読書案内

お薦めの本を紹介します

生命の森羅万象を解明するツールーDNA鑑定ー

DNA鑑定

犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで

梅津和夫 講談社

DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで (ブルーバックス)

本書は、一般人向けのDNA鑑定の入門書です。山形大学で法医学分野を研究しDNA鑑定の専門家として活躍する著者が、日頃の研究内容や実際依頼を受けたDNA鑑定の内容等を紹介しながら、DNAの面白さを伝えてくれます。


 DNAとは、何かという基本的な解説から始まり、「遺伝子」「染色体」「ゲノム」といった用語の区別、DNAの構造、核DNAとミトコンドリアDNAとの違いなどの基本的な事柄を解説してます。

そして、DNA鑑定の項目において、核DNAやミトコンドリアDNAなどのゲノムをつくる塩基の配列は、生物種、個人、個体によって違いがあり、同種内での違いを利用して個体識別や親子鑑定、種の区別などの解説があります。
 個人的に興味を惹いたトピックは、DNA鑑定による「日本人の起源」の解明です。古人骨のミトコンドリアDNAを分析することで日本人のルーツを解明します。

著者は日本人について、氷河時代に原日本人というべき民族が沖縄で育まれ、氷河時代の終焉とともに九州へ移って縄文人となり、約7300年前の鬼界カルデラの巨大噴火によって北方へ拡散し、 さらに大陸からの渡来人の流入が拡散を促進し、その後にやって来た渡来人が中央に進出して弥生人となることで二重構造を持つ日本列島人が形成された、との考察をします。
 最後に本書は、DNA鑑定にまつわるさまざまな興味深い話題を次から次へと取り上げていますので、科学分野の読み物としてたいへん面白く読むことができます。

目次

第1章 DNA鑑定「前夜」

第2章 なさねばならぬDNA鑑定

第3章 少しだけ学ぶDNA鑑定の原理

第4章 世にDNA鑑定の種は尽くまじ

第5章 DNA鑑定が明かす日本人の起源

第6章 DNA鑑定で迫る生物の謎

第7章 犯罪捜査とDNA鑑定

著者紹介

梅津和夫(うめつ・かずお)

山形大学医学部法医学教室客員准教授。1949年、山形県生まれ。医学博士。日本DNA多型学会、日本法医学会、日本人類学会会員。国内におけるDNA鑑定の第一人者で、2004年度より、生労働省が進めるシベリアや南方諸島での戦没者遺骨収集事業に参加。趣味は古典園芸植物、骨董品収集、岩魚釣り、山菜採り、きのこ採り。

 

 

なぜ地震・火山活動が、起きるのかを分かりやすく解説!

日本列島の下では何が起きているのか

列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで

中島淳一 講談社

日本列島の下では何が起きているのか 列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで (ブルーバックス)

最近、南海トラフ地震が気になってきたので、地震関連の基礎知識を得ようと本書を手にとりました。

本書は、プレートテクトニクス理論からはじまり、日本列島がどのようにして生まれ、日本列島の下が現在どのようになっており、また、地震や火山活動がなぜ起こるのか等を、解説したものです。

本書の特色は、地震関連について,基礎から最新の研究成果までを網羅しつつ,地震学とは一見無関係にみえる「水」を軸とした一つのストーリーを紡ぎ出しいるところです。

また、本書のように日本列島の下の全般の動きから解説することにより、全体像も見え、メカニズムも分かります。そして、日本列島が尋常ではない立ち位置に成立していることも分かります。

本書を読んで有用だと思ったところをあげます。

最近の地震関連のニュース等でよく聞くスロースリップやプレート内部地震、地震の巣の話題等が丁寧に説明されています。

スロースリップの話のところで、「地震を起こす」現象と「常にずるずるすべる」現象の他に「ときどきゆっくりすべる」スロースリップがあるとの解説は、奇妙な現象だと思いました。ただ、スロースリップに関してはわからないところが多いようです。


また、塑性変形と脆性破壊の観点から、ひずみ集中帯の解説をしたところでは、地盤が固いと地震が起きないのではと思っていましたが、よく考えてみると塑性変形できない分、他のところの塑性変形の歪みを引き受けて時々脆性破壊して大きな内陸型地震を起こしてしまうのであり、逆に火山のすぐそばでは脆性破壊領域が狭いので大きな地震は起きにくいのだそうです。

メカニズム的には水を介した話は、興味深いです。海洋プレートが沈み込む過程で水が巻き込まれ、高圧になると水が放出される。水のあるところが壊れやすいポイントになるので、このような水の動きは火山活動や地震に深く関与しているとのことです。その他にも、複雑な関東のプレート構造と地震の関係、地震の巣の解説、活断層の再利用など、わかりやすい解説が随所にたくさんあります。

本書は、地震の多い所に住む者にとって、素養としての地震関連の基礎的な知識を身につけるために、お読みになるのを勧めます。

目次

Prologue 沈み込み帯に生まれて―変動し続ける日本列島
01 プレートテクトニクス入門―地球を理解するための第一歩
02 地球内部を視る方法―地球の大構造とプレートの運動
03 日本列島ができるまで
04 日本列島の下には何があるか?
05 プレートの沈み込みと水
06 プレート収束境界で何が起こっているか?
07 沈み込むプレート内で何が起こっているか?
08 火山の下で何が起こっているか?
09 内陸地殻で何が起こっているか?
10 関東地方の地下で何が起こっているか?

