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生物はなぜ誕生したのか

生物はなぜ誕生したのか

     生命の起源と進化の最新科学

ピータ・ウォード ジョセフ・カーシュヴィンク

     [訳]梶山 あゆみ   河出書房新社

生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学

生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学

 

 

 本書は40億年に及ぶ地球生命史を、この二、三十年に急速に発展した宇宙生物学、地球生物学、進化生物学、新たな化石の発見などを基礎に地球生命の壮大な歴史を詳細に検討したものです。
 ダーウィンのころは、地球進化については天変地異説と斉一説(現在進行している現象と同じ事が太古の昔から続いてきたはず)の対立があり、斉一説が勝利しました。

 しかしながら、著者等の立場は徹底した斉一説の否定です。これは、現在の知見からすると当たり前で、本書で紹介されているように、プレートテクト二クスによる大陸移動は、気候変動や地球の回転そのものに影響するし、全球凍結や隕石衝突等もあったからです。

 これらが、5回に及ぶ大絶滅(著者等の立場では10回)を引き起こしました。最初の大絶滅は、少々様子が違いシアノバクテリアによる光合成の発明が酸素を生み出し、その毒性で嫌気的環境に適応していた生物の大絶滅を引き起こしました。
 本書では、著者等の専門分野である地球科学や古生物学を背景に、酸素濃度や二酸化炭素濃度の変遷が、地球史に大きな意味を持っていた事を強調します。さらに、森林の火災や新生物の誕生そのものが、更なる変化を生み出した様子も述べられています。
 生命誕生の様々な可能性を検討した後に、現在に至るまでの生命進化の大筋が述べられています。それは、新しい方法やそれまで知られていなかった化石の発掘、氷床のボーリングによる新しい知見等に支えられていて、それまでの旧い見方を刷新します。  

内容紹介

絶滅と繁栄の生命進化全史! 

生命は火星で誕生し、大気組成などの地球環境の劇的な変化が、幾度もの大量絶滅とそれに続く進化を加速させた! 
宇宙生物学と地球生物学が解き明かす、まったく新しい生命の歴史! 

知的興奮、大爆発! 
爆発的な知的興奮が全編を通じて持続するほど面白い話が目白押しだ。
そして、この本を読むと、よほどの大発見がない限り、向こう10年ほどは、
同じような内容の本を読む必要はないはずだ。
(仲野徹 2016.2.14 HONZ書評より)

21世紀にドラスティックに変わりつつある生物の進化史をまとめたのが、本書だ。
新しい事実と、その解釈がふんだんに登場する。
(松井孝典 2016.02.22 毎日新聞夕刊より)

著者等紹介

ピーター・ウォー(Peter Ward)
シアトルのワシントン大学生物学教授にして、地球科学および宇宙科学の教授。数多くのドキュメンタリー番組に出演。2009年には自身が制作した8時間のテレビシリーズ『アニマル・ハルマゲドン』が放映された。邦訳に『恐竜はなぜ鳥に進化したのか?』(青土社)、『生命と非生命のあいだ』(青土社)『生きた化石と大量絶滅』(青土社)、『マンモス絶滅の謎』(ニュートンプレス)、『オウムガイの謎』(河出書房新社)がある。

ジョゼフ・カーシュヴィンク(Joseph Kirschvink)
プリンストン大学で博士号を取得。カルフォルニア工科大学における地球生物学のニコ・アンド・マリリン・ヴァン・ウィンゲン記念教授。「スノーボール・アース」(全球凍結)を発見したことで知られる。また、動物がナビゲーションに使用する微小な磁性物質を発見し、生物の進化を促した地球の自転軸の大規模な移動についても指摘した。
梶山 あゆみ(かじやま・あゆみ)
東京都立大学人文学部英文学科卒業。主な訳書にデンディ/ボーリング『自分の体で実験したい』、ブラウン『冥王星を殺したのは私です』、グッド『新しいワインの科学』、シャンキン『原爆を盗め!』など。

目次

はじめに
第1章 時を読む
第2章 地球の誕生──四六億年前〜四五億年前
第3章 生と死、そしてその中間に位置するもの
第4章 生命はどこでどのように生まれたのか──42億(?)年前〜35億年前
第5章 酸素の登場──35億年前〜20億年前
第6章 動物出現までの退屈な10億年──20億年前〜10億年前
第7章 凍りついた地球と動物の進化──8億5000万年前〜6億3500万年前
第8章 カンブリア爆発と真の極移動──6億年前〜5億年前
第9章 オルドビス紀デボン紀における動物の発展──5億年前〜3億6000万年前
第10章 生物の陸上進出──4億7500万年前〜3億年前
第11章 節足動物の時代──3億5000万年前〜3億年前
第12章 大絶滅──酸素欠乏と硫化水素──2億5200万年前〜2億5000年前
第13章 三畳紀爆発──2億5200万年前〜2億年前
第14章 低酸素世界における恐竜の覇権──2億3000万年前〜1億8000万年前
第15章 温室化した海──2億年前〜6500万年前
第16章 恐竜の死──6500万年前
第17章 ようやく訪れた第三の哺乳類時代──6500万年前〜5000万年前
第18章 鳥類の時代──5000万年前〜250万年前
第19章 人類と10度目の絶滅──250万年前〜現在
第20章 地球生命の把握可能な未来
訳者あとがき/原 註

参考図書

文庫 生命40億年全史 上 (草思社文庫)

文庫 生命40億年全史 上 (草思社文庫)

 

 

文庫 生命40億年全史 下 (草思社文庫)

文庫 生命40億年全史 下 (草思社文庫)

 

 

生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像 (講談社現代新書)
 

 

 関連サイト

知的興奮、大爆発!『生物はなぜ誕生したのか 生命の起源と進化の最新 ...


https://honz.jp/articles/-/42401 
2016/02/14 - 生命がどのようにして誕生し、進化してきたのか?だれもが興味をいだくテーマだ。完全にわかるということはありえない。しかし、あたらしい技術が開発され、あらたな発見がなされ、次第に議論が収斂してきている。全地球凍結=スノーボール ...
 
 

1637夜『生物はなぜ誕生したのか』ピーター・ウォード&ジョゼフ・カーシュ ...


https://1000ya.isis.ne.jp/1637.html 
2017/05/02 - 暫定名著とはいえ他人に薦める名著3冊を絞るのはけっこう迷うものなのだが、ぼくは「見えなくなった知」を手掛かりにうんうん唸りながら(あまりに候補が多くなってきたので)、この3冊にした。ウォードとカーシュヴィンクの『生物はなぜ誕生した ...
 
 

地球46億年の歴史と生命進化のストーリー | JAMSTEC×Splatoon 2 ...


https://www.jamstec.go.jp/sp2/column/04/ 
地球上には約870万種の生物がいると推定されています。太陽系の天体と比べてみても地球は、豊かな生命にあふれた惑星だと言えるでしょう。しかし、誕生したばかりの地球は温度が1,000℃以上のマグマに覆われ、生命はとても存在できないような環境でした ...