読書案内

お薦めの本を紹介します

戦中の捕虜生体解剖『九州大学医学部事件』の真相を追ったノンフィクションの名著

生体解剖

九州大学医学部事件

上坂冬子

中公文庫

生体解剖―九州大学医学部事件 (中公文庫 M 168-2)

 先日、NHKの終戦記念ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』(主演:妻夫木聡x蒼井優)を観ました。非常に見ごたえありました。このドラマは、戦中の捕虜生体解剖『九州大学生体解剖事件』を扱ったドラマです。

www.nhk.or.jp

そこで、今回、紹介する本は、上坂冬子の『生体解剖 九州大学医学部事件』です。本書は、戦後の軍事裁判で明らかにされた九州大学医学部による「生体解剖事件」を扱い、その真相に迫った名著です。

1945年(昭和20年)5月、九州の上空にて、海軍戦闘機「紫電改」の体当たりによって墜落したB29爆撃機の飛行士12名が、大きなケガを負うこともなく、捕虜になりました。しかし、戦局の悪化と度重なる空襲により、捕虜の処遇に困っていた西部軍司令部は、九州大学医学部OBの軍医に処置を一任します。

ほどなくして、飛行士たちのうち8名が九大の解剖室に運ばれ、麻酔を打たれ、生きたままで「肺摘出」「心臓摘出」「脳の切開」、輸血に代わる「海水注射」などの医学実験の犠牲となりました。

人間の命を救う立場にある医者が、なぜ凄惨な行為を行ったのか。その責任は軍部にあるのか、医者にあるのか。そして、原爆で死んだことに偽装した事件が、なぜアメリカにばれたのか。そして被告は、どのように裁かれたのか。本書では、著者の丹念な取材で、これらの真相に迫っていきます。

1979年(昭和54年)、本書は、発売とともに大反響を呼び、日米を震撼させた悲劇の真相を克明に追った『ノンフィクションの名著』です。

著者紹介

 上坂 冬子(かみさか・ふゆこ)
1930年、東京生まれ。1959年、『職場の群像』で第一回中央公論社思想の科学新人賞を受賞したのを機に文筆活動をはじめ、以後ノンフィクション作家として執筆活動に専念する。1993年度菊池寛賞、正論大賞を受賞。

目次

 三十余年後何故書くのか

  ー前がきに代えてー

第一部 生体解剖事件

 第一章 元凶は誰か

 第二章 最初の犠牲者

 第三章 ”手術”の全貌

 第四章 愛弟子の反旗

 第五章 四通の投書

 第六章 医学部教授総辞職

 第七章 独房の縊死

第二部 食肉事件

 第一章 しくまれた陥穽 

 第二章 一人の勇気

第三部 軍事裁判

 第一章 証人と証言

 第二章 最終弁論と論告

 いま、当事者は語る

 -むすびに代えてー

  あとがき

  参考資料

 解説 なだいなだ

  

 

参考図書 

NHKの終戦記念ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』(主演:妻夫木聡x蒼井優)の原作です。

 

 『九州大学医学部事件』を参考にした小説です。