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死に方を選べる社会を

安楽死で死なせて下さい

      橋田 壽賀子       文春新書

安楽死で死なせて下さい (文春新書)
 

 

 本書は、著名人である作者が安楽死に対しての問題提起をしてます。橋田氏が安楽死に対しての見解を示したことで隠れた世論が顕在化したと思います。実際、反響が大きかったらしく、よくぞ言ってくれたとの賛同意見が多かったと聞きます。
 本書を読了後に改めて現代の日本医療に疑問を感じざるを得ませんでした。認知症になって本来の(自分)の意思が表明できずにただ単に生かしておく日本の医療です。在宅死から病院死が当たり前になった日本社会、著者が示しているように本人が十分だと感じたなら、そこで自分自身で正常な判断力がある内にピリオドを打ちたいというのは日本国内に数多くいるのではないでしょうか。

内容紹介

 人に迷惑をかける前に、死に方とその時期くらい自分で選びたい。92歳「渡る世間は鬼ばかり」の人気脚本家が語る究極の往生論。衝撃の問題提起で2016年「文藝春秋読者賞」受賞!

 病気になったとき、認知症になって自分自身のことが分からなくなったとき、どのように最期を迎えたいと思うでしょうか。立つ鳥跡を濁さずというのは日本人の美徳の一つ。子供や他人に厄介をかけず、苦しまず逝きたいと考える人が増えてきています。そんな世の中にあった小さな声を代弁したのが本書です。医療といえば延命という常識はまだ続きそうですが、今後は「渡鬼」の英作さんのように、看取り医も増えるのかもしれません。

92歳「渡る世間は鬼ばかり」の人気脚本家が語る究極の往生論
衝撃の問題提起で2016年「文藝春秋読者賞」受賞!
NHKクローズアップ現代+「92歳の“安楽死宣言" 橋田壽賀子 生と死を語る」で話題沸騰。

 著者が「終活」を始めたのは89歳の時でした。きっかけは著者のことをママと呼んで親しくしている女優の泉ピン子さんから「ママはもう90なんだから、じゅうぶん歳を取ってるんだよ」と言われたことでした。夫に先立たれ、子供もなく、親しい友人もいない天涯孤独。仕事もやり尽くし、世界中の行きたい所へも行きました。やり残したことも、会いたい人もいない、もう十分に生きたと思いました。遺言は80歳の時に作っておいたので、まずは物の整理から始め、今までのドラマの原稿、ビデオテープ、手紙類などを大量に処分しました。あとは人に知られずにひっそりといなくなり、死んだことも公表せず、葬式や偲ぶ会もしないと決めたのです。
 ただ、唯一気がかりなことは、病気になったり、認知症になったりして、人さまに迷惑をかけることです。それは著者の尊厳の問題でした。死ぬ時に痛いのや苦しいのも勘弁してほしい。いつどうやって死ぬのかはやはり自分で決めたいと思った時に考えたのが「安楽死」です。しかし、現在の日本の医療現場で安楽死は許されていません。ヨーロッパの国やアメリカの州のいくつかで合法化されていますが、日本人が安楽死を希望する場合はスイスのNPOを頼ることになります。そのため著者は、日本でも法を整備し、自らの死に方を選択する自由を与えてほしいと主張します。もちろん、あくまで本人が希望し、周りの人の理解が得られた場合です。
 著者が2016年12月号の「文藝春秋」に寄稿した「私は安楽死で逝きたい」は大きな反響を呼び、第78回文藝春秋読者賞を受賞しました。読者の方からは「私も賛成です」「法制化の旗振り役になってください」など多くの賛同の声が寄せられました。本書には、病気で苦しむ妻に悩む男性や、進行性の難病を抱える男性と著者との手紙の対話も収録しています。

著者紹介

橋田 壽賀子(はしだ・すがこ)
1925年、ソウル生まれ。大阪府立堺高等女学校、日本女子大学校国語科卒業。早稲田大学第二文学部中退。初の女性社員として入社した松竹の脚本部を経てフリーの脚本家となる。1966年、TBSプロデューサーの岩崎嘉一氏と結婚。NHK放送文化賞菊池寛賞、勲三等瑞宝章などを受賞・受勲。2015年、脚本家として初の文化功労者に選出される。橋田文化財団理事長。

目次

はじめに
第一章 戦争で知った命の「軽さ」
「死ぬなんて当たり前だった」戦争体験
特攻隊員に渡したふるさとへの切符
焼け焦げた死体がゴロゴロ(他)
第二章 命とは誰のものか
「ママはもう九十なんだから」
俳優さんの手紙、ハンドバッグ百二十個を処分
私の役目は終わった
葬式はしないで!(他)
第三章 人間の尊厳とはなんだろう
夫にがん告知しなかった苦しみ
どうせ死ぬのなら、最期までタバコを
文學者之墓へ時計を入れる(他)
第四章 私は安楽死で逝きたい
相続相手もな無し、自分で作ったお金だから、使い切って死にたい
楽しく過ごして、終わればお別れ
身内よりお手伝いさんが楽
自分のお金は自分の人生に使う(他)
第五章 死に方を選べる社会を
昔の医者は「看取り」専門だった
患者の心を見ない医者たち
看取り医の未来――『渡鬼』の本間英作に込めた思い(他)
第六章 二十歳になったら、死を見つめよう
予想していなかった反対や懸念の声も
自殺原因の半数は健康不安
貧困が原因になってはダメ
二十歳の誕生日に、死について考えよう(他)
付録・読者メッセージとの対話
あとがき

 

参考図書 

 

私の人生に老後はない。―今日一日を満足して生きるコツ

私の人生に老後はない。―今日一日を満足して生きるコツ

 

 

 

 関連サイト

2017/09/26 - 橋田壽賀子さん“安楽死宣言” 「迷惑をかけず生きたい」. 先月(8月)出版された「安楽死で死なせて下さい」。そこには、橋田さん自身の生き方や死に方についての考えが記されています。 安楽死の理由の1つが「迷惑をかけたくない」。 日本の ...
2018/03/05 - 渡る世間と安楽死:1 『おしん』『渡る世間は鬼ばかり』をはじめ、国民的なテレビドラマを手がけてきた脚本家・橋田寿賀子 ... 記者 橋田さんの安楽死に関する発言や著書『安楽死で死なせて下さい』にあれだけの反響があったというのは、とりも ...
 
 

安楽死で逝かせて」橋田壽賀子の主張はここがおかしい - iRONNA


https://ironna.jp/article/8620 
脚本家の橋田壽賀子さんが『安楽死で死なせて下さい』という本を書かれた。多くの人が彼女の主張に賛同し、にわかに安楽死議論が盛んになっている。92歳の橋田さんは、もし認知症になると人に迷惑をかけるから、そうなる前にスイスの「ディグニタス」という ...