著者紹介

中島淳一(なかじま・じゅんいち)

1976年茨城県生まれ。1998年東北大学理学部宇宙地球物理学科卒業。2003年東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。東北大学地震・噴火予知研究観測センター助教、准教授を経て、東京工業大学理学院地球惑星科学系教授。専門は地震学で、おもな研究対象は沈み込み帯の地震・火山テクトニクス。

 

「戦争の世紀」を生きた政治哲学者~ハンナ・アーレント~

ハンナ・アーレント

「戦争の世紀」を生きた政治哲学者

矢野久美子著  中公新書

ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書)

ハンナ・アーレント(Hannah Arendt、1906~1975)は、ドイツ出身の哲学者、思想家で、ユダヤ人です。ナチズムが台頭したドイツから、アメリカ合衆国に亡命し、のちに教鞭をふるい、主に政治哲学の分野で活躍しました。特に全体主義を生みだす大衆社会の分析で知られています。

 

本書は、ハンナ・アーレントを知るのに最適な入門書です。ハンナ・アーレントの生涯を、時間の流れに沿って、簡潔にまとめています。文章も平易ですので、とても読みやすいです。また、本書は『全体主義の起源』や、『人間の条件』、『イェルサレムのアイヒマン』などのハンナ・アーレントの著作の道案内にもなっています。

 

本書の中で印象的だったのは、「アイヒマン論争」の項目です。ハンナ・アーレントが、アイヒマン裁判を傍聴して、雑誌の『ニューヨーカー』に「イェルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さ」を掲載すると、非難の嵐に巻き込まれました。

問題となったこの論文は、元ナチ官官僚アドルフ・アイヒマンを悪の権化ではなく思考の欠如した凡庸な男であると指摘し、また、ユダヤ評議会のナチへの協力した点にもふれました。すると、アイヒマンを擁護したのではないかと、ユダヤ人らの反感を生みました。

アーレントのいう全体主義による思考停止とは誰にでも起こりうる「根源悪」を言ったもので、まさか自分が友人らから絶交され、ユダヤ人同胞からも全体主義による思考停止によってバッシングされるとは思いもよらなかったと思う。

目次

まえがき

第1章 哲学と詩への目覚め―一九〇六‐三三年

Ⅰ子供時代 Ⅱマールブルクとハイデルベルクでの学生生活 Ⅲナチ前夜
第2章 亡命の時代―一九三三‐四一年

Ⅰパリ Ⅱ収容所体験とベンヤミンとの別れ 

第3章 ニューヨークのユダヤ人難民―一九四一‐五一年

Ⅰ難民として Ⅱ人類にたいする犯罪 Ⅲ『全体主義の起源』

第4章 一九五〇年代の日々

Ⅰヨーロッパ再訪 Ⅱアメリカでの友人たち Ⅲ『人間の条件』

第5章 世界への義務

Ⅰアメリカ社会 Ⅱレッシングをとおして Ⅲアイヒマン論争

第6章 思考と政治

Ⅰ「論争」以後 Ⅱ暗い時代 Ⅲ「はじまり」を残して

あとがき

主要参考文献

ハンナ・アーレント略年譜

著者紹介

矢野久美子(やの・くみこ)
1964年、徳島県生まれ。2001年、東京外国語大学大学院博士後期課程修了。学術博士。現在、フェリス女学院大学国際交流学部教授。思想史専攻。

著書『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所』(みすず書房,  2002)

 

 

 

吉高由里子が演じる伊藤野枝とは? 風よ あらしよ

風よ  あらしよ 

村山 由佳

集英社

風よ あらしよ

2022年3月にNHKドラマにおいて、吉高由里子主演で直木賞作家村山由佳の原作で伊藤野枝の評伝小説「風よ あらしよ」が放送されます。伊藤野枝吉高由里子がどう演じるか楽しみです。

伊藤 野枝(いとう のえ、1895年〈明治28年〉1月21日 - 1923年〈大正12年〉9月16日)は、日本の婦人解放運動家、無政府主義者、作家、翻訳家、編集者。

ja.wikipedia.org

吉高由里子さんのツイートです。

 

 本書は、わずか28歳で、憲兵隊により理不尽に虐殺され、太く短く熱く生きた伊藤野枝の人生を、まさに本書の題名のごとく「風よあらしよ」のように描いています。

彼女の恋愛観や政治観には、ついていけない人もいると思いますが、彼女は家父長制下の結婚制度の中で良妻賢母を求められた時代に、それまでの習俗を打破して自由を求めて自分に正直に生きました。また、彼女は、働きながら7人の子供を産み社会活動を行なっていたことは当時の時代背景を考えると驚きです。

そして、なにより本書での伊藤野枝が魅力的なのは、大杉栄を愛している彼女の情熱が感じられることです。そして、伊藤野枝をはじめとする様々な登場人物の描写が素晴らしいです。

特に印象的だったのは、後藤新平宛の手紙での勇気と豪胆は男性顔負けの勢いで、その勇ましさは見事です。
伊藤野枝が生きた時代から一世紀位経ちますが、日本はいま伊藤野枝が望んだ社会になっているのでしょうか?ある調査では、この国が子育てに適さないと考える女性が六割いるらしいのですが、もし伊藤野枝がいたらどう行動にでるのだろうか。
本書は、650ページを超す大作に関わらず簡潔な文章ですので、たいへん読み易く思ったより速く読了できます。そして、作者の力量熱量ともに見事です。また、後の方に参考文献が掲載してあり、伊藤野枝および関係者の本を読むのに参考になります。
最後の方では、悲しくて涙が止まりませんでした。ただ、本書は物語として本当に面白いです。

 

下のサイトは、作者のインタビューです。本書が出来上がるまでの貴重な意見、過程が述べられてます。

shosetsu-maru.com

 

出版社の内容紹介

【第55回吉川英治文学賞受賞】
【本の雑誌が選ぶ2020年度ベスト10第1位】

どんな恋愛小説もかなわない不滅の同志愛の物語。いま、蘇る伊藤野枝と大杉栄。震えがとまらない。
姜尚中さん(東京大学名誉教授)

