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お薦めの本を紹介します

アドラー心理学が教えてくれる幸福へのヒント

アドラー心理学入門

  よりよい人間関係のために

   岸見 一郎  ベスト新書

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

 

 

 著者は日本のアドラー心理学研究の第一人者です。本書は著者がアドラー心理学について最初に一般向けに著した(1999年)ものです。

 本書は、アドラー心理学の鍵となる諸概念がコンパクトにまとめられています。アドラーによって体系化された心理学を、アドラー自身は「個人心理学」(individual psychology)と呼びます。それは、それまでの心理学のように人間を、精神と身体、感情と理性、意識と無意識といった二元論で捉えるのではなく、分割できない(in-dividual)全体として捉え、人間は統一されたものであるという考えに基づくものです。別の言葉でいえば、人間をそれ単独では生きることのできない、全体性をそなえた「生命体」と捉えるところに特色があります。
 アドラー(1870~1937年)は、フロイトユングと同時代に生き、かつ一時は交流もあったものの、心理学者としては両者ほど知られていないです。しかし、著者が「どう生きたらいいのか―アドラー心理学はこの問いかけに明確に答えることができる」と言うように、心理学というよりも、現代社会を生きるための人生論・幸福論・上達論としての側面から、非常に有用な考え方を示してくれます。
 本書では、アドラーの生涯等も紹介されていますが、アドラー心理学から学ぶべきこは、概ね以下のようになります。


1 育児・教育の目標は、行動面においては、「自立すること」と「社会と調和して暮らすこと」であり、これを支える心理面においては、「自分には能力があるという信念を持つこと」と「人々は自分の仲間であるという信念を持つこと」です。


2 人間関係で大事なことは、縦(上下)ではなく横(対等)の人間関係において接することであり、具体的には、「勇気づけ」をする際に、評価をする(褒めたり叱ったりする)のではなく、喜びを共有する(「ありがとう」、「うれしい」、「助かった」などの言葉で自分の気持ちを伝える)ことです。また、自分の人生の課題を明確に認識させ、本人に立ち向かわせることです。


3 精神的に健康であるということは、自己受容(今の自分のままで自分を受け入れること)、他者信頼(他の人を信頼すること)、他者貢献(自分の存在が他の人に貢献していると考えること)ができることであり、その3つが揃って人は幸福になれる。


4 アドラー心理学の基本前提は、「認知論」(人は自分が意味づけした世界に生きている=人は自分の関心に従って世界を認識している)と「目的論」(人は原因によってではなく、目的によって生きている)です。即ち、「私」の行動を決めるのは「私」自身であり、すべての責任は自分自身にある。


5 人生を生きるための指針・・・「人生の意味は自分で決める」、「他人を気にしない」、「失敗を恐れない」、「私は他の人の期待を満たすために生きているのではない」、「今したいことをしているか」、「自分の思いを貫いた結果の責任は自分が引き受ける覚悟をする」、「他の人は私の期待を満たすために生きているのではない」、「できることは自分の力で解決し、できないことは助力を求める」、「言葉を重視する」、「他人はわからないと思って付き合う」、「自分が人生を創っている」、「何が起こってもできることをやってみる」、「できることから始める」等です。


 アドラー心理学を深く知るには物足りないのかもしれませんが、基本的な考え方をピンポイントで掴むには十分な一冊だと思います。 

 内容紹介

日本ではフロイトユングの名前はよく知られていますが、同じ時代に生きたオーストリア精神科医であるアルフレッド・アドラーの名前はあまり知られていません。本書ではアドラー心理学の見地から、どうすれば幸福に生きることができるかという古くからの問いにアドラーがどのように答えようとしているかを明らかにし、どのように生きていけばいいのかという指針を示しました。

アドラー心理学

アドラー心理学、個人心理学とは、アルフレッド・アドラーが創始し、後継者たちが発展させてきた心理学の体系である。個人心理学が正式な呼び方であるが、日本ではあまり使われていない。 アドラー自身は自分の心理学について、個人心理学と呼んでいた。それは、個人とは分割できない存在である、と彼が考えていたことによる。

著者紹介

岸見 一郎(きしみ・いちろう)

1956年、京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。京都聖カタリナ高校看護専攻科非常勤講師。

著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(古賀史健と共著、ダイヤモンド社)、『人生を変える勇気』(中央公論新社)『よく生きるために働くということ』(KKベストセラーズ)『三木清「人生論ノート」を読む』(白澤社)『老いた親を愛せますか?』(幻冬舎)、訳書にアドラー『個人心理学講義』『人生の意味の心理学』(アルテ)、プラトンティマイオス/クリティアス』(白澤社)など多数。

目次

第1章 アドラーはどんな人だったか
第2章 アドラー心理学の育児と教育
第3章 横の関係と健康なパーソナリティ
第4章 アドラー心理学の基礎理論
第5章 人生の意味を求めて

参考図書

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

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幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

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アドラーをじっくり読む (中公新書ラクレ)

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 関連サイト

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2019/03/18 - 今回は、今年2月に初めて読書術の本を書き下ろした岸見一郎さんに、率直な疑問を投げかけてみました。 岸見一郎(きしみ いちろう) 哲学者。1956年京都府生まれ。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。京都大学大学院文学研究 ...