読書案内

お薦めの本を紹介します

凍った地球ースノーボールアースと生命進化の物語ー

凍った地球

  スノーボールアース

  と生命進化の物語

  田近英一 新潮選書

 

凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語 (新潮選書)

凍った地球―スノーボールアースと生命進化の物語 (新潮選書)

 

 

 本書は、地球や生命の進化に関するスノーボールアース説を真っ正面から扱った書です。一見、まったくあり得ないような話だが、地球科学の分野では有力な仮説であるとのことです。こういったあり得なさそうな仮説が事実と検証の組み合わせから築き上げられていくところが科学のおもしろさです。
 太古の地球は全体が凍結していた。しかもその全球凍結といわれる状態こそが生命の進化に不可欠であったという。著者は早い段階からこの仮説についての研究を進めていたとのことです。様々な地質学的な調査・研究や理論・仮説からこのスノーボールアース仮説を構築していく過程はなかなか面白いです。またこの学説を作り上げてきた魅力あふれる学者たちの人物像も面白いです。
 仮説であるが故、多方面から種々の反論や検証があります。斬新であり、しかも裏付けがあるので広く注目を集めるのは当然の結末でもあります。論争の中でスノーボールアース仮説がさらに強固なものとなっていく過程は科学の発展のモデルケースであります。凍り付いたのになぜ生命が生存できたのか、何が契機となって全球凍結から抜け出せるのかといったことの説明は科学のおもしろさを実感させるものです。
 題名から期待する向きもあるかもしれないが、地球温暖化とこの仮説はタイムスケールの違いがあり、直接関係するものではないです。ただし、地球のシステムを理解することはこれからの地球の行く末を考えていく上で不可欠である。このようなダイナミックな変転を経てこそ今の地球があると思うと不思議である。

 内容紹介

−50℃ 赤道に氷床。生物はどう生き残ったのか?
かつて全地球は、数百万年にわたり凍りついていた可能性が強い。赤道付近にも、北極のような氷床があった証拠が見つかっている。生物はどう生き延びたのか? 零下50度以下の厳寒はいかにして温められたのか? 大気の変化、温暖化プロセス、プレートテクトニクス、太陽の影響、生物進化。さまざまなファクターから、コペルニクス以来の衝撃的仮説が証明されていく。

 

著者紹介

田近 英一(たじか・えいいち)

1963年、東京都杉並区生まれ。東京大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。現在、東京大学大学院理学系研究科准教授。専門は地球惑星システム科学。2003年第29回山崎賞、2007年日本気象学会堀内賞受賞。著書に、『進化する地球惑星システム』『宇宙で地球はたった一つの惑星か』『地球惑星科学入門』『地球システム科学』『地球進化論』『新しい地球史』(すべて共著)等。

 

目次

第1章 寒暖を繰り返す地球
第2章 地球の気候はこう決まる
第3章 仮説
第4章 論争
第5章 二二億年前にも凍結した
第6章 地球環境と生物
第7章 地球以外に生命はいるのか?

 

参考図書

全地球凍結 (集英社新書)

全地球凍結 (集英社新書)

 

 

スノーボール・アース: 生命大進化をもたらした全地球凍結 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

スノーボール・アース: 生命大進化をもたらした全地球凍結 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

地球環境46億年の大変動史(DOJIN選書 24)

地球環境46億年の大変動史(DOJIN選書 24)