ページが熱を帯びている。火照った肌の匂いがする。二十八年の生涯を疾走した伊藤野枝の、圧倒的な存在感。百年前の女たちの息遣いを、耳元に感じた。
小島慶子さん(エッセイスト)

時を超えて、伊藤野枝たちの情熱が昨日今日のことのように胸に迫り、これはむしろ未来の女たちに必要な物語だと思った。
島本理生さん(作家)

明治・大正を駆け抜けた、アナキストで婦人解放運動家の伊藤野枝。生涯で三人の男と〈結婚〉、七人の子を産み、関東大震災後に憲兵隊の甘粕正彦らの手により虐殺される――。その短くも熱情にあふれた人生が、野枝自身、そして二番目の夫でダダイストの辻潤、三番目の夫でかけがえのない同志・大杉栄、野枝を『青鞜』に招き入れた平塚らいてう、四角関係の果てに大杉を刺した神近市子らの眼差しを通して、鮮やかによみがえる。著者渾身の大作。

[主な登場人物]
伊藤野枝…婦人解放運動家。二十八年の生涯で三度〈結婚〉、七人の子を産む。
辻 潤…翻訳家。教師として野枝と出会い、恋愛関係に。
大杉 栄…アナキスト。妻と恋人がいながら野枝に強く惹かれていく。
平塚らいてう…野枝の手紙に心を動かされ『青鞜』に引き入れる。
神近市子…新聞記者。四角関係の果てに日蔭茶屋で大杉を刺す。
後藤新平…政治家。内務大臣、東京市長などを歴任。
甘粕正彦…憲兵大尉。関東大震災後、大杉・野枝らを捕縛。

風よ あらしよ 画像10

www.shueisha.co.jp

目次

序     章 天地無常

第  一  章 野心

第  二  章 突破口

第  三  章 初恋

第  四  章 見えない檻

第  五  章 出奔

第  六  章 窮鳥

第  七  章 山、動く

第  八  章 動揺

第  九  章 眼の男

第  十  章 義憤 

第十一章 裏切り

第十二章 女ふたり

第十三章 子棄て

第十四章 日陰の茶屋にて

第十五章 自由あれ

第十六章 果たし状

第十七章 革命の歌

第十八章 婦人の反抗

第十九章 行方不明

第ニ十章 愛国

終     章 終わらない夏

著者紹介

村山由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京都生まれ。立教大学文学部卒。会社勤務などを経て作家デビュー。1993年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で直木賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、島清恋愛文学賞を受賞。

 

人類史の壮大な謎の解明とは?ー銃・病原菌・鉄

銃・病原菌・鉄

ジャレド・ダイアモンド

倉骨 彰=訳

草思社文庫

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

内容紹介

本書は、なぜ様々な民族が異なり、不均衡さをもって現在に至ったのか?過去1万3000年に遡って人類史を解き明かします。

最終氷河期が終わった時点では、世界の各大陸では、似たり寄ったりの狩猟採集生活をしていた人類です。しかし、その後、各大陸でどのように差異が生まれ、格差が広がっていったのかを、食料生産や家畜化の伝播、地理的有利による早さ等により、鉄、銃、病原菌への免疫といった文明の利を獲得するに至った経過を、本書の中で解き明かします。

また、16世紀にインカ帝国を少数のスペイン人が征服しましたが、その逆は何故ならなかったのか?を著者は解き明かします。

下巻ではオーストラリアとニューギニアのミステリー、中国はいかにして中国になったのか、アフリカはいかにして黒人の世界になったのか等も著者のユニークな見解により、それぞれに解明しています。

著者の経歴からうかがえる33年間にわたるニューギニア現地研究者として、または地理学者、進化生物学者、歴史学者といった多様な知見からの考察には終始圧倒されます。
また、著者は、西洋文明が発展したのは、人種的な優劣などでは決してなく、偶然と単なるユーラシア大陸の地理がその要因であり、根強い人種差別的な偏見に対して反論を投げかけます。

現在、民族主義や差別、多文化理解といったことが、よりデリケートな問題になってきていますので、本書を読むことにより、より踏み込んだ人類史を知り、あるいは、世界的な格差や不均衡がなぜ生じたのか?を考察したらどうでしょうか。

目次

【上巻】

プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの

第1部 勝者と敗者をめぐる謎

 第1章 一万三〇〇〇年前のスタートライン

 第2章 平和の民と戦う民との分かれ道

 第3章 スペイン人とインカ帝国の激突

第2部 食料生産にまつわる謎

 第4章 食料生産と征服戦争

 第5章 持てるものと持たざるものの歴史

 第6章 農耕を始めた人と始めなかった人

 第7章 毒のないアーモンドの作り方

 第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか

 第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか

 第10章 大地の広がる方向と住民の運命

第3部 銃・病原菌・鉄の謎

 第11章 家畜がくれた死の贈り物

【下巻】

 第12章 文字をつくった人と借りた人

 第13章 発明は必要の母である

 第14章 平等な社会から集権的な社会へ)
第4部 世界に横たわる謎

 第15章 オーストラリアとニューギニアのミステリー

 第16章 中国はいかにして中国になったのか

 第17章 太平洋に広がっていった人びと

 第18章 旧世界と新世界の遭遇

 第19章 アフリカはいかにして黒人の世界になったか

 エピローグ 科学としての人類史

著者等紹介

ジャレド・ダイアモンド(Jared Daimond)

1937年ボストン生まれ。カリフォル・ニア大学ロサンゼルス校教授。進化生物学者、生理学者、生物地理学者。アメリカ国家科学賞受賞。著書『銃・病原菌・鉄』(草思社)でピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞。同書は朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位に選ばれた。他に『人間はどこまでチンパンジーか』(新曜社)、『セックスはなぜ楽しいか』(草思社)などの著書がある。
倉骨 彰(くらほね・あきら)
早稲田大学卒業。テキサス大学オースチン校大学院言語学研究科博士課程修了。数理言語博士。同校で自然言語処理等を研究。訳書に、デビッド・セダリス『すっぱだか』のほか、アーサー・ブロック『マーフィーの法則―現代アメリカの知性』、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』『昨日までの世界』、ダニエル・ヒリス『思考する機械コンピュータ』など多数。著書には『ビジネス英文メールの鉄則』『怪我と病気の英語力』など。

 

 

 

 

池上彰が問う「戦争のない未来」にするためには?

