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お薦めの本を紹介します

人類史の壮大な謎の解明とは?ー銃・病原菌・鉄

銃・病原菌・鉄

ジャレド・ダイアモンド

倉骨 彰=訳

草思社文庫

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

内容紹介

本書は、なぜ様々な民族が異なり、不均衡さをもって現在に至ったのか?過去1万3000年に遡って人類史を解き明かします。

最終氷河期が終わった時点では、世界の各大陸では、似たり寄ったりの狩猟採集生活をしていた人類です。しかし、その後、各大陸でどのように差異が生まれ、格差が広がっていったのかを、食料生産や家畜化の伝播、地理的有利による早さ等により、鉄、銃、病原菌への免疫といった文明の利を獲得するに至った経過を、本書の中で解き明かします。

また、16世紀にインカ帝国を少数のスペイン人が征服しましたが、その逆は何故ならなかったのか?を著者は解き明かします。

下巻ではオーストラリアとニューギニアのミステリー、中国はいかにして中国になったのか、アフリカはいかにして黒人の世界になったのか等も著者のユニークな見解により、それぞれに解明しています。

著者の経歴からうかがえる33年間にわたるニューギニア現地研究者として、または地理学者、進化生物学者、歴史学者といった多様な知見からの考察には終始圧倒されます。
また、著者は、西洋文明が発展したのは、人種的な優劣などでは決してなく、偶然と単なるユーラシア大陸の地理がその要因であり、根強い人種差別的な偏見に対して反論を投げかけます。

現在、民族主義や差別、多文化理解といったことが、よりデリケートな問題になってきていますので、本書を読むことにより、より踏み込んだ人類史を知り、あるいは、世界的な格差や不均衡がなぜ生じたのか?を考察したらどうでしょうか。

目次

【上巻】

プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの

第1部 勝者と敗者をめぐる謎

 第1章 一万三〇〇〇年前のスタートライン

 第2章 平和の民と戦う民との分かれ道

 第3章 スペイン人とインカ帝国の激突

第2部 食料生産にまつわる謎

 第4章 食料生産と征服戦争

 第5章 持てるものと持たざるものの歴史

 第6章 農耕を始めた人と始めなかった人

 第7章 毒のないアーモンドの作り方

 第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか

 第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか

 第10章 大地の広がる方向と住民の運命

第3部 銃・病原菌・鉄の謎

 第11章 家畜がくれた死の贈り物

【下巻】

 第12章 文字をつくった人と借りた人

 第13章 発明は必要の母である

 第14章 平等な社会から集権的な社会へ)
第4部 世界に横たわる謎

 第15章 オーストラリアとニューギニアのミステリー

 第16章 中国はいかにして中国になったのか

 第17章 太平洋に広がっていった人びと

 第18章 旧世界と新世界の遭遇

 第19章 アフリカはいかにして黒人の世界になったか

 エピローグ 科学としての人類史

著者等紹介

ジャレド・ダイアモンド(Jared Daimond)

1937年ボストン生まれ。カリフォル・ニア大学ロサンゼルス校教授。進化生物学者、生理学者、生物地理学者。アメリカ国家科学賞受賞。著書『銃・病原菌・鉄』(草思社)でピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞。同書は朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位に選ばれた。他に『人間はどこまでチンパンジーか』(新曜社)、『セックスはなぜ楽しいか』(草思社)などの著書がある。
倉骨 彰(くらほね・あきら)
早稲田大学卒業。テキサス大学オースチン校大学院言語学研究科博士課程修了。数理言語博士。同校で自然言語処理等を研究。訳書に、デビッド・セダリス『すっぱだか』のほか、アーサー・ブロック『マーフィーの法則―現代アメリカの知性』、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』『昨日までの世界』、ダニエル・ヒリス『思考する機械コンピュータ』など多数。著書には『ビジネス英文メールの鉄則』『怪我と病気の英語力』など。