読書案内

お薦めの本を紹介します

吉高由里子が演じる伊藤野枝とは? 風よ あらしよ

風よ  あらしよ 

村山 由佳

集英社

風よ あらしよ

2022年3月にNHKドラマにおいて、吉高由里子主演で直木賞作家村山由佳の原作で伊藤野枝の評伝小説「風よ あらしよ」が放送されます。伊藤野枝吉高由里子がどう演じるか楽しみです。

伊藤 野枝(いとう のえ、1895年〈明治28年〉1月21日 - 1923年〈大正12年〉9月16日)は、日本の婦人解放運動家、無政府主義者、作家、翻訳家、編集者。

ja.wikipedia.org

吉高由里子さんのツイートです。

 

 本書は、わずか28歳で、憲兵隊により理不尽に虐殺され、太く短く熱く生きた伊藤野枝の人生を、まさに本書の題名のごとく「風よあらしよ」のように描いています。

彼女の恋愛観や政治観には、ついていけない人もいると思いますが、彼女は家父長制下の結婚制度の中で良妻賢母を求められた時代に、それまでの習俗を打破して自由を求めて自分に正直に生きました。また、彼女は、働きながら7人の子供を産み社会活動を行なっていたことは当時の時代背景を考えると驚きです。

そして、なにより本書での伊藤野枝が魅力的なのは、大杉栄を愛している彼女の情熱が感じられることです。そして、伊藤野枝をはじめとする様々な登場人物の描写が素晴らしいです。

特に印象的だったのは、後藤新平宛の手紙での勇気と豪胆は男性顔負けの勢いで、その勇ましさは見事です。
伊藤野枝が生きた時代から一世紀位経ちますが、日本はいま伊藤野枝が望んだ社会になっているのでしょうか?ある調査では、この国が子育てに適さないと考える女性が六割いるらしいのですが、もし伊藤野枝がいたらどう行動にでるのだろうか。
本書は、650ページを超す大作に関わらず簡潔な文章ですので、たいへん読み易く思ったより速く読了できます。そして、作者の力量熱量ともに見事です。また、後の方に参考文献が掲載してあり、伊藤野枝および関係者の本を読むのに参考になります。
最後の方では、悲しくて涙が止まりませんでした。ただ、本書は物語として本当に面白いです。

 

下のサイトは、作者のインタビューです。本書が出来上がるまでの貴重な意見、過程が述べられてます。

shosetsu-maru.com

 

出版社の内容紹介

【第55回吉川英治文学賞受賞】
【本の雑誌が選ぶ2020年度ベスト10第1位】

どんな恋愛小説もかなわない不滅の同志愛の物語。いま、蘇る伊藤野枝と大杉栄。震えがとまらない。
姜尚中さん(東京大学名誉教授)

ページが熱を帯びている。火照った肌の匂いがする。二十八年の生涯を疾走した伊藤野枝の、圧倒的な存在感。百年前の女たちの息遣いを、耳元に感じた。
小島慶子さん(エッセイスト)

時を超えて、伊藤野枝たちの情熱が昨日今日のことのように胸に迫り、これはむしろ未来の女たちに必要な物語だと思った。
島本理生さん(作家)

明治・大正を駆け抜けた、アナキストで婦人解放運動家の伊藤野枝。生涯で三人の男と〈結婚〉、七人の子を産み、関東大震災後に憲兵隊の甘粕正彦らの手により虐殺される――。その短くも熱情にあふれた人生が、野枝自身、そして二番目の夫でダダイストの辻潤、三番目の夫でかけがえのない同志・大杉栄、野枝を『青鞜』に招き入れた平塚らいてう、四角関係の果てに大杉を刺した神近市子らの眼差しを通して、鮮やかによみがえる。著者渾身の大作。

[主な登場人物]
伊藤野枝…婦人解放運動家。二十八年の生涯で三度〈結婚〉、七人の子を産む。
辻 潤…翻訳家。教師として野枝と出会い、恋愛関係に。
大杉 栄…アナキスト。妻と恋人がいながら野枝に強く惹かれていく。
平塚らいてう…野枝の手紙に心を動かされ『青鞜』に引き入れる。
神近市子…新聞記者。四角関係の果てに日蔭茶屋で大杉を刺す。
後藤新平…政治家。内務大臣、東京市長などを歴任。
甘粕正彦…憲兵大尉。関東大震災後、大杉・野枝らを捕縛。

風よ あらしよ 画像10

www.shueisha.co.jp

目次

序     章 天地無常

第  一  章 野心

第  二  章 突破口

第  三  章 初恋

第  四  章 見えない檻

第  五  章 出奔

第  六  章 窮鳥

第  七  章 山、動く

第  八  章 動揺

第  九  章 眼の男

第  十  章 義憤 

第十一章 裏切り

第十二章 女ふたり

第十三章 子棄て

第十四章 日陰の茶屋にて

第十五章 自由あれ

第十六章 果たし状

第十七章 革命の歌

第十八章 婦人の反抗

第十九章 行方不明

第ニ十章 愛国

終     章 終わらない夏

著者紹介

村山由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京都生まれ。立教大学文学部卒。会社勤務などを経て作家デビュー。1993年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で直木賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、島清恋愛文学賞を受賞。