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ビットコインのからくり

      暗号が通貨になる

ビットコイン」のからくり

  「良貨」になりうる3つの理由

        吉本 佳生 / 西田宗千佳 講談社 

暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり (ブルーバックス)

暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり (ブルーバックス)

 

 

 本書は仮想通貨も含めた最先端通貨論の一般向け概説書です。現代日本および世界の通貨事情を概説しており、円、ユーロ、ドルの今後の動向、および、三菱銀行等の仮想通貨の試みを考察しています。以下簡単に、まとめてみました。
 
 日本政府は、実物資産(モノ)としてビットコイン取引を認めました。取引は認めるが通貨や金融資産としては認めないという立場です。金融庁よりも経産省の方がビットコインに積極的と言われてます。
 市場での流動性は政府が保証するものではないので、なんらかの資産が通貨となるかどうかを決めるのは政府ではありません。政府がなにかを統計上の通貨として認めるかは政府が主導して決めているのではなく、実態に合わせて追認しています。多くの人が貨幣として使うとそれだけで通貨といえます。


 ネット決済はクレジットカードを前提とするが、クレジットカードを持てない若年層にもデジタルコンテンツに対する需要があります。そうした需要に対応するにはプリペイドカードが適しています。決済時にはクレジットカードと同じように使えます。
 
 取引相手の信用と通貨の信用は別に考えるべきです。取引相手を信用できないという問題は通貨の側では解決できないです。ビットコインのような暗号通貨の安全性をいくら高めても、取引で騙されるリスクは消せないです。
 ビットコインは電子化されている点では預金に似ており、匿名性があるという点では現金に近いです。通貨には寿命があります。ビットコインをめぐる議論の中心にあるのは「ビットコインという通貨の寿命が長いか短いかの問題」です。

 国際決済ネットワークの事実上の中心にはアメリカの大手民間銀行があります。だからこそ、米ドルが基軸通貨として機能しています。外国為替市場の取引の9割は米ドルを相手とする取引です。

 日本からロシアに送金するときも円からルーブルにいきなり交換すると国際的な預金ネットワークを使いにくいです。円を米ドルに交換してアメリカの大手民間銀行を経由してロシアの銀行に送金し、そのあとにルーブルに交換する方が効率がよかったりします。アメリカの大手民間銀行にとって、この仕組みは既得権益化しています。
 AからBへの送金に際し、クレジットカード会社はBの銀行に入金(金貸し)し、そのあとAの銀行から引き落とせば、つまり、クレジットカード会社が一時的に金を貸すことにより(金融)、決済が成立します。

 ビットコインの登場を脅威に感じているのはクレジットカード会社であり、少額の国際決済をビットコインが担うことはクレジットカード会社のビジネスを侵害します。一方、少額の国際決済は大手民間銀行にとってはそれほど大きな既得権ではないです。
 国際決済のときだけビットコインに交換し、送金してすぐに米ドルやユーロなどに交換してもらえば為替リスクはきわめて低くなります。クレジットカード以上に安全面は強固だし、自己責任の通貨だから手数料も安いです。
 ビットコインは、コンピュータ上に記録されたデータを暗号化し、その一意性を保証することで、通貨になりうる属性をもたせたデータです。ビットコインがいつまで使えるかは、企業側がいつまでビットコインでの支払いを受け付けるか、で決まります。データとしてのビットコインが存在することと、ビットコインで支払いができることは違います。
 ビットコインには管理元がないです。まちがった相手に支払ったり、パソコンが壊れてしまうとビットコインを失う可能性があります。現金の入った財布の管理と同じです。

 ビットコインの暗号を解く秘密鍵があれば、自分がいまいくらビットコインを持っているかを把握できます。秘密鍵を他人に知られるとビットコインを盗まれてしまいます。ビットコインの取引情報は暗号化され、複製・変更はできません。

 ビットコインの利用者がパソコンにインストールするウォレットとよばれるソフトがビットコインを管理するP2Pネットワークを構成します。ウォレットごとに特定文字列(ビットコインアドレス)が形成されます。これは口座番号みたいなものです。このビットコインアドレスと秘密鍵を紙に印刷したものは「ペーパーウォレット」とよばれます。ビットコインアドレスAからビットコインアドレスBへ何BTを送る、という情報が回覧板のように伝わっていく仕組みです。よって、自分が使うビットコインの通信の中には他人の決済情報も含まれます。P2P型は管理コストを利用者全員に薄く広く負担させているともいえます。


