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戦争・天皇・国家ー近代化150年を問いなおすー

戦争・天皇・国家

             近代化150年を問いなおす

                猪瀬直樹 田原総一郎

                        角川新書

 

 

 本書の構成は、まえがきで、田原氏が「日本が抱えている問題とは何か、今後どのような国を目指すべきか」を本書で明らかにする主旨を述べ、それを受けて、猪瀬氏から、そのためには「黒船来航から150余年の現代史をたどってみる必要がある」という流れになっています。
序章は、あらためて、猪瀬氏によるこの期間の大まかな論評と提言があります。1章から5章は、序章をベースに田原氏と猪瀬氏の対談形式になっており、終章で田原氏からの提言があります。

本書の内容は、ペリーの開国要求から現安倍政権までの期間の歴史を振り返り、日本のあるべき姿について提言をしています。ただ、対案(=この書籍で具体的対処法のことをこう表現しています)というか、どうすべきか?を提示するところまでは記載されていません。具体的対処法には、読者自身がそれぞれの立場で考え、たどり着いて下さい、というところでしょうか。

書籍中のどの場面でも、歴史が方向を間違えるのは、その事案の関係者たちに論理的思考と反省が欠如しているところだと思います。話し合って関係者たちが忍耐強く調整するような作業ができない。すなわち議論できていない。

この書籍の良いところは、学校では教えない近代史を含め、現在の日本の抱える潜在的な問題点を集約してとらえ、総括しているところです。

内容紹介

なぜ日本は変わらないのか? 戦後論だけでは語りえない国家の本質とは? ノンフィクション作品を通じ様々な角度から日本国の骨格を明らかにしてきた猪瀬直樹に、戦争を体験したジャーナリスト・田原総一朗が問う。

著者紹介

猪瀬 直樹 (いのせ・なおき)

1946年長野県生まれ。87年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞。2002年6月末、小泉純一郎首相より道路公団民営化委員に任命される。東京大学客員教授東京工業大学特任教授などを歴任。2007年6月、東京都副知事に任命される。2012年に東京都知事に就任、2013年12月、辞任。主著に、『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』『道路の権力』『道路の決着』(文春文庫)、『昭和16年夏の敗戦』『天皇の影法師』(中公文庫)、『猪瀬直樹著作集 日本の近代』(全12巻、小学館)がある。
田原 総一朗(たはら・そういちろう)

ジャーナスリト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入社。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年フリーに。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。80歳を超えた今でも政治・経済・メディア・IT等、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。近著に『日本人と天皇 - 昭和天皇までの二千年を追う』(中央公論新社)。

目次

まえがき 田原 総一郎

序章 「戦後レジーム」ではなく「黒船レジーム」で考えよ 猪瀬 直樹

黒船の恐怖が大日本帝国を生んだ
肥大化する「黒船レジーム」の問題点 ほか
第1章 近代国家「日本」の誕生

国難は黒船来航から始まった
維新は天皇の奪い合いだった ほか
第2章 意思統合不能が戦争を起こした

太平洋戦争はなぜ始まったのか
満州事変以後暴走する関東軍 ほか
第3章 戦後日本はこうして形づくられた

マッカーサー来日
テル・ジ・エンペラー ほか
第4章 「ディズニーランド」化した日本

エコノミックポリティクスの時代
東京オリンピック ほか
第5章 黒船の呪縛を乗り越える

歴史の終わり
戦後リベラルの行方 ほか
終章 アメリカにできない交渉で力を発揮せよ

国家論のタブーを打ち破れ
交渉力を発揮せよ ほか

あとがき 猪瀬 直樹

 

参考図書

 

昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

 

 

天皇の影法師 (中公文庫)

天皇の影法師 (中公文庫)