池上彰の考える戦争ない未来

池上彰 理論社

池上彰の 君と考える戦争のない未来 (世界をカエル10代からの羅針盤)

本書は、池上彰さんが中高生向けに書き下ろした「戦争のない未来」の実現のための戦争全般の基本的な事が書かれた本です。たいへん分かりやすく書かれてます。また、大人でも学ぶことが多いです。

最初に戦争の定義から始まり、戦争と紛争と暴力等の違いを説明します。そして、なぜ人間は戦争を起こすのか?この根源的な問いに対し、ギリシャ時代から現代までの世界や日本で起こった様々な戦争がどのように起きたのか、そしてどう終結し、その結果どんな影響があったかを平易な文章で解説しています。

今日でも世界のどこかで戦争が起きてます。そして、本書の中で戦争を防ぐための解決策にも触れてます。

本書の中で印象的だったのは、「オバマ大統領、広島で演説」の箇所の池上さんが体験した以下の箇所です。

・・・私は大統領から約一〇〇メートル離れた場所で演説を聞いていました。

私は一九七六年から三年間、NHK広島放送局に勤務し、呉通信部に駐在していました。このとき被ばく者の方々を取材し、親しくさせていただいていました。その方々から、原爆投下後の広島のようすや、被ばくした人々の悲惨な姿を直接聞いていました。それだけにアメリカの大統領が広島に来て演説するという現実に感動し、演説を聞いているうちに涙が止まりませんでした(251頁)。

最後の所で、池上さんは次のように提言をしてます。

戦争は人間が始めるものです。それならば、人間がやめることができるのです。その目標に向かって、一人ひとりが自分の問題として考え、一歩ずつ歩んでいきましょう(311頁)。

この提言を、世界じゅうの人間が、心掛ければ「戦争のない未来」に少しでも近づくと思います。

出版社の内容紹介

池上彰が中高生に向けに書き下ろしたノンフィクション。戦争は暴力である。人はなぜ戦争をするのか? 戦争の変遷、戦争の種類、武器の歴史、戦争のルールや条約の歴史などを丹念に辿る。過去の戦争1つ1つに理由があった、だからしかたがない、と諦めるのではなく、その理由を取り除く方法を考える。人間への信頼や希望、一人一人が考え行動していくヒントに満ちた一冊。

編集者コメント

池上さんは、戦争をなくすためには、人任せにせず一人一人が自分たちのこととして真剣に考えなくてはならない、と真剣に語りかけます。

理論社

目次

はじめに

第一章 戦争ってなに?

第二章 どんな理由で戦争ははじまるの?

第三章 日本も戦争をしてきた

第四章 第一次世界大戦と国際連盟

第五章 悲惨なアジア・太平洋戦争

第六章 平和国家建設と東西冷戦

第七章 核開発が続いてきた

第八章 どうすれば戦争はなくせるの?

おわりに―戦争をなくすために

資料 広島平和記念公園におけるバラク・オバマ元アメリカ大統領の演説

著者紹介

池上 彰(いけがみ・あきら)

1950年長野県生まれ。ジャーナリスト。名城大学教授、東京工業大学特命教授などを勤め大学での講義も多い。 慶應大学経済学部卒業後、NHK入局。 報道局記者を歴任し1994年から「NHK週刊こどもニュース」に出演、子どもに伝わる解説で人気を博す。2005年退局、フリーランスになり各種メディアで活躍。著書は 『伝える力』『おとなの教養』『新・戦争論』(共著)など多ジャンルにわたる。

本書、戦争についての池上さんのインタビューです。

 

楽しすぎる人類史! 『こども サピエンス史 生命の始まりからAIまで』

  こども 

サピエンス史 

生命の始まりからAIまで

(著)ベングト=エリック・エングホルム

(絵)ヨンナ・ビョルンシエーナ

(訳)久山葉子

こどもサピエンス史 生命の始まりからAIまで

本書は、著者が、ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・サピエンス全史』を読んで感銘し、子供向けに分かりやすく描かれたサピエンス史です。

本書では、人類の歴史を、簡易な言葉で、広範囲な視点で描かれています。著者は、ヨーロッパのスウェーデンの方なので、欧米人の視点で人類の歴史を描いてると思いました。

ホモ・サピエンスが今、生き残っているのは、他のヒトや動物たちを滅ぼしてきたからです。本書では、その過程を、簡易な文章と魅力的なイラストで分かりやすく描かれてます。

農耕や宗教や貨幣や政治などが、なぜ生まれたのかを、それが人類にもたらした影響などが、学校だといくつかの科目に分けて習います。しかし、本書では、その内容が一冊に詰まっています。コンパクトにまとめられているからこそ、人類の歴史の大きな流れを把握しやすいです。大人でも読んで楽しい人類史が描かれてます。

本書を読んでから、ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・サピエンス全史』を読むと、人類史に対する考える方が深まると思います。

 

kazamori.hatenadiary.jp

 

 

出版社の商品紹介

教育大国スウェーデン発、こどもにもわかる楽しい『サピエンス全史』と話題のベストセラー!

