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緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で

緒方貞子 戦争が

終わらないこの世界で

   NHK取材班 小山靖史 NHK出版

緒方貞子 戦争が終わらないこの世界で

  本書は、2013年8月17日に放送されたNHKスペシャル『緒方貞子~戦争が終わらないこの世界で~』という番組をまとめたもので、2012年から1年かけて緒方さんを取材したものです。本書では、本人へのインタビューと、関係者へのインタビューを中心に、緒方さんと戦争との関係にとどまらず、緒方さんのライフヒストリーを年代ごとにまとめています。

世界に誇れる日本人の一人、緒方貞子さん。国連難民高等弁務官在任中、これぞ、リーダー、という決断をスピーディに次々と下していかれました。本書は、その決断力はどのように、養われ、磨かれていったのか、その一端を感じ取ることができ、また、紛争が絶えないこの世界で、“人びとの間の共存”に関し、示唆を与えてくれます。

印象に残った言葉として「多様性にどう対応するかー。やっぱり尊敬しなくてはいけないのでしょうね。尊敬というのはオーバーかな?尊重でしょうか。隣の人は自分と同じと思はないほうがいいですよ。あなたと私は違うのです。違った部分については、より理解しようとするとか、より尊敬するとかしなくてはいけないのではないでしょうか」また、『教育は身に付いた経験や知識を全てはぎ落とした時、最後に残るものです』という彼女の言葉が刺さりました。

そして、最も印象に残った言葉が、緒方さんの論文『満洲事変ー政策の形成過程』の「無責任の体制」についての「そうです。責任のある政府というものは、政府の中の序列に従って、あるいは組織に従って物事を検討し、そしてその検討の結果というものを諮って進めていく。これが最も正当なやり方です。ところが満洲事変はそういうものを壊した戦争と言えるでしょう。ある意味で、日本の陸軍の中堅による一種の謀反だったわけですよね。だから、最後に抑えられなくなる。そして、太平洋戦争に突入するのです。結果的に言えば、陸軍を抑えられくなっていたから。そういう形で軍が勝ってしまったから、第二次世界大戦、真珠湾攻撃につながっていくわけですよね」(110頁)の言葉です。

 

 内容紹介

世界的リーダー、緒方貞子を知るうえで最適の一冊

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のトップを務め、“戦争が生み出した弱者”である難民を救うために、世界を駆け回った緒方貞子。その業績が今も国際社会で評価される、数少ない日本人リーダーの半生を、生い立ちから明らかにして話題を集めた「NHKスペシャル」が待望の出版化。
■曽祖父が総理大臣(犬養毅)、祖父は外交官(芳澤謙吉)、父も外交官(中村豊一)という家系に育った生い立ちやアメリカ留学時代など、これまであまり語られなかった若年期もていねいに振り返り、日本人離れした“リーダーとしての魂”が育まれた背景と道程を探っていくのが本書の読みどころのひとつ。

引用元:NHK出版社

 

緒方貞子(おがた・さだこ)

日本の国際政治学者。学位は、政治学博士。上智大学名誉教授。独立行政法人国際協力機構理事長、国連人権委員会日本政府代表、国連難民高等弁務官、アフガニスタン支援政府特別代表を歴任。また日本における模擬国連活動の創始者でもある。

引用元:Wikipedia

 

著者紹介

小山 靖史(こやま・やすし)
1961年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。86年NHK入局。主にドキュメンタリー番組制作を担当。「世紀を超えて」「5億丁の戦慄~小型武器拡散を追う~」「激流中国」など数多くのNHKスペシャルを手がける。13年、ETV特集「地球の裏側で“コシヒカリ”が実る」で農業ジャーナリスト賞を受賞。

 

目次

刊行によせて 緒方貞子

プロローグ

第1章 政治家・外交官の家に生まれて―誕生‐アメリカと中国での生活
第2章 信念の人 父・豊一―日中戦争‐帰国
第3章 少女時代に見た戦争―真珠湾攻撃‐終戦
第4章 リーダーシップの原点―聖心女子大学時代
第5章 戦争への疑問 満州事変研究―アメリカ留学‐論文執筆
第6章 突然の国連デビュー―結婚‐出産‐大学での講義‐国連総会出席
第7章 日本初の女性国連公使―国連日本政府代表部への赴任‐上智大学教授
第8章 紛争と向き合う中で―国連難民高等弁務官時代
第9章 「人間の安全保障」を求めて―二十一世紀JICAでの活躍
エピローグ 日本人へのメッセージ

あとがき

参考文献

参考図書

 

 

 

 

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