読書案内

お薦めの本を紹介します

遺伝子は、変えられるーあなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実ー

遺伝子は、変えられる

  あなたの人生を根本から変える

  エピジェネティクスの真実

  シャロン・モアレム

  [訳]中里京子 ダイヤモンド社

 

 

本書は、 自分の遺伝子を良い方向に変えるためのビジネス書です。遺伝子を正確に知ることで、自分の人生を変えることができます。一般的に良いモノとされても、自分の遺伝子が拒否反応を示せば、それは悪いモノなのです。遺伝子に関する様々な事例を通して、「遺伝子とは何か?」を少しずつ知ることができます。


本書では、ある実例が紹介されています。血液検査に引っかかり医師に勧められ、野菜と果物を多くとり肉を減らす、正しい食生活にした男性の例です。
さて、結果は?
正しい食生活をしているんだから体調が良くなった?

結果は違いました。男性はむしろ体調を崩した。なぜこのようなことが起こったのか?
それは彼が遺伝的に果糖がダメな体質だったからです。
正しい食事、正しい運動をしてストレスのない生活をすれば誰でも健康になるーー男性の例からそれは違うようです。大切なのは個人の遺伝にあった事をすること。多くの人に効果があっても、合わなかったら早々に辞めるのも大切な事なのです。

遺伝子の観点から食生活等のことを書かれてあり、万人向けの食生活など存在しなことを教えてくれます。

「いじめのトラウマは遺伝子をも傷つける」に衝撃を受けました。自分だけでなく、子どもや孫にも影響を与えるとは思ってもいませんでした。本書を読むと遺伝子検査をして、自分の遺伝子に合った食事や環境を整えたくなります。


自分を遺伝子から変えて成長したい方にオススメです。

 

 内容紹介

食事、仕事、人間関係、環境……
何気ない日常が、遺伝子を変える! 

遺伝にまつわる「新しい常識」となった
最新科学「エピジェネティクス」のすべてを、
全世界注目の「遺伝学者×医師」が語り尽くす! 

「遺伝=運命」は、もう古い!?

 

エピジェネティクス」とは何か 食事や環境が遺伝子を変える!?最近、「エピジェネティクス」という言葉に触れる機会が多いのではないだろうか。エピジェネティクスとは、たとえばこんなふうに定義してもいいだろう。

DNAの特定の場所にメチル基(CH3)がくっついたり、はずれたりする。さらには、DNAが巻き付くタンパク質であるヒストンの特定の場所にメチル基、アセチル基(CH3-CO)などがくっついたり、はずれたりする。そのような化学的な修飾の程度によって遺伝子の発現が調節される現象。

よってタイトルにある、「遺伝子は、変えられる。」とは、正確には「遺伝子は、エピジェネティクスによってその発現具合が変えられる」であり、根本にあるDNAの塩基配列が変えられるわけではない。残念ながら、誰もがイチロー羽生結弦君になれるという意味ではないのだ。

ただし、本書によれば遺伝子のエピジェネティックな変化は意外と簡単に起きてしまう。食べ物、飲み物、薬、運動、X線、ストレス……。誰もが日々直面する、些細な出来事や要素が遺伝子にエピジェネティックな変化をもたらす可能性があるという。

さらに本書にはこんなエピソードが登場する。一卵性双生児の一方はいじめを受け、他方はいじめを受けなかった場合、いじめを受けた方にはエピジェネティックな変化が起きる。セロトニントランスポーターの遺伝子(正確にはそのプロモーター部分)にメチル基がとても多くくっついていたのだ。するとこの遺伝子がオフの状態になり、神経伝達物質セロトニンが不足しがちになって、うつになる可能性が高まるのである。

エピジェネティックな変化は一生、あるいは数世代にわたって続く可能性があることがわかっている。

私はうつを患った過去があるが、もしかしてセロトニントランスポーター遺伝子の問題部分にまだメチル基が多くくっついたままだろうか。それとも大分はずれたから治ったのか。とても気になる。

評者:竹内 久美子

(週刊文春 2017.06.08号掲載)

 

