読書案内

お薦めの本を紹介します

面白い日本史が読みたい人のための「絶対に挫折しない日本史」

絶対に挫折しない日本史

古市憲寿 新潮社

絶対に挫折しない日本史 (新潮新書)

[目次]

本書執筆の経緯

本書は、『新潮45』と『波』での連載がもとになってます。また、著者が『サピエンス全史』を読んだのがきっかで、『サピエンス全史』のような日本史の執筆を思いついたようです。ただ、著者の専門は歴史学ではなく、社会学ですので、歴史学者とは異なる視点での日本史です。

日本史を学ぶ秘訣

著者は、「まえがき」で歴史を楽しく学ぶ秘訣は、大まかに捉えることだ。と説いてます。日本史においては、次のように大まかに説明してます。

日本史は「古代」・「中世」・「近代」の三つの時代に分けることができる。バラバラに生きていた人びとが、一部の権力者によってまとめ上げられていく「古代」、それがが崩壊していく「中世」、再び日本中が一つになった「近代」だ。というように「大まかに」日本史を捉えてます。

また、日本史を学ぶための目安となる時間感覚として、次のように説明してます。

● 約4万年前、日本列島に人類が到達した。

● 西暦700年頃、「日本」という国号が生まれ、国のトップを「天皇」と呼ぶように。

● 西暦1100年頃、「古代」が終わり、権力者もバラバラのカオスな時代「中世」へ。

● 西暦1603年に江戸時代が始まり、緩やかな成長が続く。

● 西暦1868年の明治時代以降、国家が一気にまとまる。

本書の内容

本書は、日本史についての第一部の「通史編」と第二部の「テーマ史編」の二部構成となっています。
 第一部「通史編」は、46憶年前の地球の話から始まり最後は日本列島の消滅まで描いてます。

その中で、日本史を分かりやすくするために「古代」「中世」「近代」という大まかなくくりで、歴史上の事件も人物も固有名詞をほとんど使わずに書かれた簡素な「通史」を描いてます。

これなら「日本史は固有名詞が多くて苦手」という人でも容易に読み進めることができると思います。

本書では、分かりやすくするために、いろんな工夫がなされてます。例えば、「古代」において、同じような「前方後円墳」が九州から東北に広まったのを、セブンイレブンのフランチャイズ契約を例としてとして説明してます。

また、現在(2021年3月)、関心がもたれているている新型コロナウィルス、東京オリンピックの開催について言及してます。
 第二部「テーマ史編」は、「コメと農耕」「神話と物語」「土地と所有」「家族と男女」「未来と予測」「戦争と平和」「歴史語り」の七つの個別的のテーマで日本史を概観しており、視点をかえて日本史を学べます。

「テーマ史編」の中で、身近な例を用いて分かりやすく説明しているのが、「土地と所有の日本史」の項目です。この項目では、「ドラえもん」の「のび太の土地」の例を用いて、古代から現代までの「土地と所有」のそれぞれの時代における問題点を分かりやすく説明してます。

そして、「通史」と「個別のテーマ」によって、日本史を複数回に渡り読むことによって日本史の理解が深まるようにと本書は構成されてます。

本書の感想

本書の題名には、違和感を持ちましたが、「絶対に」には、著者が本書の出来に自信があるので、読者へ「最後まで読んで欲しい」という願望だと思います。そして、日本史を面白くするために、「挫折しない」ための工夫はしているとは思います。

私自身は、読んでて、面白かったので、一日で読了しました。
 本書は、「日本史」を大雑把な通史に描いてますので、「日本史の流れ」を理解することができると思います。

ただ、著者特有の表現方法を用いてる部分が有りますので、学術的な歴史書を読みたい方には適さないと思います。

本書の狙いは、日本史をこれから学ぶ人に、面白く学んでもらうことを主眼に置いていると思います。

出版社の内容紹介

大河ドラマや歴史小説は好きだけど、古代から現代までの日本の通史となるとちょっと自信がない……そんな人は少なくない。覚える用語が多すぎるうえ、ヤマもオチもない歴史教科書に挫折してしまうのだ。だが、思い切って固有名詞を減らしてしまい、流れを超俯瞰で捉えれば、日本史は、ここまでわかりやすくて面白くなる! 歴史学者ではない著者だからこそ書けた、全く新しい日本史入門。(新潮社

 著者紹介

古市 憲寿(ふるいち・のりとし)

