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すべての権力は銃口から生まれるのか!?ー天安門に立つー

   天安門に立つ

      新中国40年の軌跡

ハリソン・E・ソールズべリー

  [訳]三宅真理、NHK取材班 

  日本放送出版協会

天安門に立つ―新中国40年の軌跡

天安門に立つ―新中国40年の軌跡

 

 

  中華人民共和国建国当時から1989年6月4日の天安門事件までの軌跡を追う本書は、当時NHKで同名のドキュメント番組が放映され反響を呼びました。番組の内容も秀逸であったが、本書も番組同様よくまとまっています。そして、著者のソールズベリー氏は、長征の道を実際に歩き、その記録がベストセラーになった世界的な記者です。

 約30年前に出版された本だが、1949年の新中国建国から89年天安門事件に至る40年の歴史(その前後も含む)に関して、勉強になり多くを考えさせられたものはないです。

 大躍進政策文化大革命林彪事件、中ソ対立、ニクソン訪中、四人組逮捕、トウ小平の権力掌握、改革開放政策、89年の天安門事件で中国の行く手に暗雲が立ち込めるまでの重要事件の内幕と、毛沢東周恩来トウ小平等の中国現代史の主人公の生き様とを、豊富な写真とともに、愛情をもって、時には厳しく、著者は語っています。

 中国が成長し続けることへの懐疑や江沢民指導力への疑問等、現時点から見ると予想が外れた部分もありますが、民主・言論の自由・指導者層の腐敗の根絶等は、今も中国に突きつけられた課題です。

 特に毛沢東批判が封殺された59年の廬山会議を、「中国は毛の声と、それを山びこのように繰り返す側近の声しかきこえてこない、荒涼たる沈黙の砂漠と化していった」と評する筆鋒は鋭いです。批判する言論の自由の消滅が毛沢東の暴走につながったのです。そして、祖国に貢献したのに、毛沢東の敵とされた彭徳懐劉少奇の、哀れな、しかし気骨をもって迎えた死。

 新中国の歴史の裏側のエピソードに満ちた本書は、面白くて一気に読めます。 中国について最低限知っておきたい内容を記した入門書といえる一冊です。

内容紹介

 世界を代表する中国ウオッチャーが中華人民共和国宣言から“血の日曜日”まで激動する新中国40年の歴史と現実、そして混沌たる行方を、内側から活写する!

 砲音を轟かせて進む戒厳戦車部隊。闇夜に放たれた銃弾の嵐。天安門広場を埋めた学生・市民の壁を切り裂き、武力制圧した「血の日曜日」事件。中国・鄧小平体制は、烈しく揺らいだ。事件当日、取材のため、広場にほど近いホテルに宿泊中だったソールズべリーは、現代中国史上まれに見る事件に遭遇することなった。

 1949年10月1日、天安門楼上からの毛沢東宣言で正式に建国された共産政権国家・中国。以来、新中国は革命40周年を迎える(1989年現在)。中国はいま、近代化・開放政策を推進し、民主化運動のなかで急激に変貌しながら、前例のない「中国社会主義」の道を進んでいる。

天安門事件

六四天安門事件は、1989年6月4日に中華人民共和国北京市にある天安門広場民主化を求めて集結していたデモ隊に対し、軍隊が武力行使し多数の死傷者を出した事件である。 

著者紹介

ハリソン・E・ソールズべリー(Harrison E. Salisbury)1908年、ミネアポリスに生まれる。ミネソタ大学中退後、UP通信社の記者となり、第二次世界大戦の勃発と同時にロンドン支局に勤務、連合軍の従軍記者として北アフリカ・中東戦線を取材。1949年『ニューヨーク・タイムズ』紙に移り、モスクワ特派員として活躍、1955年に『ロシアのアメリカ人』でピュリッツァー賞を受賞。

 一方、中国になみなみならぬ関心を抱き、米中国交樹立(1972年)以前の訪中がかなわぬ60年代から、優れたルポタージュを発表した。1984年には中国建国の象徴でもある「長征」の道7400マイル全踏破、その記録を出版し、中国語にも翻訳されてベストセラーとなった。1993年没。著書に『長征ー語れらざる真実』、『黒い夜白い雪ーロシア革命1905ー1917』など多数。

目次

プロローグ

序章 天安門、1989年6月4日
第1章 毛沢東、“中華人民共和国”成立を宣言
第2章 毛の腹心たち―劉少奇周恩来、鄧小平
第3章 毛の緊急計画を引き受ける鄧小平
第4章 汚された奇跡―「大躍進」
第5章 廬山会議
第6章 周恩来の苦闘
第7章 江青の晴れ舞台
第8章 “世界は覆りつつある”
第9章 待ち人来たらず
第10章 “革命は宴会ではない”
第11章 親が英雄なら子も英雄
第12章 劉少奇の悲劇
第13章 1967年のパリ・コミューン
第14章 林彪の謎
第15章 中ソ紛争
第16章 ニクソン毛沢東同志を訪問
第17章 毛沢東の死
第18章 白塔寺―女皇江青の宮殿
第19章 「真理の基準は実践にあり」
第20章 白猫黒猫論
第21章 民主の壁
第22章 金持ちになることは良いことだ
第23章 海辺の危機
終章 暗雲たれこめるなかで―岐路に立つ革命40周年

ソールズべリー氏との取材を終えて

 

参考図書

長征―語られざる真実

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八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

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天安門事件から「08憲章」へ 〔中国民主化のための闘いと希望〕

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 関連サイト

20代中国人が告白する「若者が天安門事件を語らない理由」 | BUSINESS ...


https://www.businessinsider.jp/post-192035 
5 日前 - 学生の民主化運動を中国共産党指導部が武力弾圧した天安門事件から6月4日で30年。インターネットやSNSが普及 ... ただ、1人の人物が戦車の前に立って立ち向かっていくシーンだけは鮮烈に記憶しています。 彼らが、国を相手に戦って ...
 
 

「新たな天安門」は不可能に、監視と弾圧を強める中国 写真27枚 国際 ...


https://www.afpbb.com/articles/-/3227762 
6 日前 - 【6月3日 AFP】1989年6月4日に発生した、中国の民主化運動を当局が武力弾圧した天安門(Tiananmen)事件 ... 中国・北京の天安門広場を警備する武装警察(2019年4月; 中国・北京の天安門広場で、監視カメラの前に立つ武装警察 ...
 
 

【解説】 天安門事件30周年、中国の一大「忘却」事業 - BBCニュース


https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48494268 
4 日前 - 数カ月前には私自身、中国当局がいかに徹底的に天安門事件について市民の行動を取り締まるか、目の当たりにした。市民が一切、 .... この時に撮影された映像には、たった1人の男性が先頭の戦車の前に立つ姿が映っている。男性は、戦車 ...