B面昭和史
1926-1945
本書は、『昭和史』の姉妹編です。 国民の目線から綴ったもうひとつの昭和史です。 国民はいかにして戦争になびいていったのか? 二度と戦争の惨劇を繰り返さないために、一般国民に出来ることは何か、 たくさんのヒントが随所に、ちりばめられています。
マスコミの凋落激しく、世論が軍部に形成される中で民草に出来た事は何だったのか。 この悲しい歴史を知る私達は、自分も含め熱し易く流され易い国民性を理解し、著者の後書きにあるよう、断々乎として無謀で悲惨な殺し合を拒否する意思を保たなければならない。
一夜で非戦闘員十万人を虐殺された東京大空襲や、未来豊かな若者に死を強いた特攻隊など、祖父母世代の苦辛に心を痛めると同時に、我が子らを絶対にこのような惨劇の中に投じられない!と改めて思う。
内容紹介
国民からの視点で「あの時代とは何だったのか」、自身の体験も盛り込んで昭和戦前史を詳細に綴った大作、待望のライブラリー化。巻末に澤地久枝氏との対談「“B面”で語る昭和史」を付す。
「六十年近く一歩一歩、考えを進めながら、調べてきたことを基礎として書いた本書の主題は、戦場だけではなく日本本土における戦争の事実をもごまかすことなしにはっきりと認めることでありました。民草の心の変化を丹念に追うということです。昔の思い出話でなく、現在の問題そのものを書いている、いや、未来に重要なことを示唆する事実を書いていると、うぬぼれでなくそう思って全力を傾けました」ロングセラー『昭和史1926‐1945』の姉妹編!
【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け!】
嵐山光三郎【作家】
歴史探偵半藤亭一利丈が名調子で唸る昭和史B面裏話大成。元号は光文? 流行歌、落語、やくざ節、大相撲、「わしゃかなわんよう」、マッチ箱の爆弾、説教強盗、銀座の柳、桃色ストと防空演習、パパ・ママ論争、阿部定事件、「あゝそれなのに」、竹槍事件などなど、週刊誌20年ぶんの面白話がコレデモカ!と出てくる。
「細部にこそ神が宿る」というリアルな話ばかりで、そのひとつが芥川賞である。昭和12年下半期の芥川賞は火野葦平の『糞尿譚』ときまったが、当人は応召されて出征中だった。文藝春秋社の菊池寛は、上海へ渡ることになっていた小林秀雄に頼んで、芥川賞を伝達することにした。幸い火野の所属する部隊は杭州にいた。
早いほうがいいと言うので、すぐに芥川賞授与式をやり、S部隊長、M部隊長、S少尉などが列席し、部隊全部が、本部の中庭に整列した。「気をつけ、注目」と号令をかけられてドキンとし、思い切って号令をかけるような挨拶をした。つづいて火野伍長、S部隊長の挨拶があって終了した。小林秀雄は「これからも、日本文学のために、大いに身体に気をつけて、すぐれた作品を書いていただきたい」と挨拶をした。授賞式のあと祝賀宴となったとき、酔った下士官が刀を抜いて小林にむかい、「兵隊の身体は陛下と祖国にささげたものだ。文学のために身体に気をつけろとは何ということだ。非国民め」とからんだ。
芥川賞作家となった火野葦平は、これ以後、徐州攻略作戦のルポルタージュを命じられ、それが『麦と兵隊』である。当局の指示もあって「改造」に掲載され、同社から単行本となり、120万部のベストセラーになった。トンビに油揚をさらわれた菊池寛はこの作品を認めようとしなかった。
というような裏話がゴロゴロ出てくる。軍歌と万歳と言論統制で戦争に突入して、「一億一心」というスローガンが歓声をあげた時代は、いまに似ている。昭和B面史を語りつつ、現在の日本への警鐘がこめられている。
(週刊ポスト2016年3・18号より)
著者紹介
半藤 一利(はんどう・かずとし)
1930年、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長、取締役などを経て作家。著書は『日本のいちばん長い日』『漱石先生ぞな、もし』(正続、新田次郎文学賞)、『ノモンハンの夏』(山本七平賞)など多数。『昭和史1926‐1945』、『昭和史戦後篇1945‐1989』(平凡社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。2015年、菊池寛賞を受賞。
目次
プロローグ 一週間しかなかった年 昭和元年
第1話 「大学は出たけれど」の時代 昭和二~四年
第2話 赤い夕陽の曠野・満洲 昭和五~七年
第3話 束の間の穏やかな日々 昭和八~十年
第4話 大いなる転回のとき 昭和十一年
第5話 軍歌と万歳と旗の波 昭和十二~十三年
第6話 「対米英蘭戦争を決意」したとき 昭和十四~十六年
第7話 「撃ちてし止まむ」の雄叫び 昭和十七~十八年
第8話 鬼畜米英と神がかり 昭和十九~二十年
エピローグ 天皇放送のあとに
あとがき
平凡ライブラリー版あとがき
【半藤一利・澤地久枝 対談】”B面”で語る昭和史ー日本から、満州から
関連年表
参考文献
参考図書
関連サイト
書評『B面昭和史 1926―1945』半藤一利著 〈週刊朝日〉|AERA dot ...
https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2016030300139.html