その意味で、どなたにもおすすめできる健康に関する本でもあります。

内容紹介

 家に閉じ籠もって一日中ごろごろして過ごしたり、ちょっとした移動も歩かずに車を使ったり……まるで重力の恩恵を避けているような生活が、歳をとって辛い症状に悩まされる原因だった!

 無重力状態で宇宙飛行士の身体に起こる変化は、加齢による老化とあまりにも似ている。健康を保つために、重力が不可欠であることを明らかにした、元NASA生命科学部門責任者による、重力の力を借りて健やかな老いを迎えるための知恵。

 過酷な訓練に耐えた宇宙飛行士が宇宙から戻ってくると、その肉体に年老いた人と同じような兆候がみられるのはなぜなのだろう。

 無重力状態で宇宙飛行士の肉体に起こる変化は、老化の症状とあまりにも似ている。立っていても座っていても、歩いたり走ったりしていても、私たちを地面に引きつけている重力は、私たちの骨や筋肉や身体の感覚をいつも刺激して、良い状態に保つ働きをしているらしい。だから重力の影響を受けない宇宙空間では、宇宙飛行士は一時的に老化してしまうのだ。

 家に閉じ篭もってごろごろして過ごす、ちょっとした移動も歩かずに車を使う…まるで重力の恩恵を避けているような生活は、歳をとって辛い症状に悩まされる原因 ! 重力と身体の驚くべき関係を明らかにした。

著者等紹介

ヴァーニカス,ジョーン(Joan Vernikos,Ph.D.)
NASAライフサイエンス部門責任者。宇宙医学の開拓者として知られる 。「健康なボランティアに頭を少し低くした状態でベッドに横たわる姿勢を数週間続けてもらい、精神的・肉体的な変化を調べる」実験を考案し、重力と老化の驚くべき関係を発見した。
向井 千秋(むかい・ちあき)
宇宙飛行士。慶應義塾大学医学部卒業。1985年、日本で初めての宇宙飛行士に、毛利衛土井隆雄の両氏とともに選ばれる。1994年、スペースシャトル「コロンビア」号に搭乗して、初の宇宙飛行。1998年にはスペースシャトルディスカバリー」号に搭乗して、77歳の元宇宙飛行士で上院議員だったジョン・グレンとともに「無重力と老化」についての数々の実験を行う。ストラスブールの国際宇宙大学客員教授

(財)日本宇宙フォーラム(Japan Space Forum)

1994年、日本の宇宙開発を側面から支援するために設立された。
白崎 修一(しらさき・しゅういち)
医師。弘前大学医学部卒業。1999年、4回目の宇宙飛行士選考で最終まで残った8人の1人。札幌秀友会病院勤務。

目次

日本語版によせて 向井 千秋

序        ジョン・グレン

1 宇宙飛行士は本当に宇宙で歳をとるのでしょうか
2 骨にかかる力
3 筋力をつける
4 感覚、バランス、そして調和
5 なぜ、姿勢を変え続けることが大切なのでしょう
6 体内時計と重力
7 何を食べたらよいのでしょうか
むすび―重力と寿命

訳者あとがき   白崎 修一

参考図書

(097)NASA式 最強の健康法 (ポプラ新書)

(097)NASA式 最強の健康法 (ポプラ新書)

 

 

宇宙とからだ (医学教養新書)

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関連サイト

書評: 宇宙飛行士は早く老ける? 重力と老化の意外な関係 - アストロアーツ


https://www.astroarts.co.jp/hoshinavi/magazine/books/individual/4022599057-j.shtml 
ストレートなタイトルで、内容も至って科学的(医学的)なもの。1960年代初期からNASAで研究を続けている女性著者らしく、優しい語り口で好感が持てるが、内容はハードである。全編を通じてのキーワード“重力”が地球に生きる生命に如何に大きな影響を与えて ...
 
 

力刺激と代謝、宇宙飛行士と寝たきり老人の接点を分子生物学的に解明 ...


http://living-in-space.jp/public-research/2018-2019/A01-1/index.html 
NASA宇宙医学研究者ヴァーニカスが『宇宙飛行士は早く老ける?—重力と老化の意外な関係』(朝日選書)という書籍で詳述しているように、無重力下で宇宙飛行士に出現する症状は、地上で一般的な生活を送っている高齢者が抱える問題と類似点が多い。
 
 

宇宙では、人は老化の早回しを体験する。(米研究) : カラパイア


http://karapaia.com/archives/52157694.html 
 › 知る › 自然・廃墟・宇宙
 
2014/03/28 - 実年齢以上に体の衰えを感じた宇宙飛行士だが、地球に帰還すると、年齢相応のところにまで戻れるのだそうだ。いくつか戻らない ... 宇宙飛行士の筋肉も、無重力下ではほとんど使われることがないため同様の反応を見せる。そのため宇宙 ...