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お薦めの本を紹介します

子どもへのまなざし

   子どもへのまなざし

      佐々木正美(児童精神科医) 福音館書店
子どもへのまなざし (福音館の単行本)

子どもへのまなざし (福音館の単行本)

 

 

本書は、子どもを育てるときに、どのような考えで子どもを育てればよいのか、という考え方が色々と書かれてあり、たいへん役立つと思います。

人間が人間らしくいきるためには、何をすればよいのか、人生で大切な事は何なのか、を考える機会を与えてくれます。

全編を通じてとても語り口が丁寧で優しく、また、山脇 百合子さんのイラストが可愛らしく、読んでいて温かい気持ちになります。

・「ゆっくり待っていてあげるから、心配しなくていいよ。いつからできるようになるか、楽しみに待っててあげるからね」というスタンスで子どもを見守る
・全面的に受容することで、子どもは自信と人への信頼を育てる
・安心して失敗できる存在になる
・しつけは繰り返し教えること、そして待つこと

といった、愛情深く子どもを見守るまなざしが感じられるアドバイスが読んでいて心地良いです。

また、単なる育児本にとどまらず、30年以上医師として子どもと関わってきた著者の経験と知識を活かし、心理学者エリクソンの「基本的信頼」、乳幼児精神医学者ロバート・エムディの「ソーシャル・レファレンシング」など、乳幼児の心理を理解するうえで参照すべき概念をわかりやすく説明し、子どもとはどのような人々なのかを、とても丁寧に、かつ深い愛情を込めて解説されています。

更に、平和で豊かなはずの日本現代社会における人間の心の病についてもふれ、社会とは何か、生きるとはどういうことなのかについても、親自身が考えるきっかけを与えてくれます。

1998年刊行ですが、「今の親たちは自分のやりたいことがいっぱいありすぎて、親が自分自身の希望を生活の中心にするようになった分、子どもはスポイルされてしまう。この傾向は今後10年で加速すると思います」という内容の記述があり、ズバリ言い当てている筆者の世の中を見る目に驚かされます。

終わりの方にこんな言葉がありました。
「人間の本当の幸福は、相手の幸せのために自分が生かされていることが、感じられるときに味わえるものです。このことは本当に本当です。自分の幸せばかり追求することによって得られる幸せなど、本当の幸福ではけっして、けっしてないのですから。」
「人間」という字の成り立ちが示す通り、私たちは人間である以上、人との関わりなしには生きられない。
その関わりの中で自分なりの形で人の幸せに役立てること、それこそが私たちの生きる意味ではないだろうか。


子育てという枠を超え、生きることの意味についても親たちに温かく優しい示唆を与えてくれる良書です。

内容紹介

子どもにとっての乳幼児期は、人間の基礎をつくるもっとも重要な時期です。児童精神科医の著者が、臨床経験をふまえて乳幼児期の育児の大切さを語る、育児に関わる人の必読書です。

乳幼児期は人間の基礎を育てる大切な時期だと、乳幼児期の子育てに重点を置いている1冊。

   著者は30年以上、子どもの臨床に携わってきた。さらに診察室だけではなく、保育園や幼稚園、学校、児童相談所、養護施設、家庭裁判所などさまざまな場所で数多くの子どもや親に出会ってきた。

   社会の変化に伴い、育児方法や育児の考え方は大きく変化した。育児不安を持つ母親はますます増加し、近年問題になっている過干渉や放置、虐待など、社会のゆがみは、そのまま子育てに影響している。著者は、子どものありのままを受け止めることが大切だと強調する。十分な受容や承認を受けた子どもは、安心して社会に出ることができる。子どもにとって、最大のサポーターであり、理解者であるのが親なのだ、と。育児の喜びは、子どもに期待できる喜び、子どもを幸せにできる喜びの二つあると著者はいう。そして、子どもの笑顔や喜ぶ姿に、自分自身が喜べる親であってほしいと願う。

   自分が望んだとおりに子どもが育つ姿を見て、満足する。そういう「条件つきの愛」ではなく、無条件に子どもを愛することの大切さは、きっとだれでもわかっていることなのだろう。本書に書かれていることは、ごくごくあたりまえのことばかりだ。しかし、忙しい毎日に追われ、そんなあたりまえのことをつい忘れてしまいがちになる。本書は、自分の子育てをあらためて見つめ直すきっかけになりそうだ。(町場キリコ)

著者紹介

佐々木 正美(ささき・まさみ)

1935年~2017年、前橋市生まれ。
1966年、新潟大学医学部を卒業後、ブリティッシュ・コロンビア大学に留学し、児童精神医学の臨床訓練を受ける。帰国後、国立秩父学園を経て、小児療育センター(横浜市)に20年勤める。この間、東京大学精神科、東京女子医科大学小児科、お茶の水女子大学児童学科で講師を勤める。一方、ノースカロライナ大学精神科TEACCH(自閉症の療育支援プログラム)部に学びながら、共同研究に協力して30年近くなる。
 川崎医療福祉大学特任教授(岡山県)。横浜市リハビリテーション事業団参与。著書に『0歳からはじまる子育てノート』(日本評論社)、『自閉症療育ハンドバック』(学研)、『子どもへのまなざし』『続 子どもへのまなざし』『完 子どもへのまなざし』(福音館書店)など多数。

目次

乳幼児期は人格の基礎をつくるとき
子どもをとりまく社会の変化
人と育ち合う育児
こんな気持ちで子育てを
生命との出会い
乳児期に人を信頼できると子どもは順調に育つ
子どもの望んだことを満たしてあげる
幼児期は自立へのステップの時期
しつけはくり返し教えること、そして待つこと
思いやりは身近な人とともに育つ
子ども同士の遊びのなかで生まれるもの
友達と学び合う時期
思春期は自分さがしの時期
豊かな社会がもたらしたもの
保母さん、幼稚園の先生へ
お母さんへ、お父さんへ

あとがき

佐々木先生の子どもへのまなざしー中川季枝子ー

 

参考図書

続 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

続 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

 

 

完 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

完 子どもへのまなざし (福音館の単行本)

 

 

 

子どもの心の育てかた

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関連サイト

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