「賢い人」という意味の「ホモ・サピエンス」は、どのようにしてこの世界を作ってきたのだろう? 
二本足で立ち上がり、頭がよくなって、作物を育て、文字やお金を発明して、ものを売り買いするようになっただけじゃない。
地球をわがもの顔に使ったり、先住民族を滅亡させたり、ひどいこともしてきた。
人類の長い歴史をふり返ってみれば、未来への道も見えてくる。
オールカラーのイラストで、楽しく学べるはじめての人類史。
いまなぜSDGsが必要なのかが、すんなりわかる。
小学校高学年以上で習う漢字にはルビつきで、朝読にも最適。
『サピエンス全史』を読破できなかったおとなにもおすすめです。

(こどもサピエンス史 生命の始まりからAIまで | NHK出版)

著者等紹介

著者

ベングト=エリック・エングホルム
1959年生まれ。作家。おもに子ども向けの科学書を執筆。
『コウモリ』、『鼻水』、『血』、『歯』、『シラミ』(いずれも未邦訳)など。
スウェーデンの「子どもが選んだ本大賞」も受賞している。
イラストレーターのヨンナ・ビョルンシェーナとの共同執筆は本書で3冊めとなる。

ヨンナ・ビョルンシェーナ
絵本作家。1983年生まれ。イラストレーター、児童文学・絵本作家。
本書では挿絵のみ担当。日本でも「おとうとうさぎシリーズ」(クレヨンハウス)6冊が刊行されている。

久山 葉子
翻訳家。エッセイスト。理想の子育て環境を求めて、2010年に家族でスウェーデンに移住。現在(2021年)小学6年生になった娘を通じてスウェーデンの保育園や小学校の教育を体験。2011年から高校で第二外国語としての日本語を教え、スウェーデンの教育現場の現状を様々なメディアで紹介している。ストックホルム大学で高校教員免許を取得中。おもな翻訳書にアンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)、トーベ・ヤンソン『メッセージ』(フィルムアート社)、レイフ・GW・ペーション『許されざる者』(創元推理文庫)、著書に『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』(東京創元社)などがある。

目次

長~い時間を感じてみよう/進化と革命/ぼくたちはひとつの種/

頭の中の大革命
木から下りてみた/手先が器用に/かしこい脳、重い頭/ヒトと動物のちがい/進化が助けてくれた/みんなでいっしょに/火と炎/名前をつける/ミニ人間/なんでも食べる/世界へ/脳の力/とつぜんそうなった!/ぼくたちが王さまだ!/だいじなうわさ話/考える力/敵か味方か/原始人?/たいへんなことに!/親せきなのにひどい!/精霊/想像力と芸術/遊ぶのが大好き/神さまの登場/お墓が手がかり/言葉/たくさんの言語/交換したもの勝ち/放浪は続く/物語/つくりごと/いろいろな文化/ものが増えた/知識採集民/仕事時間と休み時間/よく食べ、よく動く/雑学博士から専門家へ 

農耕の始まり
農業を始めた人類/わあ、なるほど!/種をまき、家をつくる/いっしょうけんめい働いた/問題が増えた/いとしのわが家/農耕から文明へ/食べものを欲しがるたくさんの口/歴史の誕生/先住民は追いやられた/動物を手なずける/自然を手なずける/人を手なずける/神のつかい/罰を与える神さま/黄金律/富と権力/権力者がますます強くなる/たし算とひき算/言葉が文字に/記録のための文字/文字で書かれたお話/ねんど板の山/最初の文字はどこで?/新しい時代へ 

みんなでいっしょに
文化のまじりあい/「うちら」と「やつら」/商人・侵略者・預言者/ミートボールってスウェーデンだけのもの?/売り買い/通貨/最初のお金/銀!/ついに硬貨があらわれた/大成功/お金のマジック/大国と小国/考えを広め、考えを借りる/大きなひとつに/世界がひとつの帝国に?/友だちかよその人か/神の名のもとに、征伐だ!/もっと神さま/デンマーク語を話せるかい?/左、右、それともまっすぐ?/ウソかホントか/さあ、次のステップへ!… 

科学が世界に広まる
500年で大変化/世界地図にないところはない/知らないことを知る/本/古代ギリシャではずっとまえに/コロンブスのかんちがい/正しいまちがい/ちょっと寄り道/新大陸に刺激を受けて/植民地/科学、宗教、武器/中国は西へ/どんどん侵略!/次はアジアの番/神さまを連れて/反乱!/南の海へ行ってみたい/人類の悲しい歴史/ダーウィン/いいこともあったのか?/ヨーロッパはさらに世界に広まった… 

モノとお金
資本/お金が増える/投資/筋肉、風、水/蒸気/太陽/労働力/原材料/近代/新しい現実/イデオロギー /ヒューマニズム/国家とお金/政治/政治家/フェア?/ショッピング時代/死と永遠の命/ほんとに?/進化をうながす/別の人生/AI〈人工知能〉/そして、ずっとしあわせに暮らしましたとさ/やろうと思えばできる!

 

参考図書

 

 

 

戦中の捕虜生体解剖『九州大学医学部事件』の真相を追ったノンフィクションの名著

生体解剖

九州大学医学部事件

上坂冬子

中公文庫

生体解剖―九州大学医学部事件 (中公文庫 M 168-2)

 先日、NHKの終戦記念ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』(主演:妻夫木聡x蒼井優)を観ました。非常に見ごたえありました。このドラマは、戦中の捕虜生体解剖『九州大学生体解剖事件』を扱ったドラマです。

www.nhk.or.jp

そこで、今回、紹介する本は、上坂冬子の『生体解剖 九州大学医学部事件』です。本書は、戦後の軍事裁判で明らかにされた九州大学医学部による「生体解剖事件」を扱い、その真相に迫った名著です。

1945年(昭和20年)5月、九州の上空にて、海軍戦闘機「紫電改」の体当たりによって墜落したB29爆撃機の飛行士12名が、大きなケガを負うこともなく、捕虜になりました。しかし、戦局の悪化と度重なる空襲により、捕虜の処遇に困っていた西部軍司令部は、九州大学医学部OBの軍医に処置を一任します。