 ネット内で価値が高まると現金への換金性も高まります。例えば、たくさんの人がプレイするゲームであれば、ゲーム内通貨を求める人も増えるので、価値が高まります。
 OSについては、開発に対する根本的な考え方が変わりました。昔はハードウェアの性能が低かったので「効率よく動くこと」が最優先でした。いまは動作速度以上に「ソフトウェアの欠陥があっても問題を拡大しない構造」「継続的にソフトウェアの改善を行いやすいしくみ」が優先されます。結果として、ソフトウェアの寿命は長くなりつつあります。

 内容紹介

「通貨の未来」を徹底的に考える――。「国家の後ろ盾がある法定通貨」は、完全無欠ではない。暗号通貨は、「欠点だらけの現行通貨」を革新する可能性を秘めている。暗号がなぜ、おカネになるのか?電子マネーやクレジットカードとどうちがうのか?偽造される心配はないのか?ビットコインの背後に潜む数学や暗号技術と、経済へのインパクトをくわしく語る。

「通貨の未来」を徹底的に考える――。

「国家の後ろ盾がある法定通貨」は、じつは完全無欠ではない。
為替リスクを抑え、送金手数料も安い暗号通貨は、
「欠点だらけの現行通貨」を革新する可能性を秘めている。

シンプルな暗号が、なぜおカネになるのか?
電子マネーやクレジットカードとどうちがうのか?
偽造される心配はないのか?
私たちの生活に、どんな影響をおよぼすか?

投資家たちを震撼させても、なお進化を続けるビットコイン
その背後に潜む数学や暗号技術と、経済へのインパクトをくわしく語る。

著者紹介

吉本 佳生(よしもと・よしお)
1963年、三重県生まれ。エコノミスト・著述家。専門分野は生活経済、金融経済、国際金融 。著書に『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり』(講談社ブルーバックス)、『金融工学の悪魔』(日本評論社)、『スタバではグランデを買え!』(ダイアモンド社)など。

西田 宗千佳(にしだ・むねちか)
1971年、福井県生まれ。ネットワーク、IT、先端技術分野の第一人者として活躍するフリージャーナリスト。著書に『顧客を売り場に直送するビッグデータがお金に変わる仕組み』(講談社)など。

目次

はじめに

第1章 ビットコインとはなにか?なぜ生まれたのか?―ハッカーの遊びから生まれた“少額決済”の解決策
第2章 ビットコインは“通貨”として通用するか?―「世界で使える良貨」の条件
第3章 ビットコインを支える暗号技術―コピーできても偽造できない通貨
第4章 ビットコインは通貨の未来をどう変えるか?―「国家破産に巻き込まれない通貨」の可能性
ビットコインのもうひとつのインパクト―数学の勉強には夢も実益もある

さくいん / 巻末

参考図書

 

 

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

 

 

 関連サイト

東京大学法律勉強会によるビットコインに関する訪問研究活動の発表資料です。 ... 斉藤賢爾『これでわかったビットコイン:生きのこる通貨の条件』(太郎次郎社エディタス); 吉本佳生、西田宗千佳『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』(ブルーバックス).
 
 

暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり - ダ・ヴィンチニュース


https://ddnavi.com/news/198690/a/ 
› ニュース
 
2014/06/29 - 暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』(吉本佳生、西田宗千佳/講談社). ビットコインという言葉を、何となくニュースで見たことがある人は多いはずだ。でも、これが一体何なのか?怪しいという人もいれば、通貨の理想像だと語る人もいる。
 
 

ビットコイン急騰でも再編が避けられない事情 | 市場観測 | 東洋経済 ...


https://toyokeizai.net/articles/-/275182 
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2019/04/10 - 4月に入り暗号資産(仮想通貨)の価格が上昇している。代表的な暗号資産であるビットコインは、ついに50万円を突破。1月末に年初来安値(36.7万円、フィスコ仮想通貨取引所)をつけた後は、じりじりと下値を切り上…