日本のいちばん長い日
半藤一利 文春文庫
本書は、 1945年8月14日から8月15日にかけて、太平洋戦争での日本敗戦を一時間ごとに記録したドキュメントです。
そして、本書は、敗戦に至る経緯を克明に記述しています。例えば、近衛師団で反乱が起こりそうだった事、阿南陸相の最期、殺される直前だった鈴木首相、玉音放送の録音盤を守るためのNHK職員や侍従たちの努力など、戦争を止めるためにたくさんの人が努力し、間一髪で止めることができたのだとよくわかります。
昭和史については学校でも詳しく教えないので、一般的に太平洋戦争を一部軍国主義者や支配層が起こしたもの、あるいは石油が禁輸されたのでやむなく南方資源の確保に動いたもの、等々、の理解をしている場合が多いのではないかと思います。
だがそれだけでは、勝つ可能性はほとんどないと判っていた戦争をなぜ決断したのか、あるいはなぜあれほど激しく徹底抗戦が主張されまた実行されたのかを説明することはできないと思っていました。
本書を読んで、多くの現代の日本人には容易には理解し難い当時の実情の一端を垣間見ることにより、なぜ戦ったのか、どのようにして戦いをやめたのかを当時の日本人の精神的な面から察することができたように思いました。
内容紹介
あの日、日本で起きた事。起きなかった事──。
30万部突破の傑作ノンフィクション!
昭和二十年八月六日、広島に原爆投下、そして、ソ連軍の満州侵略と、最早日本の命運は尽きた…。しかるに日本政府は、徹底抗戦を叫ぶ陸軍に引きずられ、先に出されたポツダム宣言に対し判断を決められない。八月十五日をめぐる二十四時間を、綿密な取材と証言を基に再現する、史上最も長い一日を活写したノンフィクション。
文藝春秋の〈戦史研究会〉の人々が『日本のいちばん長い日』を企画し、手に入る限りの事実を収集し、これを構成した。いわばこれは〝二十四時間の維新〟である。しかもそれは主として国民大衆の目のとどかないところでおこなわれた。──大宅壮一「序」より
著者紹介
半藤 一利(はんどう・かずとし)
1930(昭和5)年、東京生れ。東京大学卒業後、文藝春秋に入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て、作家となる。1993(平成5)年、『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、1998年、『ノモンハンの夏』で山本七平賞を受賞する。2006年、『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』で、毎日出版文化賞特別賞を受賞。『決定版 日本のいちばん長い日』『聖断―昭和天皇と鈴木貫太郎―』『山本五十六』『ソ連が満洲に侵攻した夏』『清張さんと司馬さん』『隅田川の向う側』『あの戦争と日本人』『日露戦争史1』など多数の著書がある。
目次
序 大宅 壮一
プロローグ
十四日正午‐午後一時―“わが屍を越えてゆけ” 阿南陸相はいった
午後一時‐二時―“録音放送にきまった” 下村総裁はいった
午後二時‐三時―“軍は自分が責任をもってまとめる” 米内海相はいった
午後三時‐四時―“永田鉄山の二の舞いだぞ” 田中軍司令官はいった
午後四時‐五時―“どうせ明日は死ぬ身だ” 井田中佐はいった
午後五時‐六時―“近衛師団に不穏の計画があるが” 近衛公爵はいった
午後六時‐七時―“時が時だから自重せねばいかん” 蓮沼武官長はいった
午後七時‐八時―“軍の決定になんら裏はない” 荒尾軍事課長はいった
午後八時‐九時―“小官は断固抗戦を継続する” 小園司令はいった
午後九時‐十時―“師団命令を書いてくれ” 芳賀連隊長はいった
午後十時‐十一時―“斬る覚悟でなければ成功しない” 畑中少佐はいった
午後十一時‐十二時―“とにかく無事にすべては終った” 東郷外相はいった
十五日零時‐午前一時―“それでも貴様たちは男か” 佐々木大尉はいった
午前一時-二時ー”東部軍になにをせよよいうのか” 高嶋参謀長はいった
午前二時-三時ー”二・二六のときと同じだね” 石渡宮相はいった
午前三時-四時ー”いまになって騒いでなんになる” 木戸内府はいった
午前四時-五時ー”斬ってもなにもならんだろう” 徳川侍従はいった
午前五時-六時ー”御文庫に兵隊が入ってくる” 戸田侍従はいった
午前六時-七時ー”兵に私の心をいってきかせよう” 天皇はいわれた
午前七時-八時ー”謹んで玉音を拝しますよう” 館野放送員はいった
午前八時-九時ー”これからは老人のでる幕ではないな” 鈴木首相はいった
午前九時-十時ー”その二人を至急とりおさえろ!” 塚本憲兵中佐はいった
午前十時-十一時ー”これから放送局へゆきます" 加藤局長はいった
午前十一時-正午ー”ただいまより重大な放送があります” 和田放送員はいった
エピローグ
あとがき
参考文献
主要人名索引
参考図書
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
- 購入: 55人 クリック: 1,360回
- この商品を含むブログ (304件) を見る
関連サイト
【自作再訪】半藤一利さん「日本のいちばん長い日」 歴史の「ウソ」常識で ...
https://www.sankei.com/life/news/140526/lif1405260021-n1.html
池上彰の戦争を考えるSP第10弾~「日本のいちばん長い日」がはじまった ...
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2018/017720.html