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天災から日本史を読みなおす ー先人に学ぶ防災ー

天災から日本史を

読みなおす 

        先人に学ぶ防

        磯田 道史  中公新書

 

 

 本書では、 地震と台風の国に生まれた以上、誰もが知っておいたほうがよいことが書かれています。本書で述べられているように歴史が未来のために最も役立てるとしたら、この国でどのような災害が繰り返されてきたのか、そこで生き残った人々に共通していたことは何か、防災のための公共投資で成功を収めた事例は何かをまとめ、分かりやすく提供することだとおもう。
 災害を記した古文書の著者は後世の人々が災難を逃れるために自分の経験を伝えたいと思っていたに違いない。その意に反して世に知られず、死蔵されたままになっている古文書は一体どれほどあるのだろうか。そのような文章に思いがけず触れた歴史学者としては、その熱いメッセージを世に伝えずにはいられないのでしょう。
 文章だけではない。本書の赤い塚の話のように、長い年月のうちにその意義の忘れられてしまったことはかなりあるのではないか。地震の前後で地下水の水位が変動する話も興味深い。南海地震道後温泉のお湯が出なくなったことは聞いたことがありますが、地下から出る液体や気体は常に地下の状態の変化を教えてくれるものだから、常に観測しておくことは意味がありそうです。また、東日本のプレートが動いたことで東南海南海地震や首都直下型地震の確率は大きく跳ね上がったものと思う。

 内容紹介

豊臣政権を揺るがした二度の大地震、一七〇七年の宝永地震が招いた富士山噴火、
佐賀藩を「軍事大国」に変えた台風、森繁久彌が遭遇した大津波――。
史料に残された「災い」の記録をひもとくと、「もう一つの日本史」が見えてくる。
富士山の火山灰はどれほど降るのか、土砂崩れを知らせる「臭い」、そして津波から助かるための鉄則とは。
東日本大震災後に津波常襲地に移住した著者が伝える、災害から命を守る先人の知恵。

著者紹介

磯田 道史(いそだ・みちふむ)
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授を経て、2012年4月より静岡文化芸術大学准教授、14年4月より同教授。著書『武士の家計簿』(新潮新書新潮ドキュメント賞受賞)など。

目次

まえがき――イタリアの歴史哲学者を襲った大地震
第1章 秀吉と二つの地震
1 天正地震と戦国武将
2 伏見地震が終わらせた秀吉の天下
第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火
1 一七〇七年の富士山噴火に学ぶ
2 「岡本元朝日記」が伝える実態
3 高知種崎で被災した武士の証言
4 全国を襲った宝永津波
5 南海トラフはいつ動くのか
第3章 土砂崩れ・高潮と日本人
1 土砂崩れから逃れるために
2 高潮から逃れる江戸の知恵
第4章 災害が変えた幕末史
1 「軍事大国」佐賀藩を生んだシーボルト台風
2 文政京都地震の教訓
3 忍者で防災
第5章 津波から生きのびる知恵
1 母が生きのびた徳島の津波
2 地震の前兆をとらえよ
第6章 東日本大震災の教訓
1 南三陸町を歩いてわかったこと
2 大船渡小に学ぶ
3 村を救った、ある村長の記録
あとがき――古人の経験・叡智を生かそう

索引

 

参考図書

災害と生きる日本人

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科学の目で見る 日本列島の地震・津波・噴火の歴史 (BERET SCIENCE)

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