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生命40億年全史

生命40億年全史

リチャード・フォーティ

 [訳]渡辺 政隆 草思社

生命40億年全史

生命40億年全史

 

 

  本書は、大英自然史博物館に勤務する古生物学者が書いた本です。本書は、いわゆる学問的な解説書ではなく、著者の個人的なエピソードや学会の面白裏話などを交えながら、イギリス人特有の奇妙なユーモアで生命40億年の歴史を語っており大変味わい深い一冊に仕上がっています。

  冒頭、古生物学者としてのキャリアの入り口で体験した極北での化石発掘の生き生きとした描写に始まり、40億年の生命史を500ページで語りつくしています。古生代中生代・・・そして人類史と、時間を追った大きな流れをボートに乗ってゆっくり進んでいくと、岸では、その時代の生物に古生物学者や古生物学に影響を与えたそれ以外の領域の科学者の群像が絡んでいくのが眺められます。

 宇宙の誕生は【約137億年前】。地球の誕生は【約46億年前】。そして今から【約40億年前】に、この地球に初めて生命が生まれました。現在地球上に棲息する全ての生命体の先祖が、この40億年前の極小のバクテリアであることを考えると非常に不思議の念に駆られます。ここに私たち人類の原点があることを忘れてはいけません。

 現在、人類は自然との共生という大きな課題を抱えています。この問題に関しても、もっと謙虚な気持ちになって【人間は大自然の一部にしか過ぎない】という事実を認識することが大切なのだと思います。著者の軽妙な文体で描かれたこの【生命40億年の歴史】を読むことは、また違った角度から地球問題や環境問題を捉えるのに非常に有益です。

 内容紹介

いかなる進化劇が展開されてきたのか―。尽きせぬ謎を解く鍵を探し、古生物学者たちは世界中を奔走する!大英自然史博物館の古生物学者が、化石資料を縦横無尽に駆使し、自身の発掘調査の興奮を織り交ぜながら、広大無辺な40億年を一つの物語にまとめ上げた、決定版・生命史。

球に生命が誕生してから40億年。現生する生物は約5000万種と言われているが、絶滅した種を合わせれば、何億、何十億という数に上るだろう。その一つひとつに進化史に占める役割があり、ドラマがある。

   広大無辺な40億年を一つの物語にまとめあげるという、偉業を成し遂げたのは、大英自然博物館の主席研究員、リチャード・フォーティ。彼は、自ら化石発掘のため、世界各地を飛び回っている古生物学者だ。臨場感あふれる発掘調査のエピソードもいたるところに織り交ぜられており、本書はさながら、著者の自分史ともいえるだろう。

   第1章ではケンブリッジ大学時代にスピッツベルゲン島で探検をした時のことが語られているが、この時、彼が学んだのは、発見や歴史における重要な1歩は、些細な事柄に還元できる場合が多々あり、決定的に重要な事件はありふれた出来事と隣り合わせになっている、ということだった。この章でのエピソードは全編の隠喩となっている。

   地球は、誕生まもない太陽をとりかこんでいた宇宙のゴミ(超新星の残骸)から生まれた。そして最初の生命が誕生したのは酸性で硫黄臭を発散する地獄釜のような所だったと考えられている。その後、原生生物、三葉虫(著者の1番の専門)、魚類、両生類と進化していき、ジュラ紀(2億800万年前)に入ると恐竜が繁栄するが、その栄華も永遠ではなく、白亜紀(1億4600万年前)には絶滅してしまう。そして、我々哺乳類の先祖が出現する。

   生命の進化というのは、無数の偶然と必然からなり、生命は常に勝ち抜いてきたものなのだと著者は言う。

   最後に「たしかなのはただ、この先も変化は続くということのみである。変化の原因として人間が関与することは間違いない。偶発に翻弄される運命の歯車も、われわれの運命を左右するだろう」と述べ、近年の環境破壊、遺伝子工学による影響などを危惧しつつも、「人間には影響を予測する力があり、自分達の、そして未来のコントロールもできるはずで、これらの危機もきっと切り抜けていけるだろう」と、これまで絶滅してきた生物とは異なる、人間の可能性を強調している。壮大なスケールの本書で、40億年の歴史を一気に駆け抜けていただきたい。(冴木なお)

著者等紹介

リチャード・フォーティ(Richard Fortey)

1946年生まれ。古生物学者。2004年に長年勤めた大英自然史博物館古無脊椎動物門主席研究員を退任。2005年よりロンドン地質学会会長に就任。英国古生物学会会長(1994―96)、ブリストル大学科学技術公衆理解担当客員教授などを歴任。数々の学術賞を受賞。専門はオルドビス紀三葉虫と筆石類の進化・生態・体系学。著書に『三葉虫の謎』(垂水雄二訳、早川書房)、『生命40億年全史』『地球46億年全史』(ともに草思社)ほか。

渡辺 政隆(わたなべ・まさたか)
1955年生まれ。東京大学農学系大学院博士課程修了。サイエンスライター。専門は進化生物学、科学史、サイエンスコミュニケーション。独立行政法人科学技術振興機構、科学コミュニケーションスーパーバイザー。日本大学芸術学部和歌山大学奈良先端大学院大学の各客員教授を兼務。著書に『一粒の柿の種』(岩波書店)、『DNAの謎に挑む』(朝日新聞社)ほか。訳書にグールド『ワンダフルライフ』(早川書房)、ジンマー『「進化」大全』(光文社)、パーカー『眼の誕生』草思社)ほか多数。 

目次

第1章 悠久の海
第2章 塵から生命へ
第3章 細胞、組織、体
第4章 私のお気に入りと仲間たち
第5章 豊饒の海
第6章 陸上へ
第7章 森の静謐、海の賑わい
第8章 大陸塊
第9章 壮大なものと控えめなもの
第10章 終末理論
第11章 乳飲み子の成功
第12章 人類
第13章 偶然の力

参考図書

地球46億年全史

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