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日本人はなぜ戦争へと向かったのかー果てしなき戦線拡大編ー

日本人はなぜ戦争へと

向かったのか

  果てしなき戦線拡大編

  NHKスペシャル

  取材班編著 新潮文庫

 

 

 このシリーズは全部で3冊あります。各巻で内容が異なりますが、一般的な戦争解説ものには書いてないような内容が沢山出てきます。本書は、タイトルと同名のNHKスペシャルの「戦中編」を元に、研究者インタビュー等を加えて書籍化されたものです。

 開戦から約半年間の政策決定過程を追うことで、戦争を泥沼化させ、止められなかった政府や軍部の問題点を明らかにしていくことを意図しています。
 本書の中で印象深かったのは、戦争(軍)と産業界、企業との関係について述べられた箇所です。南方へ戦線が拡大していくことは新たな占領地、産業が創出されることを意味し、企業にとってはビジネスチャンスが生まれることになります。そこで軍(主に海軍)の担当部署に対する、企業の陳情合戦や接待攻勢が繰り広げられ、その生々しいやり取りが証言として残されていることなどに驚きました。軍にとっても、企業に便宜を図ることで天下り先の確保をもくろんでいたとのことで、官僚組織でもある軍の一面を示すものです。いずれにしても、戦争というものを複眼的に見ていく上で、産業や企業との関係というものも重要な視点であることを再認識しました。
 また、開戦に至る過程では主導的役割を果たしたのは陸軍であったが、開戦後はオーストラリアへの拡大攻撃を主張するなど、むしろ海軍が積極的姿勢であったことなど、これまで陸軍と海軍のカラーについて何となく抱いていたイメージを改めさせられる記述もいろいろと有ります。
 本シリーズの他の巻にも言えることですが、専門家へのインタビュー記事で語られることに興味深いものが多く、それだけでも一読の価値はあるように思われます。

内容紹介

1941年12月8日。真珠湾を急襲し、ついに対米戦争に突入した日本。ミッドウェー海戦ガダルカナル島の戦いを境に戦況が悪化するなか、なぜ戦線は拡大する一方だったのか。戦争方針すら集約できなかった陸海軍の対立、軍と一体化して戦争方針に混乱をもたらした経済界の利権構造・・・・・・開戦から半年間の日本の歩み、知られざる歴史の転換点を徹底検証。副題「戦中編」改題。

目次

果てしなき戦線拡大の悲劇 NHKスペシャル取材班

南方の資源
大本営政府連絡会議の招集
対立する陸海軍の主張
決断力を欠いた戦争方針の策定
ボールは再び連絡会議へ
絡み合う経済界の利権構造
混乱する戦時体制
ミッドウェー海戦山本五十六の真意
戦場に残された兵士たちの証言
解説 なぜ、戦争を終わらせることができなかったのか

―戦争指導・利権・セクショナリズム

泥縄式の戦争指導とふたつの軍隊 田中宏 
“大綱”という名の無方針とリーダーシップの不在 戸部良一
南方占領地域と大東亜共栄圏の実態 柴田善雅
“名将”山本五十六の虚実 相澤淳
なぜ、戦線は拡大したのか 吉田裕

おわりに

 

参考図書

日本人はなぜ戦争へと向かったのか: 外交・陸軍編 (新潮文庫)
 

 

 

日本人はなぜ戦争へと向かったのか DVD?BOX

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