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検証 北朝鮮拉致報道ーメディアは死んでいたー

メディアは死んでいた

   検証 北朝鮮拉致報道

   阿部 雅美  産経新聞出版 

メディアは死んでいた 検証 北朝鮮拉致報道

メディアは死んでいた 検証 北朝鮮拉致報道

 

 

 本書は、昭和55(1980)年1月、北朝鮮による日本人拉致疑惑をいちはやく報じた元産経新聞社会部記者阿部雅美氏による拉致取材記録です。本書の特色として、本文の前に年表があり拉致問題を時系列に沿って書かれていて分かりやすくなってます。

 一般的に、拉致問題を知られようになったのは、昭和63(1988)年に、前年に大韓航空機爆破事件で逮捕された金賢姫が年が明けてから、日本人教育係の李恩恵の存在を告白し、その10年前の昭和53年に失踪した3組のアベックのうちの1人ではないかとマスコミが盛んに取り上げたときです。

 3組のアベック蒸発事件について、阿部雅美氏も「長い間、産経の報道を虚報扱いし続けてきた新聞、メディアがこぞってアベック3組を、まるで自社の既報であるかのように扱う報道が溢れ、唖然とした」と書いています。 


 その1988年の3月26日、国会で初めて3組のアベック蒸発が取り上げられ、梶山静六国家公安委員長が「北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございます」という重大な答弁をしたのに、マスメディアはほとんど無視しました。産経新聞日本経済新聞がベタ記事で取り上げただけで、他の新聞は1行も取り上げなかった。阿部氏は「これは尋常でない。トップニュースになるべき歴史的な国会答弁がテレビニュースに流れなかった」と驚き、この日を「メディアが死んだ日」と述べています。


 阿部氏は、そのことを知った時点で、大きく紙面報道することを社内で強くすべきだったと悔やんでいます。政府が国会で北朝鮮による日本人拉致疑惑の存在を認めたとなれば、他紙もテレビもそれなりの報道をせざるを得ないはずで、これを契機に拉致取材合戦が始まり、新事実が明らかになって、世論が盛り上がる可能性もあったのに、そうしなかったことを恥じ入っています。


 1985年に発覚した原勅晁さん拉致でも動かぬ証拠がありながら、メディアの扱いは小さく、日本社会は反応を示さなかった。アベック拉致疑惑報道も間もなくやみ、そうして1997年のめぐみさん拉致疑惑発覚まで、取り返しのつかない空白が生じました。

 横田早紀江さんは「拉致問題がしっかり解決されなければ、日本はもっと良くない方向に行く気がしてなりません。拉致が解決されない日本って本当に、絶対におかしいですよ」と言う。拉致問題は他人事ではなく、日本人全体の問題なのです。初期の頃は元気に活動されていた横田滋さんも有本嘉代子さんも痛々しいほどに老いてます。もう猶予はない。拉致問題は次の世代に積み残してはならないのです。

 阿部氏は、「どう報道したか、しなかったか、が正しく記憶されるべきではないだろうか。それらをも含めて拉致事件と考えるからだ」「拉致事件の存在を知った時期に、人により20年もの隔たりがあるその異様さを、メディアの不報と合わせて読み取っていただければ幸いだ」と述べています。 

内容紹介

日本社会は北朝鮮の拉致犯罪になぜ気付かなかったのか。
気付いてからも他人事だったのはなぜか。
1980年、北朝鮮による拉致事件をスクープして以来、拉致問題に取り組んできた記者が、40年目の真実を初めて語った! 

産経新聞人気連載「私の拉致取材-40年目の検証」待望の書籍化

あの日、報道各社は北朝鮮をめぐるトップ級のニュースを報じなかった。
産経、日経はベタ記事、朝日、読売、毎日には一行もなく、
NHK、民放も無視した。メディアの役割を放棄したのだ……。

どう取材したか、しなかったか、どう報道したか、しなかったか、が正しく記憶されるべきではないだろうか。なぜならば、それらをも含めて拉致事件と考えるからだ。

           

歴史に「もし」「たら」はないが、もし、あの時、メディアが一斉に報じていたら、今とは違う、今よりずっと良い結果に至っていたのではないか、との思いがぬぐえない。

一度ならずあった契機に目をつぶり、拉致疑惑の存在を否定、黙殺し続けた事実を消すことはできない。(序章に代えてより)

著者紹介

阿部雅美(あべ・まさみ)
1948年、東京生まれ。72年、産経新聞社入社。社会部、整理部、文化部、シンガポール特派員などを経て、東京、大阪本社社会部長、サンケイスポーツ編集局長、東京本社編集局長、常務取締役、産経デジタル社長を歴任。96年、長期連載「未来史閲覧」で、97年、「北朝鮮による日本人拉致疑惑 17年を隔てた2件のスクープ『アベック連続蒸発』→『横田めぐみさん』」で、それぞれ新聞協会賞を受賞。

目次

序章に代えて

年表

第一章 日本海の方で変なことが起きている
偏った空気/夜回り/地方紙/富山県警/事件現場/オバQ/被害者証言/不審船/動機/読売記事/家出人/恋人作戦/共通点/接岸地/背乗り/掲載見送り/柏崎/夏の意味/1面トップ/宇出津事件/だまされ拉致/黙殺

第二章 メディアが死んだ日
お墨付き/続報/赤塚不二夫/遺留品破棄/辛光洙/フグ/任務完了/免許証/逮捕/李恩恵/88年3月26日/梶山答弁/幻/自責の念

第三章 産経も共産党も朝日もない
金丸訪朝団/ソウル出張/金賢姫/田口八重子/朝日・毎日訪朝団/共産党の同志/双子の情報/横田家/行方知れずの姉/裏取り/実名報道/安明進/反発

第四章 いつまで〝疑惑〟なのか
家族会/政治色/丁字路/政府認定/受賞スピーチ/不自然/漱石/土井たか子/テポドン/大阪/2種類の風/タブー/追跡/自爆スイッチ/ターニングポイント

第五章 金正日が私の記事を証明した
欧州ルート/U書店/1枚の写真/よど号/八尾証言/国会決議/不破発言/政党/電撃訪朝/謝罪/断定/潮目/蓮池家再訪/別人/潮時/朝日新聞/前兆/38度線/棘

第六章 横田家の40年
大きな組織/消耗/濃厚な足跡/不思議な国

あとがき

政府が認定した12件17人の日本人拉致被害者

 参考図書

祈り 北朝鮮・拉致の真相 復刻版

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拉致と決断 (新潮文庫)

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拉致はなぜ防げなかったのか (ちくま新書)

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関連サイト 

1988年3月26日、メディアが死んだ日 - iRONNA


https://ironna.jp/article/9892 
産経新聞出版 本書『メディアは死んでいた 検証 北朝鮮拉致報道』(産経新聞出版)は産経新聞に連載された《私の拉致取材 40年目の検証》に加筆したものである。連載中、読者からの反響で最も多かったのは、本書で繰り返し触れた《メディアが死んだ日》 ...
 
 
家族を、人生を奪い去った北朝鮮による拉致。すべての拉致被害者を、日本は必ず取り戻す。拉致問題は、我が国の国家主権と国民の生命・安全に関わる重大な問題であり、その解決なくして北朝鮮との国交正常化はありません。
 
 

法務省北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めましょう


http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken103.html 
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北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の認識を深めるとともに,国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し,その抑止を図ることを目的として,平成18年6月に,「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処 ...