読書案内

お薦めの本を紹介します

若い読者のための哲学史ー最良の生き方についてのアイデアを案内するー

若い読者のための哲学史

     ナイジェル・ウォーバートン

     [訳]月沢 李歌子  すばる舎

若い読者のための哲学史 (Yale University Press Little Histor)

若い読者のための哲学史 (Yale University Press Little Histor)

 

 

 本書は、古代から現代までの哲学者史が40編の短編でダイジェスト的に語られる哲学者の歴史について描いています。哲学史のアウトラインを、古代から現代へと偉人列伝という形で、わかりやすくストーリー仕立てで読ませてくれるので理解しやすいと思います。誰と誰が影響し合い、どう発展していったのか把握しやすく、また、哲学者の変わったエピソードなども随所に差し挟まれていたりして、読み物としてもなかなか面白いです。哲学の初心者にはありがたい書です。

 本書の構成としては、ひとりの哲学者について語り、次の哲学者を紹介して終わるというカタチをとっています。個々の哲学者のエピソードと思想について概要を単に示すというのでなく、たとえが多用されて魅力的です。デカルトの有名な「われ思う、ゆえにわれあり」や、カントの『純粋理性批判』にある「物自体」や「ア・プリオリな総合判断はいかに可能か」の解説などは、とても分かりいやすいです。

印象に残ったところを以下挙げてみます。

Chapter18にある誤解されやすいルソーの「一般意志」についての説明いおいて、「共同体全体の利益になるものが一般意志であるため、自己本位であれば誰もが税金を払いたくないと思うものだが、一般意志に基づくと、共同体が適切なサービスができるのに十分な高さの税金を支払うべきだということになる」ということになり、たいへん分かりやすいです。

Chapter20の中でカントの道徳哲学をアリストテレスと比較して、ウォーバートンは次のように説明してます。「アリストテレスは、真に徳のある人はつねに適切な感情をもち、その結果として正しい行動をすると考えた。カントにとって、感情とは、見せかけではなく本当に正しいことをしているのかどうかをわからなくして、問題をあいまいにするものである。」、カントは理性さえあれば道徳的でいられると考えたというのがウォーバートンの説明です。

 内容紹介

哲学は「現実の本質」と、「私たちがいかに生きるべきか」から始まる。これらはソクラテスの懸念だった。古代アテネの市場で厄介な質問をし、人々に人々自身が真に理解したことがほとんどないことを示すことによって、彼は会った人々を困惑させていた。
本書では、ソクラテスプラトンアリストテレスから、現代の哲学者ピーター・シンガーまで、平易な文章でわかりやすく、バックグラウンドについても触れながら、西洋哲学史における偉大な思想家たちの、世界と、最良の生き方についての主要なアイデアを案内する。
また、チャールズ・ダーウィンについて扱っていることも本書の特徴のひとつだ。
ダーウィンは哲学者ではなく、「進化論」の発見者として著名だが、『種の起源』の発刊によって、神や人間についての思索に大きすぎる転機を与えたことから章をさいて触れている。

著者等紹介

ナイジェル・ウォーバートン(Nigel Warburton)

イギリスの哲学者。フリーの哲学者で、毎週哲学に関するポッドキャストを配信し、統合的な哲学のウェブサイトも運営する他、英国立近現代美術館「テート・モダン」で、現代の芸術と哲学に関する人気のコースを教える。
哲学入門書の著者として非常に人気があり、邦訳に『哲学の基礎』(講談社)、『思考の道具箱―クリティカル・シンキング入門』(晃洋書房)、『「表現の自由」入門』(岩波書店)など多数ある。

月沢 李歌子(つきざわ・りかこ)

津田塾大学英文学科卒。英国留学、外資系金融機関勤務を経て翻訳家に。おもな訳書に『夢をかなえる時間術』、『日常の疑問を経済で考える』、『成功する人は偶然を味方にする』『ラテに感謝!』『ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法』など訳書多数。