1985(昭和60)年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。若者の生態を的確に描出した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。他の著書に『誰の味方でもありません』『平成くん、さようなら』など。

本書の目次

まえがき 人はなぜ日本史に挫折するのか
日本史教科書がつまらない理由/面白い日本史が読みたい!/歴史の本を楽しく読むコツ
第一部 通史編
1 いつ「日本」は誕生したのか(旧石器〜縄文)
日本誕生前史/縄文時代は列島中すかすか/本当は怖い邪馬台国
2 古代政権はフランチャイズ運営(弥生〜平安)
無駄に大きなお墓を作った理由/大和エリアに「国家」があったのか/本部のフランチャイズつぶし/古代の国土統一戦争?/日本が中国の軍門に降った理由/「日本」という国号の秘密/納税は「神頼み」の延長/外圧の生んだ「強い日本」/早くも「強い日本」崩壊か
3 中世は「小さな政府」の時代(平安〜戦国)
治外法権が続々と誕生/喉が嗄れるまで歌い続けた上皇/誰が一番偉いのか/小さな政府の時代/民間人の大活躍/農民たちの生活革命/異常気象が戦乱の世を招いた
4 国家による暴力の独占(戦国〜江戸)
修羅の時代を生き抜く知恵/独裁者でもいないよりはマシ/かなりグローバルな戦国時代/江戸時代の人口急増/江戸と明治は断絶か連続か/江戸は暗黒時代だったのか?
5 「国民国家」という新システム導入(江戸後期〜明治)
江戸後期はほぼ近代/食料自給率100%の恐怖/江戸時代に「日本人」はいなかった/「国民国家」という人類の大発明/馬より速い乗り物がなかった時代/戦争に強い国を作ろう
6 「拡大」の季節と近代化(明治〜昭和)
どうして海外なんて行くの?/日本も乗り遅れるな!/極東の島国から「海の帝国」へ/昭和8年に返りたい/あの戦争、実は負けて良かった?/経済大国・日本のルーツ/「縄文顔」も「弥生顔」もいない
7 日本はいつ「終わる」のか(平成〜未来)
あの頃、女子高生が注目を浴びた理由/第3次ベビーブームは起こらなかった/「呪い」のオリンピック/新型コロナウィルスは社会を変えるか/2024年問題と2042年問題/実際の未来はどうなるの?/日本に革命は起こるのか/日本列島が消滅する日
第二部 テーマ史編
8 コメと農耕の日本史
コメがなかった稲穂の国/農耕革命の発生/列島の農耕はいつ始まったか/ついに稲作は始まったけれど/農業は不幸の始まり/コメが主食になったのは100年前/糖質制限ダイエットの大流行
9 神話と物語の日本史
セックスから生まれた日本列島/世界の神話はたった二つに分けられる/文字なき時代の物語/残された都合のいい物語/最も日本が一神教に近付いた時代/失われた物語
10 土地と所有の日本史
どうして土地を自由に使えない?/「のび太の土地」に危機到来/「すべての土地は天皇のもの」?/不自由、だからこそ平等/先祖代々の土地って本当?/九州の面積以上の土地が持ち主不明/人が去り、街は崩れる
11 家族と男女の日本史
家族はいつ始まったのか/「夫婦」が葬られた古墳はほとんどない/日本にも存在した一夫多妻制の真実/平和な江戸時代、女性の地位が下がった/男色が大流行した江戸時代/実はラディカルだった「生産性」議員/家族の未来と生殖の未来
12 未来と予測の日本史
時代は回る? それとも進化する?/聖徳太子の未来予想/平安貴族も恐れた「世界の終わり」/客も遊女も高齢者ばかり? 江戸の未来予測/ユートピアは未来にある/「人間の不安は科学の発展から来る」?/未来は時代に束縛される
13 戦争と平和の日本史
平和な縄文時代、危険な弥生時代/驚くほど戦争の少ない古代日本/「強い日本」の誕生と終焉/「神風」は吹かなかった/異常な大日本帝国時代/そして「平和」に平成は終わる/「平和」は訪れたが「戦争」はなくならない/未来の戦争はどうなるのか
14 歴史語りの日本史
歴史語りはかくも難しい/戦前は「縄文時代」なんてなかった/おじさんが明治維新を愛する理由/歴史教科書に書かれていることは本当か/歴史とは、権力を示すための装置/トンデモ解釈の歴史/「お国」のための歴史教育/現代人が『日本書紀』を読める理由/そして歴史は続いていく
 
あとがき