ほどなくして、飛行士たちのうち8名が九大の解剖室に運ばれ、麻酔を打たれ、生きたままで「肺摘出」「心臓摘出」「脳の切開」、輸血に代わる「海水注射」などの医学実験の犠牲となりました。

人間の命を救う立場にある医者が、なぜ凄惨な行為を行ったのか。その責任は軍部にあるのか、医者にあるのか。そして、原爆で死んだことに偽装した事件が、なぜアメリカにばれたのか。そして被告は、どのように裁かれたのか。本書では、著者の丹念な取材で、これらの真相に迫っていきます。

1979年(昭和54年)、本書は、発売とともに大反響を呼び、日米を震撼させた悲劇の真相を克明に追った『ノンフィクションの名著』です。

著者紹介

 上坂 冬子(かみさか・ふゆこ)
1930年、東京生まれ。1959年、『職場の群像』で第一回中央公論社思想の科学新人賞を受賞したのを機に文筆活動をはじめ、以後ノンフィクション作家として執筆活動に専念する。1993年度菊池寛賞、正論大賞を受賞。

目次

 三十余年後何故書くのか

  ー前がきに代えてー

第一部 生体解剖事件

 第一章 元凶は誰か

 第二章 最初の犠牲者

 第三章 ”手術”の全貌

 第四章 愛弟子の反旗

 第五章 四通の投書

 第六章 医学部教授総辞職

 第七章 独房の縊死

第二部 食肉事件

 第一章 しくまれた陥穽 

 第二章 一人の勇気

第三部 軍事裁判

 第一章 証人と証言

 第二章 最終弁論と論告

 いま、当事者は語る

 -むすびに代えてー

  あとがき

  参考資料

 解説 なだいなだ

  

 

参考図書 

NHKの終戦記念ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』(主演:妻夫木聡x蒼井優)の原作です。

 

 『九州大学医学部事件』を参考にした小説です。

 

 

「知の巨人」立花隆の書棚

立花隆の書棚

立花隆

薈田 純一 写真

中央公論新社

立花隆の書棚

本書は、著名人の書棚をくまなく撮影して本にする、「〇〇の書棚」という中央公論新社のシリーズの一冊として企画されたもので、「 知の巨人」との異名を持つ立花隆さんの書棚を解説した本です。

また、特殊な撮影方法で撮影した書棚の写真は見応えがあります。そして、立花隆さんの書棚にある本の解説を中心にして、立花隆さんが、どのように「知の世界」を作り出していったかが分かります。

まず、本書を手にとって驚くのがそのボリュームです。それは、ハードカバーで、厚さ5cm以上で、ページ数は、650ページにも及びます。また、本書はただのブックガイドではなく、書棚を見ていくことで、立花隆さんの「知の歴史」の断片を知ることができます。

本書の「目次」には特徴が有ります。本書の「目次」は、章ごとにネコビル(一部、三丁目倉庫+立教大学研究室)のフロアを紹介しています。そして、そこに収められた蔵書にまつわる著者の解説内容が小見出しとなっています。

f:id:kazamori:20210713091154p:plain

立花隆とネコビル

それぞれが非常に興味深いテーマを取り上げています。本書の目次については、このブログの後の方に掲載してます。

本書で個人的に興味深かったのが「歴史は「今」から逆戻りで学ぶべき」の項目です。著者は、日本の歴史教育のあり方に疑問を呈し、著者の歴史を学ぶに際しての貴重な考えを以下のように書いてます。

 「高校の世界史では、一年生の夏休みまでずっとギリシャ・ローマを教えて、三年生の最後に第二次世界大戦までたどり着けるかどうかといったところです。日本史でも同じように古いことばかり教えているから、みな縄文時代・弥生時代はよく知っている(笑)。

でもそれでは駄目なのです。高校の教育改革の一つとして、『現代史』という教科を立ち上げるべきだと主張している人もいますが、これはぜひ導入するべきだと思います。

現代史がわからないと、現代そのものがわからない。ぼくが歴史を教えるときは、新しい時代から順番に教えます。まず、今の世界の状況を教える。次に、その少し前の状況を伝えて、なぜ今のような事態になったのかを教える。これを繰り返して、少しずつ歴史を逆戻りしていくのです。

それで、ぼくとしてはフランス革命辺りまで戻れば、十分じゃないかという気がしています。もちろん歴史が好きな人はいくらでも戻ればいい。でも縄文時代から始めてフランス革命まで進めるよりも、『今』からフランス革命まで戻るほうが、ずっと意味がある。過去200年がわかれば、『今』がわかるのです。」(636頁)

本書は、ページ数こそとても多く、手に取るのを躊躇してしまうかもしれません。しかし、写真が多く、ページあたりの文字数もそれほど多くないので、読了するのにかかる時間は見た目ほどではありません。また、書棚を撮影した写真を見るだけでも、本好きには楽しくなる本です。

先日(2021年4月30日)、立花隆さんがお亡くなりました。ご冥福をお祈り申し上げます。

出版社の内容紹介

知の巨人、立花隆の驚異の書棚を、分野ごとに撮影して紹介。哲学、宗教、分子物理学……、各分野の必読文献を列挙し、知の歴史にさまざまな角度から光を当てる。グラビア188ページを収載。

中央公論新社

著者等紹介

 立花 隆(たちばな・たかし)

1940年、長崎県生まれ。64年、東京大学仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。66年に退社。67年、東京大学哲学科に学士入学。その後、ジャーナリストとして活躍。83年、「徹底した取材と卓抜した分析力により幅広いニュージャーナリズムを確立した」として、第31回菊池寛賞受賞。98年、第1回司馬遼太郎賞受賞。

薈田 純一(わいだ・じゅんいち)

