森羅万象を見つめた少年
飯倉招平 岩波ジュニア新書
本書は、ジュニア新書だけあって分かりやすく、南方熊楠の入門書として適していると思います。本書を読んでみて、南方熊楠が、これほどまでに激しい知識欲を生まれ持った人であったことに驚きました。また、組織の型に填められない、純粋な知識人としての世界観を持つ人間であると思いました。
本書では、著者の関心は南方熊楠の日記や手紙などからその時々の南方熊楠の心境を考察することに向かっています。それによりますと、南方熊楠の特殊性は学校教育に背を向け、自らの関心ある物事にのみに突き進んだ点にあります。そのことを考えると南方熊楠の魅力は、万事を無難にこなすより、やりたいことだけをやったことにあると思いました。
内容紹介
科学,文学はじめ,東洋と西洋のあらゆる知を独学で総合しようとした型破りな明治の博物学者,南方熊楠(みなかたくまぐす).郷里の和歌山に発し,東京,アメリカ,イギリスにわたる,彼の青春時代の研鑽と放浪の旅のあとを,日記や手紙,スケッチなどを手がかりにしてたどる.好奇心にみちた,真剣にして奔放な生きざまが今甦る。
著者紹介
飯倉 照平(いいくら・しょうへい)
1934年3月28日 生まれ。中国文学者。南方熊楠研究で著名、東京都立大学名誉教授。千葉県生まれ。東京都立大学中国文学科卒業。出版社勤務、神戸大学文学部講師、東京都立大助教授・教授、1998年定年退官。『南方熊楠全集』、『同選集』(平凡社)の校訂、中国民話の会世話人、南方熊楠邸保存顕彰会で資料整理・刊行に当たっている。2004年に南方熊楠賞特別賞受賞。
目次
はじめに
序章 19歳の船出と出会い
1 和歌山城下に生まれて―好奇の目を輝かせた少年
2 博物学への傾倒―旧制和歌山中学のころ
3 東京遊学前後―学校教育での挫折
4 修学と放浪―アメリカでの六年
5 研鑽と失意―イギリスでの八年
終章 熊野の山野を駆ける―帰国以後の熊楠
南方熊楠・略年譜
付記
和歌山市地図
参考図書
関連サイト