読書案内

お薦めの本を紹介します

自分の頭で考えたい人のための 15分間哲学教室

自分の頭で考えたい人

のための

15分間哲学教室

アン・ルー二ー

[訳]田口 未和    文響社

 

自分の頭で考えたい人のための15分間哲学教室

 

本書は、英国ケンブリッジ大学出身の著者が、「哲学の基礎概念」や「知の偉人たちの思想」を、分かりやすく、順序立って、平易な言葉で解説しています。もちろん「弁証法」や「イデア」という言葉は出てくるのですが、その意味をよく理解できる文章になっています。日本語訳自体が平易で分かりやすいです。

ヘーゲルの弁証法、アリストテレスの三段論法、デカルトの存在証明、ニーチェ、フロイト……。墨子やチョムスキー、オバマ元大統領、ジョブズも出てきます。いわゆる「哲学」に留まらない、どちらかというと「古今東西の偉人の名言集」の趣きもあるのですが、「考えること」とは何か?、「どう考えるかを知ること」とはどういうことか? という具合に哲学の思考プロセスと哲学の基礎に沿って書き綴られています。

本当に分かりやすい哲学解説書・哲学入門書になっています。著者の経歴を調べてみたら、『算数でめぐる グルグル! 宇宙探検』、『算数でめぐる 地球のふしぎ』のアン・ルーニーさんでした。児童向けの本も手がけています。難解な言葉を使わない、読み解く能力に長けているのでしょう。
なんとなく聞いたことがある話(森のなかで倒れた木は存在するか、あるいはカルマなど)や身近な話題(AIや監視社会)に寄せて哲学を読み解いていく、その題材のピックアップ感覚が素晴らしいです。

内容紹介

『超訳 ニーチェの言葉』の白取春彦氏・推薦&解説! 

古代から現代までの哲学の考え方がまるわかり。
「正解のない世界」を生き抜くための必読書! 

◎新しいiPhoneは人を幸せにする?
◎「自分」って何?
◎人間に「完全な社会」は作れる?
◎医師の診断or人工知能(AI)の診断、あなたはどっちを信じる?
◎「私が言うことはすべて嘘だ」――この矛盾、解消できる?

どこからでも読める! 短時間でサクッと読める! 
考える力が身につく1日15分間の哲学レッスン

《以下、序文より/解説:白取春彦》
「哲学を教える本は世の中に溢れている。
そういった本の78.4%は読み始めてすぐに眠くなる強烈な睡眠導入剤が含まれている。
その他の21.5%は、著者が自分の博学さと頭脳の優秀さを
ひけらからす宣伝材料となっている。

本書は、残りの0.1%に含まれる良質な本となっている。
その中でも一般の読者向けとしては、とても親切でわかりやすいものだ。
軽いように見えるかもしれないが、しっかりと哲学の内容のツボを押さえている。
一年目の授業に行かなくてもこの本だけで大学の単位が取得できるほどだ。

話題にされていることがわたしたちの身近にあることや
現代の問題とされていることも含まれていて興味尽きない。
この序文を書くために読んだ私がゲラにたくさんの付箋を貼りつけたほどだ。

私ならば、書店に行ってこの本を買う。
そして、カフェに入ってそそくさとページを開いて、
ブランドの服にコーヒーをこぼしたのにも気づかずに読みふけり、
待ち合わせの約束の時間にだいぶ遅れることになるだろう。」

 

出版社からのコメント

編集者のオススメの章ベスト5! 
《1位! ! 》
第17章 そんなつもりじゃなかった
コメント:
目的と結果、どっちが大事? ということを、真っ正面から考える章。普段から、よくこういう場面に遭遇します。たとえば、仕事における成果主義は、結果がよければよし、という考えですが、じゃあ、職場の人を不愉快な気持ちにさせても結果さえ出せばいいのか、とか。たとえばプレゼントを買ったとして、それは相手を喜ばせたいな、という気持ちだったとして、でも、あげたもので相手がとても嫌な思いをしたら、とか。「今いる環境、ちょっと居心地が悪いかも?」「『よかれ』と思ってやったのに、裏目に出ることが多いな」などと感じたら、ぜひこの章をチェックしてみてください。

《2位! 》
第24章 監視されているのか、見守られているのか
コメント:
子供の頃、唐揚げやお漬け物をつまみ食いしたことを思い出しました。夕食の準備をしながら、見つからないように、こっそり食べる。その「背徳感」が、なんだか普段より、唐揚げもお漬け物も、美味しくしてくれるんですよね。この「見られているのか、見られていないのか」という状況が私たちにもたらす影響を、とてもわかりやすく解説しています。たとえば、最近街中に増えた監視カメラも、犯罪が起きれば、それを繙く材料になりますが、一方で、何でもないことも記録され、調べられてしまうかもしれません。そんな中で、どうやって暮らしていけばいいのか。それを考えるきっかけになる章です。

《3位! 》
第10章 新しいiPhoneはあなたを幸せにするか
コメント:
「新しいもの好き」としては無視できないテーマでした。新しいものを鼻息荒く買ったとき、ものすごい多幸感に包まれますが、それは、時間が経つとどんどん目減りしていって、そしてまた新しいものが発売されると、鼻息荒く、新しいものを買うわけです。
「刺激を受けること=幸せ」なのか?いやいや、きっと、誰もが追い求める幸せには、もっと素敵な意義があるはず。