目次

1 質問し続けた男(ソクラテスプラトン) / 2 真の幸福(アリストテレス) / 3 わたしたちは何も知らない(ピュロン)/ 4 エピクロスの園エピクロス) / 5 気にしないことを学ぶ(エピクロスキケロセネカ) / 6 わたしたちを操るのは誰か(アウグスティヌス) / 7 哲学の慰め(ポエティウス) / 8 完璧な島 (アンセルムス、アクィナス) / 9 キツネとライオン (ニッコロ・マキャベリ) / 10 下品で野蛮で短い (トマス・ホッブズ) / 11 これは夢なのだろうか (ルネ・デカルト) / 12 賭けてみよ (ブレーズ・パスカル) / 13 レンズ磨き職人 (バルーフ・スピノザ) / 14 王子と靴直し (ジョン・ロック、トマス・リード) / 15 部屋のなかのゾウ (ジョージ・バークリー、ジョン・ロック) / 16 すべての可能世界のうちで最善のもの? (ヴォルテールゴットフリート・ライプニッツ)/ 17 想像上の時計職人 (デイヴィッド・ヒューム) / 18 生まれながらにして自由 (ジャン=ジャック・ルソー) / 19 バラ色の現実 (イマヌエル・カント ①) / 20 「誰もがそうするなら?」 (イマヌエル・カント ②) / 21 功利的至福 (ジェレミーベンサム) / 22 ミネルヴァのフクロウ (ゲオルク・W・F・ヘーゲル) / 23 現実の世界 (アルトゥル・ショーペンハウアー) / 24 成長するための空間 (ジョン・スチュアート・ミル) / 25 知性なきデザイン (チャールズ・ダーウィン) / 26 命がけの信仰 (セーレン・キルケゴール) / 27 団結する万国の労働者 (カール・マルクス) / 28 だから何? (C・S・パース、ウィリアム・ジェームズ) / 29 神は死んだ (フリードリヒ・ニーチェ) / 30 仮面をかぶった願望 (ジークムント・フロイト) / 31 現在のフランス国王は禿げているか (バートランド・ラッセル) / 32 ブー! フレー! (アルフレッド・ジュールズ・エイヤー) / 33 自由の苦悩 (ジャン・ポール・サルトルシモーヌ・ド・ボーヴォワールアルベール・カミュ) / 34 言葉に惑わされる (ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン) / 35 疑問を抱かなかった人 (ハンナ・アレント) / 36 間違いから学ぶ (カール・ポパー、トーマス・クーン) / 37 暴走列車と望まれないバイオリニスト (フィリッパ・フット、ジュディス・ジャーヴィス・トムソ) / 38 無知による公平 (ジョン・ロールズ) / 39 コンピューターは思考できるか (アラン・チューリングジョン・サール) / 40 現代のアブ (ピーター・シンガー

索引

参考図書

 

哲学入門 (ちくま学芸文庫)

哲学入門 (ちくま学芸文庫)

 

 

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています

 

 

 関連サイト

哲学とは何か?という問いは、奇妙な問いである。なぜなら、そもそも哲学とは「○○とは何か?」を問う学問なのであり、その哲学に向かって「何?」と問えば、その問いはメビウスの輪に入っていかざるを得ない構造をもっているからである。つまり、哲学とは何か ...
 
 
 

"哲学の入門書"が死ぬほどつまらない理由 | プレジデントオンライン


https://president.jp/articles/-/25124 
 › スキル
 
2018/05/17 - ビジネスパーソンの教養のひとつとして「哲学」に注目が集まっている。だが哲学入門書は、どれも「死ぬほどつまらない」と言われる。なぜ…
 
 
 

第1回 哲学ってなんだ?|はじめての哲学的思考|苫野 一徳|webちくま


http://www.webchikuma.jp/articles/-/23 
2016/04/11 - 哲学は「本質」を洞察することで、その問題を解き明かすための「考え方」を見出す営みだ。2500年の歴史を持つ哲学は、できるだけ誰もが納得できるような考えに到達するための、力強いさまざまな思考法に満ちている。哲学的な思考法の ...