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昭和史裁判 半藤一利 X 加藤陽子

昭和史裁判

半藤一利 加藤陽子

  文春文庫

昭和史裁判 (文春文庫)

昭和史裁判 (文春文庫)

 

 

 本書は、 昭和史に関し著作の多い歴史探偵半藤一利さんと歴史学者加藤陽子さんが、太平洋戦争の責任を問う法廷の形式で縦横に対談したものです。裁かれる人物は、意図して軍人は外し広田弘毅近衛文麿松岡洋右木戸幸一と4人の文官指導者と番外に昭和天皇です。

 一応検事役の半藤さんが多くの事例に基づき告発すると、弁護人役の加藤さんが最新の学問成果も踏まえて反論していますが、検事・弁護人で同意したりまた互いに触発され論が進む場面も多く、興味深い秘話や新資料に基づく通説の転換も随所にあり面白かった。
 本書で特に興味深く印象に残った点を以下列挙します。
松岡洋右国際連盟脱退と三国同盟は、松岡のスタンドプレーではなく閣議決定に基づいており、松岡はそれぞれにある構想を持っていた。(加藤さんの弁護)
内大臣木戸幸一は各界からの天皇への上奏を操作し、東條英機首相選出においても重臣会議を隠れ蓑に暗躍した。(加藤さんも弁護の余地なし)
大元帥としての天皇の軍事判断は場面によって振れが大きく、一貫性、大局観に欠けていた。
昭和天皇の家庭内関係は微妙で、母君(貞明皇太后)や弟君(秩父宮高松宮)との間で意見を異とすることもあった。
東京裁判において、広田弘毅は6:5の1票差で死刑判決、木戸幸一は逆に5:6で死刑を免れ無期懲役(のち釈放)と運命が分かれた。

 内容紹介

リーダーたちはどこで誤ったのか? 白熱対談!

太平洋戦争開戦から70年。広田弘毅近衛文麿ら当時のリーダーたちはなにをどう判断し、どこで間違ったのか。半藤゛検事゛と加藤゛弁護人゛が失敗の本質を徹底討論!

「軍部が悪い」だけでは済まされない。松岡洋右広田弘毅近衛文麿ら70年前のリーダーたちは、なにをどう判断し、どこで間違ったのか―昭和史研究のツートップ・半藤さんと加藤さんが、あの戦争を呼び込んだリーダー達(番外編昭和天皇)を俎上に載せて、とことん語ります。あえて軍人を避けての徹底検証は本邦初の試み!

著者紹介

半藤 一利(はんどう・かずとし)

1930年、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。「週刊文春「文藝春秋」編集長、取締役などを経て作家。著書は『日本のいちばん長い日』『漱石先生ぞな、もし』(正続、新田次郎文学賞)、『ノモンハンの夏』(山本七平賞)など多数。『昭和史1926‐1945』、『昭和史戦後篇1945‐1989』(平凡社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。2015年、菊池寛賞を受賞。
加藤 陽子(かとう・ようこ)
1960年、埼玉県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。
1989年、東京大学大学院博士課程修了。山梨大学助教授、スタンフォード大学フーバー研究所訪問研究員などを経て現職。専攻は日本近現代史
2010年に『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)で小林秀雄賞受賞。
著書に『模索する1930年代』『徴兵制と近代日本』『戦争の日本近現代史』『戦争の論理』『戦争を読む』『満州事変から日中戦争へ』『NHK さかのぼり日本史(2)昭和 とめられなかった戦争』『昭和天皇と戦争の世紀』などがある。

目次

第1章 広田弘毅(開廷に先立って
東京裁判と『落日燃ゆ』 ほか)
第2章 近衛文麿(天皇の次に偉い男
金はなかった、人気があった ほか)
第3章 松岡洋右(外務省「大陸派」
伏魔殿、帝国外務省 ほか)
第4章 木戸幸一(自称「野武士」、ゴルフはハンディ「10」
名家の坊やが抱えたルサンチマン ほか)
第5章 昭和天皇(初陣の日中戦争
勃発からひと月で海軍の戦争に ほか)

参考図書

とめられなかった戦争 (文春文庫)

とめられなかった戦争 (文春文庫)

 

 

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)

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https://jp.reuters.com/article/opinion-kazutoshi-hando-idJPKCN1QO050 
2019/03/06 - [東京 7日] - 幕末から昭和まで、歴史を見つめてきた作家の半藤一利氏は、平成の日本は国家に目標がなく、国民も基軸を失いつつあると指摘する。