《4位! 》
第12章 あなたは神を信じますか

《5位! 》
第18章 「戦争」と「恋愛」ではすべてが許される

独断と偏見で失礼しました。
あなたの「お気に入りの章」も、ぜひ、レビューで教えてください。

著者等紹介

アン・ルーニー(ANNE ROONEY)
ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで博士号を取得。ヨーク大学、ケンブリッジ大学で教鞭をとったのち著述業に。歴史・哲学から科学テクノロジーまで幅広い分野の入門書を多数、手掛けている。ケンブリッジ在住。ケンブリッジ大学ニューナム・カレッジのロイヤル・リテラリー・ファンドのフェロー。

田口未和(たぐち・みわ)
上智大学外国語学部卒。新聞社勤務を経て翻訳業に。『小さな習慣』(ダイヤモンド社)、『密造酒の歴史』『図説 世界を変えた50の哲学』(原書房)ほか訳書多数。

 

目次

序文 哲学にできること 白取春彦
はじめに~哲学は何の役に立つのか


《第1部 考えること》
第1章「どう考えるべきか」を知る
・「確信」を揺るがすソクラテス式問答
・ヘーゲルの弁証法
・哲学を「リセット」したヴィトゲンシュタイン …ほか
第2章「森のなかで倒れた木」は存在するか
・デカルトの存在証明
・シュレディンガーの気の毒な猫
・「無」によって生み出される「何か」 …ほか
第3章 あなたは何を知っていますか
・「真っ白な紙」からの出発~イブン・シーナー
・目の前の「現実」を疑え~カント
・知識の源は信仰~聖アウグスティヌス …ほか
第4章 世界は分類でできている
・アリストテレスの十分類
・あいまいすぎるトラ
・科学的ではない分類にも意味がある …ほか
第5章 コーヒーにするか、紅茶にするか
・罪を犯すのも自由意志か~カルヴァンの決定論
・決定論は絶望への道?
・自由の刑に処せられた人間~サルトルの決断 …ほか
第6章 機械のなかの幽霊
・魂は肉体に閉じ込められた囚人?
・心はどこにあるのか
・意識のはじまりと終わり …ほか
第7章 あなたが「あなた」である理由
・骨【ボーン】とボート
・自分とは自分の脳か記憶か
・そして無我の境地へ
第8章 悪いことは起こる。でも、なぜ?
・それは神の大きな目的の一部なのか
・「真理省」のスローガン~悪は善なり
・ライプニッツの楽観主義、その限界 …ほか
第9章 因果はめぐる。本当に?
・ヒンドゥー教のカルマの概念
・ニーチェはカルマをどう見るか
・因果応報と「公平」の原則 …ほか
第10章 新しいiPhoneはあなたを幸せにするか
・哲学者の幸福リスト
・マインドフルネスの長所と短所
・ショーペンハウアーが見つけた「生きる意味」 …ほか
第11章 永遠に生きたいですか
・「生きること」の価値は死によって生まれる
・それでもやっぱり死にたくはない
・生きることに何の意味があるのか
第12章 あなたは神を信じますか
・パスカルの賭け
・信仰は「強いられた選択」
・ニーチェとフロイトが出した結論 …ほか
第13章 犬には魂があるのか
・自由意志があれば魂がある?
・「輪廻する魂」という思想~古代エジプトからスピノザまで
・人間と動物に根本的な違いはあるか
第14章 言葉とは?
・言葉はなくても「怒り」は存在するか
・人間の思考は言語によって制限される
・天性の言語習得能力~チョムスキー …ほか


《第2部 行動すること》
第15章「何をするべきか」を決める
・「決断」と向きあうキルケゴール
・ルールは「支配する側」のためにある?
・現状を変えるための哲学 …ほか
第16章「魔女」を火あぶりにすべきか
・「正しさ」はどこから生まれるのか
・モンテーニュの文化相対主義
・カントが考えた「たった一つのルール」 …ほか
第17章 そんなつもりじゃなかった
・意図を重視したカント
・軽すぎる刑罰、重すぎる刑罰
・少年ヒトラーを助けた男 …ほか
第18章「戦争」と「恋愛」ではすべてが許される

・目的はどこまで手段を正当化するか
・正義の戦争? 平和のための戦争?
・戦時のモラル …ほか
第19章 人間に「完全な社会」はつくれるか
・社会は必要悪~ホッブズの悲観的人間観
・社会が人間をダメにする~ルソーの理想主義
・革命を起こす権利 …ほか
第20章 「平等」はむずかしい
・平等を否定したアリストテレス
・ロビンソン・クルーソーには権利はあるか
・平等のために差別が生まれる? …ほか
第21章 個人は集団のために犠牲になるべきか
・最大多数の最大幸福
・思考実験~不道徳な病院
・99パーセント運動の功利主義 …ほか
第22章 孤立する自由
・高潔に生きるための二つのアプローチ
・無私無欲という身勝手
・苦行者を許さないカント …ほか
第23章 人類はAIを恐れるべきか
・ロボットが反乱を起こすとき
・ロボット医師と人間の医師の違い
・戦争にドローンを使うことは人道的か …ほか
第24章 監視されているのか、見守られているのか
・警察官が「いたり、いなかったり」する理由
・パノプティコンが生みだす自己監視~ベンサムの計画
・「正しい行動」をすれば「正しい心」が生まれる? …ほか
第25章 あえて波風を立てる
・人間の歴史は間違いの歴史
・ブレなかった男ソクラテス
・スノーデンは英雄? それとも裏切り者? …ほか
第26章 与える人、もらう人
・他人を助けるのは義務? 喜び?
・年収5万ドルなら、いくら寄付すべきか
・「善行のエクササイズ」という考え方
第27章 生きるべきか、死ぬべきか
・なぜ自殺してはいけないのか
・死を選ぶしかないとき
・最後は涙で終わるのだとしても~カミュの結論

おしまいに

参考図書

 

 

 

 

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