写真家。兵庫県神戸市生まれ。小、中学校時代を米国で過ごす。外国通信社勤務後、人物ポートレートや、“突然よみがえる日常では忘却された記憶”というべき「偶景」をテーマに撮影を始める。

 目次

まえがき

第一章 ネコビル一階
「死」とは何か
自分の体験から興味が広がる
日本近代医学の始まり
分子生物学は、こんなに面白い
春本の最高傑作
伝説の編集部
不思議な人脈
中国房中術の深み
フロイトはフィクションとして読む
サルへのインタビューを試みた
河合隼雄さんとの酒
アシモはラジコンに過ぎなかった
人間の脳とコンピュータをつないでしまう
医療、介護から軍事まで
原発事故現場に入ったロボットがアメリカ製だった理由
最初はアップルのMacを使っていた
ネットの辞典は使わない
汚れたラテン語の教科書
役に立つシソーラス
虫眼鏡より拡大コピー
ポパーの主著が見つからない
お坊さんで科学者の偉人
古本屋の商売
とにかく脳のことはわかっていない
壊れた脳がヒントになる
医学系の心理学と文科系の心理学がある
レポートそのものが売り物になる宇宙モノ
嘘が面白い
ブッシュの一日
アメリカにおける原発開発ブーム
最新の原発技術
東電ではなくGEに損害賠償を要求すべき
原発の安全性を証明する事件になるはずだった
太陽光発電の可能性
研究の自由は、現代社会で最も重要なもの
キュリー夫人の国
原発研究に積極的なロシア
中国が原発大国になる

第二章 ネコビル二階
土着宗教としてのキリスト教
真言宗の護摩焚きにそっくりだと思いました
聖母像の秘密
マリア信仰
寝取られ男ヨセフ
黒いマリア
日本とイエズス会宣教師の深い関係
現地人と親しくなるコツ
殉教者の歴史
インカの血統
偽書を楽しむ
途切れた天皇の系譜
自著はあまり読み返さないけれど

第三章 ネコビル三階
西洋文明を理解するには聖書は必読
個々の文章を読み込んでいくこと
神の存在を素朴に信じるアメリカ人
アーサー王伝説
本は総合メディア
イスラム世界を「読む」
神秘主義
井筒俊彦先生との出会い
ルーミーの墓所
コーランの最も有名なフレーズ
『古事記』『日本書紀』以外の系譜
パワースポットの源流
神、キリスト、そして聖霊
巨石文明とヴィーナス信仰
メーヌ・ド・ビランと日本の出版文化
ソクラテス以前の哲学
フリーマン・ダイソン
地球外生命体は存在する!?
困ります、岩波さん
ファインマン最大の仕事
くりこみ理論
科学を「表現する」天才
科学は不確かなものである
サイエンスについて語ることの難しさ
現実では起きないけれども……
アインシュタイン最大の功績
レーザーの世界
日米、「光」の競争
タンパク質の構造解析

第四章 ネコビル地下一階と地下二階
自動排水装置
取材は「資料集め」から
明治維新について書くなら必須の資料
貴重な『Newsweek』
大学は「自分で学ぶ」ところ
保存できなかった農協関係資料
本を書いた後に、資料が増えていく不思議
石油から、イスラエルと中東問題へ
モサドのスパイ、エリ・コーエン
本には書いていないエルサレム
パレスチナ報告
科学史が重要なわけ
日本の航空機製造の元祖
郷土史研究の名資料
野坂参三の秘密
重信房子に接触を試みた
ゾルゲと日本共産党
警察資料まで売っている古本屋
雑誌はなかなかいい資料
連続企業爆破事件はまだ終わっていない
機関誌へ寄稿していたビッグネーム
アメリカの新聞も危ない
西欧諸国における下水道の意味
スターリンとは何だったのか?
プーチンは帝国を作ろうとしている
旧岩崎邸の地下で起きた事件の真相
ぼくが煙草を吸わない理由
半藤一利さんと田中健五さんにはお世話になった

第五章 ネコビル階段
ブルゴーニュからヨーロッパを知る
近代国家の枠組みを相対化する
書棚は歴史の断面である
ゲーデルの功績に有用性はあるか
アジアは単純ではない
教科書的な本をまず手にとる
宗教学者としてのマックス・ウェーバー
政治家の質を見分ける本
親父の形見
政治家の自叙伝

第六章 ネコビル屋上
コリン・ウィルソンの多面的世界
男はみんなスケベだ
埴谷雄高の思い出
転向者の手記
共産党から連日のように批判記事を書かれた
火炎瓶の作り方
ワイン作りの思い出
その「赤い本」の日本語版

第七章 三丁目書庫+立教大学研究室
お気に入りはバーン=ジョーンズ
ロンドン風俗のすべてが描かれている
日本にも大きな影響を与えたラファエル前派
死ぬ前に見ておきたい絵
今、アメリカで最も有名な中国人画家
人間が人間を表現するということ
一休と森女の謎
日本の三大バセドウ病患者
「汝の欲するところをなせ」というタイトルのビデオ
携帯の電波が届かない執筆スペース
大学の教養課程で教えるべきは、「脳」について
どうしようもない人のどうしようもない本
特別な写真家土門拳
春画でも最高峰の葛飾北斎
錦絵なしに歴史は語れない
原書房の独特なラインナップ
角栄について新しいことが書かれた本はもう出ない
もう一度音を鳴らしてみたい
学生時代は映画館に入り浸っていた
河出書房の意外な姿
ヨーゼフ・ボイスの不思議な仕事
日記からわかる明治維新
新聞凋落!?
彼らにはたしかに「勢い」があった
古書店の在庫目録
昭和史の資料と戦闘詳報
伏字だらけの日本改造法案
盗聴と二・二六事件
ブーガンヴィルと啓蒙思想
キリスト教の歴史を知るための基礎資料
歴史は「今」から逆戻りで学ぶべき
時代が変われば、本を置く場所も変わる

