日本人はなぜ戦争へと
向かったのか
外交・陸軍編
日本人はなぜ戦争へと向かったのか: 外交・陸軍編 (新潮文庫)
- 作者: NHKスペシャル取材班
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/06/26
- メディア: 文庫
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本書は、同名のNHKスペシャルの内容を書籍化して2011年に刊行された本の文庫版です。全部で3冊出ていますが、本書では開戦に至る過程で中心的役割を果たした外交と陸軍を取り上げています。
「もしあの時に違う選択をしたならば」そういう問題意識で作られたこの番組に関心を持ちました。そして決定的な場面はひとつではなく、とても多くあったということに驚きました。歴史学者に加え、いろんな分野の研究者に取材されており、非常に参考になりました。
外交編では、最初に1931年国際連盟脱退の「選択」に焦点が当てられます。松岡外相が堂々と演説して、日本は最初から進んで孤立の道を選んだ、このような認識がありました。教科書で学んだのが、そういうニュアンスだったからです。しかし、違いました。日本は脱退など予想しないでジュネーブに臨み、英国も着地点を用意していた。
しかしながら、思うようには事は進みませんでした。日本側当事者たちの甘い体質に他ならないでした。そこから浮かび上がってくるのは、「希望的判断」に終始し、その幻想が破れると「急場しのぎ」に奔走する、国家としての根本的な戦略が欠如した日本の姿でした。
陸軍編では、戦前の日本陸軍は満州事変の際中央の指示に反し暴走し傀儡政権を樹立します。組織が内向きになり組織の都合が優先し外の世界との調和など視野にありませんでした。そして、成功すればなんでも許される風土がありました。
印象的だったのは、菊澤教授へのインタビュー部分が大変興味深いでした。「あまりにも厳密に公平性や民主制を目指すと、人々が多大なコストが発生することを認識し、反対に独裁を求めるようになる…」には、納得してしまいました。
内容紹介
いま明らかになる戦争への「本当の」道のり!
太平洋戦争開戦から70年、いま東京裁判に関する膨大な証言や日記が公開されつつある。そこから見えてきたのは、これまで言われてきたような単純な図式ではない、複雑で予測不可能な道のりだった。本書では「外交」「陸軍」の2テーマを収載。
新たに見つかった膨大な証言・資料から浮かび上がる太平洋戦争へと至った「本当の」道のりとは。
日本人だけで300万人を超える死者を出した太平洋戦争。軍幹部ですら「負ける」と予想した戦争へ、日本はなぜ踏み込んでしまったのか――。当事者の肉声証言テープなど貴重な新資料と、国内外の最新の研究成果をもとに、壮大な疑問を徹底検証。列強の動きを読み違えた日本外交の“楽観”、新興ナチスドイツへの接近、陸軍中央の戦略なき人事・・・・・・今だからこそ見えてきた開戦までの道程。
研究者紹介
井上寿一(いのうえ・としかず)
日本の政治学者・歴史学者。専門は日本政治外交史・歴史政策論。学習院大学学長、日本国際政治学会評議員、法学博士。1995年吉田茂賞受賞。2011年第12回正論新風賞受賞。東京都出身。主著に『日中戦争下の日本』、『戦前日本の「グローバリズム」』等がある。
小谷 賢(こたに・けん)
京都大学大学院博士課程修了(学術博士)。2004年から防衛省防衛研究所戦史部教官。現在、英国王立防衛安保問題研究所(RUSI)客員研究員。専門はイギリス政治外交史、インテリジェンス研究。主著に『イギリスの情報外交―インテリジェンスとは何か―』、『日本軍のインテリジェンス―なぜ情報が活かされないのか―』等がある。
アント二ー・ベスト(Antony Best)
ロンドン大学準教授。専門は日英外交史。主著に”IMPERIAL JAPAN AND THE WORLD,1931-1945"等がある。
森 靖夫(もり・やすお)
京都大学次世代研究者育成センター特定助教を経て同志社大学法学部准教授。専門は政治史、日中戦争研究。主著に『日本陸軍と日中戦争への道』、論文に「近代日本の陸軍統制と日中戦争への道」等がある。
菊澤 研宗(きくざわ・けんしゅう)
慶應義塾大学商学部教授。専門は新制度派経済学。主著に『戦略の不条理』、『組織は合理的に失敗する』等がある。
エドワード・ドレア(Edoward J.Drea)
元アメリカ陸軍歴史センター調査分析部部長。専門は日本軍事史など。主著に"IN THE SERVICE OF THE EMPEROR"等がある。
戸部 良一(とべ・りょういち)
国際日本文化研究センター教授などを経て、帝京大学校教授。専門は日本政治外交史、軍事史。 主著者に『日本陸軍と中国』、『外務省革新派』等がある。
加藤 陽子(かとう・ようこ)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は日本近現代史。主著に『満洲事変から日中戦争へ』、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』等がある。
目次
はじめに
第1章 外交―世界を読み違えた日本
“外交敗戦”孤立への道 NHKスペシャル取材班
一九三〇年代日本を支配した空気 井上寿一
外交に活かせなかった陸軍暗号情報 小谷 賢
変化していた世界帝国主義・遅れた日本の対応 アント二ー・ベスト
第2章 陸軍―戦略なき人事が国を滅ぼす
巨大組織“陸軍”暴走のメカニズム NHKスペシャル取材班
陸軍を狂わせた人事システム 森 靖夫
日本が陥った負の組織論 菊澤研宗
内向きの論理・日本陸軍の誤算 エドワード・ドレア
陸軍暴走の連鎖 戸部良一
なぜ、日中戦争をとめられなかったのか 加藤陽子
参考資料
日本人はなぜ戦争へと向かったのか: メディアと民衆・指導者編 (新潮文庫)
- 作者: NHKスペシャル取材班
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/06/26
- メディア: 文庫
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日本人はなぜ戦争へと向かったのか: 果てしなき戦線拡大編 (新潮文庫)
- 作者: NHKスペシャル取材班
- 出版社/メーカー: 新潮社
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関連サイト
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