DNA鑑定
犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで
梅津和夫 講談社
本書は、一般人向けのDNA鑑定の入門書です。山形大学で法医学分野を研究しDNA鑑定の専門家として活躍する著者が、日頃の研究内容や実際依頼を受けたDNA鑑定の内容等を紹介しながら、DNAの面白さを伝えてくれます。
DNAとは、何かという基本的な解説から始まり、「遺伝子」「染色体」「ゲノム」といった用語の区別、DNAの構造、核DNAとミトコンドリアDNAとの違いなどの基本的な事柄を解説してます。
そして、DNA鑑定の項目において、核DNAやミトコンドリアDNAなどのゲノムをつくる塩基の配列は、生物種、個人、個体によって違いがあり、同種内での違いを利用して個体識別や親子鑑定、種の区別などの解説があります。
個人的に興味を惹いたトピックは、DNA鑑定による「日本人の起源」の解明です。古人骨のミトコンドリアDNAを分析することで日本人のルーツを解明します。
著者は日本人について、氷河時代に原日本人というべき民族が沖縄で育まれ、氷河時代の終焉とともに九州へ移って縄文人となり、約7300年前の鬼界カルデラの巨大噴火によって北方へ拡散し、 さらに大陸からの渡来人の流入が拡散を促進し、その後にやって来た渡来人が中央に進出して弥生人となることで二重構造を持つ日本列島人が形成された、との考察をします。
最後に本書は、DNA鑑定にまつわるさまざまな興味深い話題を次から次へと取り上げていますので、科学分野の読み物としてたいへん面白く読むことができます。
目次
第1章 DNA鑑定「前夜」
第2章 なさねばならぬDNA鑑定
第3章 少しだけ学ぶDNA鑑定の原理
第4章 世にDNA鑑定の種は尽くまじ
第5章 DNA鑑定が明かす日本人の起源
第6章 DNA鑑定で迫る生物の謎
第7章 犯罪捜査とDNA鑑定
著者紹介
梅津和夫(うめつ・かずお)
山形大学医学部法医学教室客員准教授。1949年、山形県生まれ。医学博士。日本DNA多型学会、日本法医学会、日本人類学会会員。国内におけるDNA鑑定の第一人者で、2004年度より、生労働省が進めるシベリアや南方諸島での戦没者遺骨収集事業に参加。趣味は古典園芸植物、骨董品収集、岩魚釣り、山菜採り、きのこ採り。