読書案内

お薦めの本を紹介します

昭和の怪物 七つの謎

昭和の怪物 七つの謎

     保坂正康  講談社現代新書

 

昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)

昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)

 

 

本書は、著者自身の関係者へのインタビューに基づく記述が中心なので、東條英機石原莞爾らの今まで知らなかったことが数多くわかり、とても興味深いでした。中でも特に、著者の石原莞爾への思い入れがよくわかる本でした。

孫の犬養道子氏の話を中心に据えた犬養毅首相(五・一五事件で凶弾に倒れる)の逸話や、娘の渡辺和子氏の話を中心に据えた渡辺錠太郎陸軍教育総監二・二六事件で凶弾の犠牲に)の逸話もまた興味深いでした。特に、著者である保阪氏が犬養毅の追悼会で毅を称揚する話ばかりしかしなかったところ、道子氏から、「感情は感情、評価はまた別と考えて憶することなく語ってください」と言われた話や、カトリックの学園のシスターで理事長でもあった渡辺和子氏が、88歳にして、「二・二六事件は、私にとって赦しの対象からは外れています」と語ったという話などには深く考えさせられた。

瀬島龍三は、本書掲載のあの東京裁判出廷の際の凛とした写真姿を見ただけで、これはとんでもない人だと思わせる雰囲気がある。白洲次郎と共に、全てを語ってほしい人だった(そうしたら日本の歴史は変わっていたかもしれない)。娘である麻生和子氏のインタビューから垣間見える吉田茂の姿は、その娘自身と共に、”大物ぶり”が際立っている。

 内容紹介

昭和史研究の第一人者が、積み重ねた取材から東條英機、、石原莞爾犬養毅、渡辺和子、瀬島龍三吉田茂が残した謎に迫る。

私の使命は、昭和前期から無謀な戦争に突入し、悲惨な敗戦を迎えるまでの記録と教訓を、次世代に繋げることだと考えている、と筆者は言う。これまで40年以上にわたる近現代史研究で、のべ4000人から貴重な証言を得てきた。本書でも紹介する東條英機夫人。秘書官・赤松貞夫。石原莞爾の秘書・髙木清寿。東條暗殺計画の首謀者・牛島辰熊。2・26事件で惨殺された陸軍教育総監渡辺錠太郎の娘、和子。犬養毅首相の孫娘、道子。瀬島龍三本人。吉田茂の娘、麻生和子などなど。その証言と発掘した史料により筆者は多くの評伝を書いてきたが、そこに盛り込めなかった史実からあらためて「昭和の闇」を振り返る。とくにこれまで一冊にまとめられていなかった石原莞爾については、はじめての原稿となる(初出は「サンデー毎日」)。

著者紹介

保阪 正康(ほさか・まさやす)
1939(昭和14)年北海道生まれ。現代史研究家、ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。1972年『死なう団事件』で作家デビュー。2004年個人誌『昭和史講座』の刊行により菊池寛賞受賞。2017年『ナショナリズムの昭和』で和辻哲郎文化賞を受賞。近現代史の実証的研究をつづけ、これまで約4000人から証言を得ている。『陸軍省軍務局と日米開戦』『あの戦争は何だったのか』『昭和史の大河を往く』シリーズなど著書多数。

目次

第1章 東條英機は何に脅えていたのか
第2章 石原莞爾は東條暗殺計画を知っていたのか
第3章 石原莞爾の「世界最終戦論」とは何だったのか
第4章 犬養毅は襲撃の影を見抜いていたのか
第5章 渡辺和子は死ぬまで誰を赦さなかったのか
第6章 瀬島龍三は史実をどう改竄したのか
第7章 吉田茂はなぜ護憲にこだわったのか

あとがき

参考図書 

昭和史 七つの謎 (講談社文庫)

昭和史 七つの謎 (講談社文庫)

 

 

昭和史 七つの謎 Part2 (講談社文庫)

昭和史 七つの謎 Part2 (講談社文庫)

 

 

続 昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)

続 昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)