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村上春樹・和田誠のJAZZ絵本

ボートレイト・イン・ジャズ

     和田 誠  村上春樹  新潮文庫

 

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

 

 

 村上春樹さんは、小説家になる前、東京の国分寺千駄ヶ谷で「ピーター・キャット」というジャズ喫茶を営んでいました。小説の中にも、著名なジャズマンの名前がたびたび出てきたり、ほとんど登場人物の生活の一部のようにジャズが流れていたりします。
 本書は、村上春樹さんが、20年以上の愛聴歴から選りすぐりのジャズマンを56名ピックアップし、和田誠氏の素敵な絵とともに上梓されたエッセイ集です。純粋に村上さんの文章を楽しみ、ジャズの奥深さを知るための作品だと思います。
 本書では、村上春樹さんが、出逢った「この一枚、このナンバー」が挙げられており、それらは必ずしもそのプレイヤーの一般的に認められた「名盤」とは一致ません。なぜこの一枚か?という理由、エピソードを熱く、時には淡々と綴っています。

 村上春樹さんのジャズへの傾倒ぶりにあらためて驚かされるとともに、心の底からジャズを愛し、ジャズが、生きる上での欠かせない糧となっている事情が如実に伝わってきます。

 内容紹介

和田誠が描くミュージシャンの肖像に、村上春樹がエッセイを添えたジャズ名鑑。ともに十代でジャズに出会い、数多くの名演奏を聴きこんできた二人が選びに選んだのは、マニアを唸らせ、入門者を暖かく迎えるよりすぐりのラインアップ。著者(村上)が所蔵するLPジャケットの貴重な写真も満載! 単行本二冊を収録し、あらたにボーナス・トラック三篇を加えた増補決定版。

 

まえがき 和田誠より

 中学生で映画が大好きになった。その頃観た「ヒット・パレード」は、象牙の塔にこもって古典音楽を研究しているコチコチの教授ダニイ・ケイが、ある日ジャズの存在を知り、巷(ちまた)に出かけてジャズを聴きまくる。
 喜劇仕立てのこの映画は、ジャズ入門篇でもあった。ペニー・グッドマン、トミー・ドーシイ、ルイ・アームストロングライオネル・ハンプトンなどなど、そうそうたるミュージシャンたちが出演して、演奏を聴かせてくれるのだから。
 そんなわけで、映画とジャズはほとんど同時にぼくのそばにやってきた。ぼくはまず映画が多くとり上げていたスイングに親しみ、さかのぼって古いジャズを聴いた。高校時代にはジャズの歴史に興味を持った。一方、ビ・バップも生まれていた。新しいジャズも聴かないわけにはいかない。
 大学の頃には、セロニアス・モンクマイルズ・デイヴィスはすでに大物であったし、サッチモデューク・エリントンも活躍していた。ジョージ・ルイスもキッド・オリイも、まだまだ元気だった。いろんな時代のいろんなタイプのジャズをたくさん聴いた。
 そうして大人になった。音楽は大好きだったが仕事にはせず、イラストレーターを選んだ。たまに展覧会を開く。個展は日常の仕事と違ってテーマを自由に選べる。そんな時、好きな映画や音楽を題材にすることが多い。
 92年に開いた個展のタイトルは″JAZZ″だった。20人のジャズメンを勝手に選んで描いた。その時の絵が村上春樹さんの目にとまり、エッセイをつけてくれることになった。97年には″SING″という展覧会をした。その中のジャズ系の人たちと、描きおろしを加えた26人で一冊の本になる。
 村上さんのジャズへの想いは、ぼくよりも熱く深い。展覧会の絵は方々に嫁入りをしてちりぢりになるが、村上さんの文章を得て、ぼくが描いたジャズメンがまた一堂に会することができた。嬉しいことです。

 

あとがき 村上春樹より

ジャズという音楽にあるときふと魅せられて、それ以来、人生の大半をこの音楽とともに暮らしてきた。僕にとつて音楽というのはいつもとても大事なものだったけれど、その中でもジャズはとくべつな位置を占めているといってもいい。ある時期にはそれを仕事にまでしていたくらいだ。
 しかしそういうせいもあって、ジャズについてあらためてなにかを書くというのは、いささかしんどいところがある。あまりにも密着しすぎていて、なにから書けばいいのか、どこまで書けばいいのか……と考え始めると、だんだん気が重くなってくるのだ。
 でも和田誠さんの描いたジャズ・ミュージシャンのポートレイトを何枚か見せてもらって、「うん、なるほど、これならなにか書けるな」とすぐに思った。和田さんの絵を見ていると、そのミュージシャンに染み込んだ固有のメロディーのようなものが、僕の頭にすっと浮かんできて、それをそのまま文章に移しかえれば出来上がりという感じだった。だからとても自然に、とても楽しく仕事をすることができた。つまり「まず絵ありき」で、そこに僕があとから文章をつけるという作業の手順が、この本の場合とてもうまくいったわけだ。
 とくに僕が感心したのは、和田さんのこの26人のミュージシャンの選び方で、ほんとうにジャズが好きじやないとこういう人選はできないだろうなとつくづく思う。そういうところにも、すごく個人的に共感することができた。ソニー・ロリンズジョン・コルトレーンも入っていないけれど(そのかわりにちゃんとビックスとティーガーデンが入っている)、それがつまりこの本の素晴らしくかっこいいところだと思って下さい。

 

著者紹介

和田 誠(わだ・まこと)

1936(昭和11)年生れ。多摩美術大学卒業。デザイン会社に九年勤め、以後フリーのイラストレーター、グラフィック・デザイナー。主な著書に『お楽しみはこれからだ』シリーズ『銀座界隈ドキドキの日々』『装丁物語』『似顔絵物語』『本漫画』『東京見物』など。『麻雀放浪記』『真夜中まで』ほか映画監督としての作品もある。受賞は文春漫画賞講談社エッセイ賞菊池寛賞、毎日デザイン賞など 。

村上 春樹(むらかみ・はるき)

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1979年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』などの短編小説集、エッセイ集、紀行文、翻訳書など著書多数。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞、2016年ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を受賞。

目次

まえがき 和田 誠 村上春樹

チェット・ベイカー / ベニー・グッドマン / チャーリー・パーカー / ファッツ・ウォーラー / アート・ブレイキー / スタン・ゲッツ / ビリー・ホリデイ / キャブ・キャロウェイ / チャールズ・ミンガス / ジャック・ティーガーデン / ビル・エヴァンス / ビックス・バイダーペツク / ジュリアン・キャノンポール・アダレイ /  デューク・エリントンエラ・フィッツジェラルド / マイルス・デイヴィスチャーリー・クリスチャンエリック・ドルフィー / カウント・ペイシー / ジェリー・マリガンナット・キング・コール / デイジーガレスピーデクスター・ゴードンルイ・アームストロングセロニアス・モンクレスター・ヤング [ほか]

あとがき 村上春樹 和田誠

参考図書

 

村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

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さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想 (新潮文庫)

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関連サイト

ポートレイト・イン・ジャズ


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村上春樹ジャズ> 村上春樹の小説と音楽の関係はきっても切り離せないものですが、中でもジャズは彼の作品にとって最重要のBGMといえるでしょう。大学時代にジャズ喫茶でバイトをしたり、その後、個人でジャズ・バーを経営していた彼にとっては、ジャズ ...
 
 

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