索引

 

 

人類史上最恐の頭脳 フォン・ノイマンの哲学

フォン・ノイマンの哲学

人間のフリをした悪魔

高橋昌一郎 講談社現代新書

フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書)

本書は、 ハンガリー出身のユダヤ系科学者で、アメリカで原爆を共同開発し、投下決定に関わり、戦後はコンピューター開発に取り組み、ゲーム理論や気象予測の生みの親となり、1957年に白血病で亡くなったフォン・ノイマン(1903年~1957年)について書かれた評伝です。

フォン・ノイマンの特徴は、数学と量子物理学から始まって、数理分野を中心に150を超える分野を自由自在に行き来した、とてつもない天才であるということです。

本書の構成は、フォン・ノイマンの生涯や業績の概略を紹介し、その後に時代背景なども合わせて彼の業績や哲学をより詳しくまとめています。この構成により、最初に概要を掴むことができますので、その後が読み進めやすいです。

また、数学や科学の用語が頻出しますが、イメージしやすい例を用い、平易な言葉で解説されているので、科学の素養がなくても読めます。ノイマンの私生活にも触れ、天才だけど運動や車の運転は苦手だったりと、人間性がわかる側面も描かれており、楽しく読めます。
本書で印象的だったのは、原爆開発の箇所です。「科学的に可能だとわかっていることは、やり遂げなければならない。それがどんなに恐ろしいことにしてもだ」というノイマンの言葉は悪魔的に聞こえます。

また、「より悲惨な結末を防ぐため、毒ガス、原爆の使用など非人道的な手段の行使は許容されるべき」という考えには、第二次世界大戦の背景にあったドイツより先に原爆を完成させる必要があり、戦時中ではやむを得なかったのかもしれないが、人類にとっての科学のありかたについて考えさせられます。

 出版社の内容紹介

21世紀の現代の善と悪の原点こそ、フォン・ノイマンである。彼の破天荒な生涯と哲学を知れば、今の便利な生活やAIの源流がよくわかる!

「科学的に可能だとわかっていることは、やり遂げなければならない。それがどんなに恐ろしいことにしてもだ」

彼は、理想に邁進するためには、いかなる犠牲もやむを得ないと「人間性」を切り捨てた。

<本書の主な内容>

第1章 数学の天才
――ママ、何を計算しているの?
第2章 ヒルベルト学派の旗手
――君も僕もワインが好きだ。さて、結婚しようか!
第3章 プリンストン高等研究所
――朝食前にバスローブを着たまま、五ページの論文で証明したのです!
第4章 私生活
――そのうち将軍になるかもしれない!
第5章 第二次大戦と原子爆弾
――我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない!
第6章 コンピュータの父
――ようやく私の次に計算の早い機械ができた!
第7章 フォン・ノイマン委員会
――彼は、人間よりも進化した生物ではないか?

********

ノイマンがいかに世界を認識し、どのような価値を重視し、いかなる道徳基準にしたがって行動していたのかについては、必ずしも明らかにされているわけではない。さまざまな専門分野の枠組みの内部において断片的に議論されることはあっても、総合的な「フォン・ノイマンの哲学」については、先行研究もほとんど皆無に等しい状況である。

 そこで、ノイマンの生涯と思想を改めて振り返り、「フォン・ノイマンの哲学」に迫るのが、本書の目的である。それも、単に「生涯」を紹介するだけではなく、彼の追究した「学問」と、彼と関係の深かった「人物」に触れながら、時代背景も浮かび上がるように工夫して書き進めていくつもりである。
――「はじめに」より

********

 ノイマンの思想の根底にあるのは、科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきだという「科学優先主義」、目的のためならどんな非人道的兵器でも許されるという「非人道主義」、そして、この世界には普遍的な責任や道徳など存在しないという一種の「虚無主義」である。

 ノイマンは、表面的には柔和で人当たりのよい天才科学者でありながら、内面の彼を貫いているのは「人間のフリをした悪魔」そのものの哲学といえる。とはいえ、そのノイマンが、その夜に限っては、ひどく狼狽(うろた)えていたというのである。クララは、彼に睡眠薬とアルコールを勧めた。          
――第5章「第二次大戦と原子爆弾」より

********

人類史上 最恐の頭脳! 

講談社BOOK倶楽部

  著者紹介

高橋  昌一郎(たかはし しょういちろう)

一九五九年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。現在は、國學院大學教授。専門は、論理学・科学哲学。主要著書に『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『ゲーデルの哲学』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』などがある。 

目次

はじめに 人間のフリをした悪魔

第1章 数学の天才
――ママ、何を計算しているの?
――獅子は爪跡でわかる!

第2章 ヒルベルト学派の旗手
――フォン・ノイマンに恐怖を抱くようになりました!
――君も僕もワインが好きだ。さて、結婚しようか!

第3章 プリンストン高等研究所
――ジョニーはアメリカに恋していた!
――朝食前にバスローブを着たまま、五ページの論文で証明したのです!

第4章 私生活
――ゲーデルを救出すること以上に、重大な貢献はありません!
――そのうち将軍になるかもしれない!

第5章 第二次大戦と原子爆弾
――どうして自分には、彼にできたことが見通せなかったのか!
――我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない!
――我々が今作っているのは怪物で、それは歴史を変える力を持っている!

第6章 コンピュータの父
――ようやく私の次に計算の早い機械ができた!
――もし彼を失うことになれば、我々にとって大きな悲劇です!
――彼は少し顔を出しただけで、経済学を根本的に変えてしまったのです!

第7章 フォン・ノイマン委員会
――明日爆撃すると言うなら、なぜ今日ではないのかと私は言いたい!
――彼は、人間よりも進化した生物ではないか?

おわりに

参考文献