著者等紹介

シャロン・モアレム(Sharon Moalem MD, PhD)
受賞歴のある科学者、内科医、そしてノンフィクション作家で、研究と著作を通じ、医学、遺伝学、歴史、生物学をブレンドするという新しく魅力的な方法によって、人間の身体が機能する仕組みを説いている。ニューヨークのマウント・サイナイ医学大学院にて医学を修め、神経遺伝学、進化医学、人間生理学において博士号を取得。その科学的な研究は、「スーパーバグ」すなわち薬が効かない多剤耐性微生物に対する画期的な抗生物質「シデロシリン」の発見につながった。また、バイオテクノロジーやヒトの健康に関する特許を世界中で25件以上取得していて、バイオテクノロジー企業2社の共同創設者でもある。
もともとはアルツハイマー病による祖父の死と遺伝病の関係を疑ったことをきっかけに医学研究の道に進んだ人物で、同病の遺伝的関係の新発見で知られるようになった。希少疾患や遺伝病への深い洞察は、本書においても大きく活かされている。
著書に、『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラーリストに列せられた『迷惑な進化――病気の遺伝子はどこから来たのか』(NHK出版)、『人はなぜSEXをするのか?――進化のための遺伝子の最新研究』(アスペクト)があり、35を超える言語に翻訳されている。また、医学誌『ジャーナル・オブ・アルツハイマーズ・ディジーズ』のアソシエート・エディターも務めた。
さらに彼の研究は広く一般でも注目されており、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ニュー・サイエンティスト』誌、『タイム』誌などに掲載されたほか、テレビ番組の『ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・ジョン・スチュワート』『ザ・トゥデイ・ショウ』などでも取り上げられている。

中里京子(なかざと・きょうこ)
翻訳家。20年以上実務翻訳に携わった後、出版翻訳の世界に。訳書に『依存症ビジネス』『勝手に選別される世界』(ともにダイヤモンド社)、『ハチはなぜ大量死したのか』(文藝春秋)、『不死細胞ヒーラ』『ぼくは科学の力で世界を変えることに決めた』(ともに講談社)、『食べられないために』『ファルマゲドン』(ともにみすず書房)、『おいしさの人類史』『描かれた病』(ともに河出書房新社)、『チャップリン自伝』(新潮社)など。

目次

プロローグ――人生も遺伝子も、あなたの手で変えられる
第1章 「顔」からゲノムを解き明かす
――「遺伝学者×医師」のちょっと失礼な仕事の流儀
第2章 遺伝子が悲劇をもたらすとき
――アップル、コストコデンマーク人の精子提供者が教えてくれる「遺伝子発現」の仕組み
第3章 運命を変える「遺伝子スイッチ」
――トラウマ、いじめ、ローヤルゼリーが導くエピジェネティクスの話
第4章 たった1個の書き間違い、ほんの少しの環境の違い
――骨折だらけの女の子と全身骨化した男性が人類に遺した贈り物
第5章 遺伝子の口に合わない食事
――祖先の食生活、完全菜食主義者、腸内フローラから見えたほんとうの栄養学
第6章 薬が効くかどうかも遺伝子次第
――鎮痛剤で死んだ子と5000歳のイタリア人が変える医療の未来
第7章 右か左か、それが大事だ
――生命というオーケストラの指揮者が奏でる遺伝子のハーモニー
第8章 ぼくらはみんな「突然変異」を抱えてる
――シェルパ、剣呑み曲芸師、遺伝子にドーピングされたアスリートに見る「進化」と遺伝子の関係
第9章 それでもゲノムをハックする?
――遺伝子検査がもたらした新たな選択肢と新たな差別
第10章 染色体を見ても性別が決められない?
――10億人にひとりの「男性」が教えてくれた性差の不思議
第11章 遺伝子とともに生きる
――6000の希少疾患に学ぶ「健康」のほんとうの意味
エピローグ――運命を握るのは

謝辞 訳者あとがき 原注 索引

 

参考図書

エピジェネティクス?新しい生命像をえがく (岩波新書)
 

 

遺伝子―親密なる人類史(上) (早川書房)

遺伝子―親密なる人類史(上) (早川書房)

 

 

遺伝子‐親密なる人類史‐ 下

遺伝子‐親密なる人類史‐ 下